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御馳走帖

"初めにアイスクリームを飲み又は食ひ、次にソップを食ひ又は啜り、ソップの時から乾果を出させる。其後一種或は二種のご馳走をたべて、それから珈琲を飲む。それでお仕舞いかと思ふと又食卓ボイを呼んでライスカレーを持つて来させる。"1968年発刊の本書は食の日々を愉快さで語る名随筆。


個人的には猫好き必読『ノラや』で"ご存知食いしん坊百間先生"と文壇屈指のいじられ(愛され)キャラ?である著者のユーモラスな文体にすっかりハマりつつあって本書も手にとりました。


さて本書では、幼少時代から戦中の窮乏生活、また知人たちとの食膳の日々が時系列はバラバラな【日常系随筆】として自由に描かれているわけですが。担当医の小林先生に隠れて牛肉食べては生徒に"云ひつけてやるから"と言われ、船旅の晩餐で旺盛に食べる様子を友人に雑誌に書かれたりと【相変わらずの周囲からのいじられる具合】がかえって著者の慕われる人柄を浮き上がらせていて清々しい。(それだけ周囲の人たちを大切にしていた事も伺われます)

また"『さうさう、いつぞやのげろ以来でしたね。あの節はげろう失礼しました』私も慌てて挨拶した。『げろげろ御馳走様でした』"といった読みやすく【リズミカルな会話文体】は変わらず素晴らしく、食の日々から伝わってくる戦前、戦中、戦後と【どのような時代でも楽しく生きる】時代は変化しつつも、著者自身の【軸のブレない在り方】に、こちらも何とも元気をもらえます。("馬肉に鹿肉"著者が仲間達と食べる馬鹿鍋。私も友人たちと食べてみようかな?)

とりとめなくも、丁寧な日常を伝えてくる随筆を探す誰かに。あるいはいじられ【食いしん坊おじさん】に癒されたい誰かにオススメ。

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