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折りたたみ北京

"読者には、そのような誘惑に抵抗していただきたいのです。中国の作家の政治的関心が西側の読者の期待するものとおなじだと想像するのは、よく言って傲慢であり、悪く言えば危険なのです。"2016年発刊、中国SF界を今を代表する7名の作家の13篇を収録したアンソロジーである本書は【全てが傑作】という、おそるべき一冊。

個人的には2018年に国内紹介された際に大絶賛されていた本書が手にしやすい新書サイズにて新たに発刊されたのを知り、飛びつく様に手にとりました。

そんな本書は『紙の動物園』で2012年にネビュラ賞とヒューゴー賞と世界幻想文学大賞の短編部門で受賞、史上初の三冠を達成した中国系アメリカ人作家のケン・リュウにより、編集、翻訳された中国SF作家たちの作品が収録されているわけですが。冒頭で紹介したケン・リュウの一文が訴えている様に如何に私が西側偏向のメディア報道の影響で【ステレオタイプに『中国』という国を捉えていたか】を気付かさせてくれると同時に、紹介された作家たちの、そんな【国といった制約すら軽やかに超えて魅力溢れる作品たち】に最初の作品から終わりまで魅了されました。(全てを紹介したくも詳細は泣く泣く割愛。あえて挙げるなら、人間サイズに造られたネズミとの戦いを描く『鼠年』、オーウェルのディストピアSF『1984年』の中国的オマージュ『沈黙都市』、マジックリアリズム的始まりが印象に残る『神様の介護係』がお気に入りです)

そして。これほどまでに惹かれた理由を自分なりに考察するに思い浮かべたのは2つ。1つはやはり西洋とは違って【同じアジア、漢字圏文化】として言語化しなくても何となく共感できる親しみやすさ、そしてもう1つが世界最大、最強レベルのハイテク国家としてならではの【説得力をもって描かれる未来イメージ】なのだろうかと思ったり。

あと、ケン・リュウ自体がイケメン作家・翻訳家(私的主観)にして弁護士、プログラマーと羨ましい位に多才なのですが。紹介される中国国内作家たちも負けじと高学歴にして、作家に留まらない多才な活躍をしているのにも圧倒されます。かっての"先輩"たちが学んだように、あらためて【中国から学ばせていただく】時代に突入しているのだな。。と実感させられます。

世界を魅了している現代中国SFに触れたい全ての人、またIT関係で働く人にも必読のお買い得な一冊としてオススメ。

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