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シッダールタ

"世界をそのままに、求めるところなく、単純に、幼児のように観察すると、世界は美しかった。月と星は美しかった。小川と岸は、森と岩は、ヤギとコガネ虫は、花とチョウは美しかった"1922年発刊の本書は釈迦の出家以前の名前を借りたノーベル賞受賞者による美しい自らの宗教的体験告白。

個人的には名前だけ以前から知っていたのに未読だったので手にとりました。

さて、そんな本書はもともとは『インドの詩』という副題をもって刊行されたもので【釈迦の出家以前の名前『シッダールタ』という名前をもつ主人公】が晩年に『悟りの境地』に達するまでに【苦行や経験を積んでいく様子】が、若かりし時の仏陀との出会いや友人との別れを描く第一部、愛する女性との出会いや友人との再会、そして世俗に染まって悩む第二部と【二部構成で人生を駆け抜けていく】内容になっているのですが。

まず"解脱"という当たり前に【極めて東洋的、仏教的な内容】の本書がインド思想を何十年も研究していたとはいえ、ドイツ人作家によって美しく描かれていることに正直にいって驚きました(なんでもインド本国にも逆輸入され?12のインド方言に翻訳されているらしいです)

また本書は筒井康隆の『旅のラゴス』と同じく、読む年齢によって感じ方が違うのではないか?と思われるのですが、個人的には第二部。若い時から才能や美貌を誇った主人公が『人生の午後』【中年期から晩年】において抱える葛藤に共感しきり。というか自分の人生を重ね色々と考えてしまいました。

著者晩年の代表作として、また人生について。作品を通して振り返りたい方にもオススメ。

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