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リスクを扱うことに慣れている人々の爽快なスピード感【本:辺境から世界を変える ソーシャルビジネスが生み出す「村の起業家」】

「問題の当事者」その響きが、なんだか「カッコいい」と思いながら、本当はその「渦」の中にいると、大変なことばかりで、何も進展が無い毎日のように思えて、それでも「私がそこにいる意義」を自分で見いだせている納得感があると、そのエネルギーだけが、自分を前に進ませてくれている気がする。

そして、この本を読んでいて気がついた。

そうだ、自分は「リスクを扱うことに慣れている人々と働く、あの爽快なスピード感が好き」だったことを。

・ソーシャル・アントレプレナーの役割は3つある
1.政府が単独では解決できない多くの社会的な課題を、当事者に近い場所から解決してみせる
2.通常の企業の行動原では、とても始められないようなことをやる
3.エンパワーメント。働くことはその人が尊厳を回復させることに他ならない。(社会からの疎外感を防ぐ、働くことによって、自分の人生を自ら切り開ける可能性が自分にはあると信じられることで、夢を見ることが許される)

・問題の当事者だからこそ創造力を発揮し、困難を乗り越え、問題を解決していく姿

・非営利と営利の境界線は曖昧になっており、営利企業とNGOが手を組んで事業を開発する事例も急速に増えてきている
・イノベーションは劣悪な状況でこそ必要とされ、必要とされているからこそ進化は加速する
・仕入れ価値がコントロールできないならば、付加価値を付けるしかない
・サービス事業を拡大するなかで決め手になるのは、ノウハウの蓄積。社内のノウハウを編集、加工し、各地で活動するスタッフが使えるようにするには、抽象度が高い作業が要求される。
・自分の人生が変わったのは、夜に本を読み、夜に料理ができたから。
・スタンフォード大学は社会企業に最も早く注目した大学の1つであり、それに興味を持った教員と学生が集い始めていた。彼がもっとも興味を抱いたのは、「90%の人たちのためのデザイン」(Entrepreneurial Design for Extreme Affordability)というクラス。イノベーションを実現するための手法として、デザインが重要視されていて、提携先のNPOやNGOから課題が持ち込まれる。それに対して学生が解決策となるようアイデアを考え、プロトタイプをつくって現地で実験を行い、生産や事業化の方法を模索していくという非常に実践的な授業。彼らの初めての顧客は、国の98%の地域に電気が届いていないミャンマーにいた。
・社会起業家の「登竜門」として名を馳せるスタンフォード大学のビジネスプランコンテスト、GSVC(Global Social Venture Competition)
・夢を語る男:彼のようなタイプの起業家は、変化の軸を見出し、誰もが疑うような可能性に人生を捧げる。彼らの夢はその先進性ゆえに成功を収めてからしか理解されない。
・参入した多くの事業者が失敗した最大の要因は、地域でサービスの運営を担う主体者を見つけられなかったこと。従業員を直接管理できない僻地における最良の方法は、任せること。

・「農耕社会は労働者を中心とする工業社会に比べて、はるかに起業家的。あらゆる農耕社会の生産は天候に左右される。収入を得る機会のすべてが天気任せ。人々はリスクを取らざるを得ないが、それゆえにリスクを扱うことに慣れている。」

・サービスエリアを絞り込むための3つの基準
1.そのエリアの収入の状況
2.どのようなサービスにどれくらいのニーズがあり、どれだけの頻度で発注するか
3.道路などのインフラのレベル
・インフラが整備されていればいるほど、競合は激しくなり、インフラが整理されていなければコストが高くなる。その間で最適な答えを見つけ出す必要がある。
・日本には、ありとあらゆる技術が存在するものの、労働市場の変化により、その技術は急速に陳腐化し、また技術の継承はおざなりにされている。
・「適正技術」とは、技術の先進性のみを評価するこれまでの概念と異なり、使用する人々や社会への効率をもって評価する考え。
・コペルニクが注目したのは、適正技術の中でも、劣悪な条件下でも使える耐久性があり、かつメンテナンスの必要性が低いポータブルな技術だった。
・コペルニクは「寄付」という形はとるが、受益者となる人々がタダ乗りすることは許さない。ローンや補助などを組み合わせながら、便益に応じた適切な負担を求め、中間者となる現地のNGOには寄付が最も大きな効果をあげるようにデザインすることを強く求める。寄付が集まる以前に、適切なNGOを見つけ、当事者である彼らが最貧国の現場で丁寧なオペレーションを行えるかにかかっている。
・援助があると、腐敗が腐敗を助長し、国家は簡単に援助の悪循環に陥る。外国援助は腐敗政府にてこ入れする。つまり、彼らに自由に使える現金を支給するのだ。これら腐敗した政府は、法体制、透明性のある市民組織の設立、市民的自由の保護を防げ、内外からの投資を魅力のないものにする。不透明で投資が少ないので、経済成長は低下し、このことは雇用機会を減少させて貧困をますます拡大する。貧困の増大に応じて、ドナーたちは更なる援助を与えるが、このことがますます貧困を増大させる。
・寄付を主体とした活動は、持続可能性に乏しいとよく批判される。
・当事者が資金調達から管理まで、自ら事業を立ち上げていくという前提に立って、側面支援だけをする。
・安全な水を当たり前のように教授できる場所のほうが圧倒的に少ない。
・ほとんどの問題が世界中のどこかで、誰かが解決している。にもかかわらず、それを他の地域に持っていくことができていないのだ。byアメリカの元大統領ビル・クリントンの大統領在任時の学校教育の改革に際しての言葉
・日本への出稼ぎに限らず、各国へ出稼ぎして資金を手にした労働者が、母国で資本家に変わり、産業を創出していく。中流階級者がバングラデシュの急速な経済成長の原動力。
・NGOが経済発展の原動力となっている国、バングラデッシュ。BRACは日本円にして460億円もの予算を抱え、12万人の人材を雇用している。バングラデッシュの携帯電話の普及の速度は、急カーブを描き、そのインフラを活用して多様なサービスが展開されている。遠隔教育や遠隔医療の実験が進んでいるのもむしろ途上国。
・日本のようにすべてが成熟しているところでは、よほどの工夫と努力をしなければ付加価値を生み出せず、他と差別化することも難しい。しかし途上国では、小さな努力で大きな改善が可能。
・マレーシアでは政府が教育番組を放送する。中国では、携帯電話を活用した英語教育が行われていて、誰でも英語プログラムをダウンロードできる。インドでは、双方向型のラジオレッスンがスタートしている。
・バングラデッシュ:最も成長が早く、人口密度も高く、投資効果が高い、次世代の技術を最も効率的に使うことができる国
・「今日の途上国の多くが破壊的イノベーションにとって理想的な初期市場」イノベーション理論の大家、クレイトン・クリステンセンはこう指摘する。途上国からイノベーションが産まれるという指摘は正しいことではなく、実はそれが知られていないだけ。クリステンセンのイノベーション理論の初期の研究対象は日本だった。なぜ世界大戦で敗退した極東の島国が、世界2位の経済大国になりえたのか。それが彼の問題意識だった。戦後の発展途上過程にあった日本からイノベーションが続々と生まれたという事実も、途上国からイノベーションが生まれるという発想を裏付ける。

・問題はイノベーションを独占できるか否か。(appropriabiilty)そのやり方はいまだに解明されていない。模倣者、消費者、供給者、代替商品の提供者によって、イノベーションから得られるはずの成果は吸い上げられてしまう。
・大事なのは、適切な人を選ぶこと。それには時間をかける必要がある。
・多くの組織では拡大するに伴ってひずみが生じる。これは避けられない成長痛のようなもの。それを乗り越えるためには、誤りを正すことのできる関係をふだんから築いておくしかない。
・カンボジアでは、資金に余裕のある多国籍NGOや高級ホテルですら、カンボジア人の管理職がほとんどおらず、管理職を雇う時はフィリピン人やインドネシア人を雇うことが多い。ミドルマネジャーとして活躍すべき人材が虐殺により失われた為、大学を卒業したばかりの若手と、40代以上の経験を積んだ経営者だけの組織はどこも歪んでいて、コミュニケーションの断絶から生まれる多種多様な問題に悲鳴を上げている。
・NGOから企業に至る多様な形の連帯が、業界の構造的な変革を引き起こした。
・業界のデザイン4パターン
1.スケールアウト型の展開:貧困層をサービスの担い手として取り組みながら、事業を拡大させるモデル
2.情報技術を武器に業界の構造を逆転させていくというアプローチ。「貧しいがゆえの不利益」(BOPペナルティ)と呼ばれる理不尽な価格設定は、市場において供給者側の論理が支配的なとき-競争が存在せず、かつ供給者が情報をコントロールできる場合-にのみ起こる現象。携帯電話やインターネットという技術は、この構造を逆転させることができる。
3.アライアンス。業界の主要プレイヤーが出そろっていないからこそ、有力なプレイヤーを束ね、供給効率を劇的に向上させる必要がある。
4.技術そのものの革新。先進国に眠る技術と、途上国の発想が出合って技術が進化する、ということも忘れてはならない。
・開発、製造、マーケティング、流通、サービス、メンテナンス、寄付、金融
・スケールアウト型の地域展開は、発展期の貧弱な市場でリスクを応分に負担し、市場を開発するスピードを早めるためのアプローチ。また、現場の人々に意思決定の権限やインセンティブが手渡されているので、クリエイティブな挑戦を求められる業態や市場に向いている。
・ユヌスがビジネスとして革新したのは、グループ・レンディングと呼ばれる相互保障の仕組み
・イノベーションを目指すのであれば、くだらない偏見を捨て、つべこべ言わずに世界の37億の人々と飯を食って生活し、ともにどのような変化を目指すのか考える機会を持ったほうがいい
・現状では、貧困層市場に参入する多くの企業が原価を前提とした価格設定を行い、シェアを拡大することなく敗れ去っていく
・リバース・イノベーション戦略:中国で開発されたポータブル超音波診断装置などがアメリカに逆輸出される事例も出始めている
・新興国や途上国といった成長の余地ある市場においての勝負が企業活動の生命線となるはず。にもかかわらず、戦略や開発といった企業の基幹機能を先進国に置き続ける意味はあるのだろうか。
・貧困層の家計の収入構造や消費構造は3層に分かれると言われる。1日あたり2ドルから8ドルの収入を得る上位層は、11億人存在し、支出の32%を裁量支出として消費財やコミュニケーション、娯楽に費やしている。一方で、1日当たり1ドルから2ドルの収入を得る中

・位層に位置する人は16億人存在し、支出の84%が食費や燃料、住居、交通、医療などの生活費に消えていく。収入1ドル以下の層は10億人存在し、支出の73%を食費のみに費やし、最低限の生活必需品の購入にさえ支障がある。
・都市部の貧困層をターゲットにするのか、それとも、農村部の貧困層をターゲットにするのかによって、インフラの整備状況は大きく異なる。
・日雇い労働やタクシーの運転手、手工業というのは、貧困層の代表的な職業だが、それぞれいつ何を売るのかという情報が収入に直結する。携帯電話を手に入れたことで、彼らはビジネスを劇的に効率化させる。

・「次世代のビジネスモデル」開発のための10ステップ
1. イノベーションの創出を目指して参入する
(貧困市場には差し迫ったニーズがあり、このような人々は世界中に37億人いる)
2. 自社の業態を絞りこんでから戦略を立てる(貧困層市場はその非効率さゆえに、主要プレイヤーが揃いきっておらず、開発からサービス、メンテナンスに至るまで多くの断絶が存在している。だからこそ、事業を立ち上げる際には、自社が担う業態が何で、パートナー企業に何を期待するのかを最初に考える必要がある。)
3. 顧客となる貧困層のセグメントを決める
4. 現場でアイデアを具体化する(実行チームを作り、土地勘を得るべき。具体的なサービスやプロダクトの仮設は何か。迅速な意思決定を可能にするだけの情報の共有と、それを主導するチームの構築が求められる。)
5. 最適なローカルパートナーを見つけ出す(貧困層市場において、他国の企業が1社で業界を立ち上げていくのはほぼ不可能。良いローカルパートナーを見つけられるかどうかが、事業の最大の課題。ビジネスモデルを決める前に、パートナー候補を絞り込むというプロセスが決定的に重要。)
6. ビジネスモデルの仮説を具体化する(その際、主要なパートナーの変革の歴史と意思決定の際のポイントを理解しておくことが重要。貧困層市場のプレイヤーは、営利企業だけではない。国際機関やNGO、現地の人々がどういう背景で仕事をしていて、何を重視して決断を下すのかを、よく理解しておくことが良好なパートナーシップの構築に繋がる)
7. 理想とする業界像を描く(仮説が具体化したら、それを早期に実験して憲章する必要がある)
8. 投資の枠組みを決める(誰とどのような投資スキームで始めるのか(買収?投資?連携?)いつまでに、何を立ち上げるのか。エグジット戦略はどうするのか。等パートナーと丁寧に話を進めていくことも重要)
9. 実験を繰り返し、拡大可能なモデルをつくりだす(拡販した場合に損益分岐点をクリアできるものなのか、条件の違う市場でも売ることができるのか、文化や言語、生活習慣、気候などの多様性に耐えうる規格なのか、変更する必要があるならば何を足して何を引く必要があるのか)
10. 拡大戦略の設計(当事者と共に、拡大を目指す。良い拡大にはポイントがある。売上が増大するに伴って、利幅が拡大するモデルかどうかということだ。貧困市場は、むしろ、本当に先進国企業がグローバル化できるのか、という挑戦を投げかけてくる市場)

・日本の寄付市場も十分に成熟しておらず、社会企業の収入基盤は脆弱なまま。
・戦後、日本の行政や市場は相対的に機能しており、掲載されている途上国に比べ、顕在化している社会的課題は少なかった。

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