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貞観政要

"君は舟なり、庶民は水なり、水はすなわち舟を載せ、水はすなわち舟を覆す"中国唐代に編纂されたとされる、名君の誉れ高い唐の太宗とそれを補佐した名臣たちとの政治問答集『貞観政要』本書はその二百八十篇の説話のうち七十篇を訳出した現代にも通用する守勢の心得書。

個人的には帝王学の書として、かつての教養人の必読書であり、中国の歴代君主はもちろん、日本でも北条家や徳川家、歴代天皇が愛読してきた。というのに興味を持って手にとりました。

さて、そんな題名の『貞観(じょうがん)』太宗の在位年号『政要(せいよう)』は政治の要諦を意味し、太宗の没後四、五十年たったころに呉兢(ごきょう)という史家によって編纂された本書は、二代目皇帝として長く太平の世を実現した【太宗とそれを補佐した優れた臣下たち(魏徴・房玄齢・杜如晦・王珪ら重臣45名との政治問答集】として、第十章にわけて『治世の要諦』『諌言の機微』『人材の登用』『後継者の育成』『名君の条件』等々、主に現在のビジネスパーソンにむけて、約四分の一の70篇を選び、原文の後に【わかりやすい現代訳、注釈がつけられている】わけですが。

確かに【結果として結果さえ出せばいい】とも言える華々しい戦乱期、現代だと創業期とは違って、トップをとった後に【平和な世の中を長く保っていく】には、また違った心得、振る舞いがリーダーには必要とされるわけで。本書で解説される太宗の(自身の努力は当然に)【周囲の意見を素直に聞き入れようとする姿勢】は、時代を越えて、また更に【複雑さ、混迷を極める現代にも通用する】と思いました。

また本書では、様々な重臣たちが登場する中で、生え抜きではなく、かっては敵国の側に属すも、才能を認められて側近に登用された魏徴(ぎちょう)と王珪(おうけい)の出番が際立って多く、個人的には魏徴の【ズバズバと正論をついた発言】が印象に残り、確かに本書自体は帝王学の書として、時代ごとのリーダーの心得書とされたかもしれなくも。大多数がリーダーになれない現実の中、私自身としては(太宗より)【組織人としては魏徴で在りたい】と、そんなことを考えました。

歴史上の君主や教養人が読んできた名著のエッセンスを知りたい多忙なビジネスパーソンへ。また、ダイジェスト的に『わかりやすくつかみたい』方にもオススメ。

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