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渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

"操浄瑠璃の世界ちゅうもんはな、この世であってこの世やない。ここは人形の世界や。人形さんらはな、死なへんのや、死なへんくせに生きとんのや。わしらはその世界に束の間、浮かぶんや。"2019年発刊の本書は、直木賞&高校生直木賞、大阪ほんま本大賞受賞にして、江戸時代の道頓堀を独特の言語空間で鮮やかに再現した大傑作。

個人的には大阪ミナミに縁あるものとして、人形浄瑠璃(文楽)は一応は鑑賞した事があるも、詳しくはない為。話題作である本書を手にとってみました。

さて、そんな本書は江戸時代の大阪は道頓堀を主な舞台に、実在の人形浄瑠璃作者にして『妹背山婦女庭訓』や『本朝廿四孝』を生み【竹本座の全盛期を支えた近松半二】を主人公に、良き友人にしてライバル、様々な舞台仕掛けを考案し【歌舞伎の地位、エンタメ性を向上させたと評される歌舞伎作者の並木正三】そして今の人形浄瑠璃の【三人遣いの発案者にして、高名な人形遣いだった吉田文三郎】といった有名な登場人物たちも登場し『物語はどこから生まれて来るのか』をテーマに半二たち、表現者たちの作品づくりにかけた一生が【独特の上方言葉を駆使した言語空間】で描かれているわけですが。

結論から先に書くと【どえらいオモロかったです!】正直にいって人形浄瑠璃といえば、同じ近松でも『門左衛門』くらいしか名前を知らなくて。当然、半ニほかの登場人物たちの事を"本書ではじめて知り"また作中に登場し、現在までもしばしば演じられている(らしい) 『妹背山婦女庭訓』すら"鑑賞したことない"まったくの初心者の私ですが。そんな私でも江戸時代の道頓堀、そこに【賑わう人々の姿がディープな大阪弁と共に脳裏に鮮やかに再現されて】特に大阪ミナミが大好きな私は最初から最後まで興奮しっぱなしでした。(あとがきでも六代 豊竹呂太夫が書いてますが、著者は名古屋出身らしいのに言葉使いに全く違和感なくて凄い。。)

また、前述したように人形浄瑠の世界自体は全く初心者なのですが。一方で【日本美術史や大阪の歴史はかじっいて】また、大阪ミナミだけでなく【京都の文化にも関心がある】私にとって。半二たちの姿を通して、人形浄瑠璃と歌舞伎の『関係性の逆転』いまは商業施設にわずかに名前を残すだけの『道頓堀五座』といった当時の様子、また確かに舞台の中心はずっと道頓堀なんですが。作品づくりや体勢を立て直す場所として『京都』も度々出てくることもあり。こちらも歴史風俗理解として大変興味深かったです。

人形浄瑠璃好き、大阪好きな方はもちろん、表現活動に関わる全ての方にもオススメ。

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