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インド気まぐれ旅⑦:猫と海とバイクのアンダマン・ニコバル諸島

「いつ行ったっけ?」と、ふと思い出せないくらい、月日が過ぎるのが早い。それでも、アンダマン・ニコバル諸島で思い出すのは、とても質が高いカフェや美味しい海鮮料理を提供するレストラン、穏やかで話しかけやすい人々、チェンナイ出身の方との出会い、自分がどこにいるかわからなくなる程真っ青で透き通るビーチ。ふと、ベトナムのコンダオ島を思い出し、またすぐに戻りたくなった。

来月以降、ここアンダマン・ニコバル諸島は雨季に入っていく。

『地球の歩き方』にも記載がほぼ無かった。ネットでは「モルディブに負けない島」「楽園」「秘境」「インド人カップルに人気」とあるが、同時に、インドに来る前に上司が言っていた「北センチネンタル島」のイメージが強烈すぎて、なかなかこの諸島が近距離にあるイメージがまったくつかなかった。


アンダマン・ニコバル諸島

まず、場所「どこやねん」という方に以下地図を。ミャンマーの南、インドよりもタイやインドネシアのほうが近い。ただ一部の島々を除いてここはインド側からしか行けない。諸島の人々もインド本土からの移民がほとんどなのだ。長らく観光客の立ち入りを禁止しており、今も観光客が行ける島は限られる。そして、私自身も上陸した際に地図を見て、改めて遠くへ来たもんだ、と思った。気候はチェンナイとそこまで変わらず、ベストシーズンは乾季の12月~3月。

そして、上司が言っていた「北センチネンタル島」は、このアンダマン・ニコバル諸島に属しているが地球上で最も「閉ざされた場所」と言われており、2018年に宣教師が原住民の改宗を目指し、上陸を試みたものの殺害された事件で取り上げられた。島の内部は謎に包まれているようだ。メディアや主に宗教者がこぞってこの「謎の島」を取り上げるけれど、一言「ほっとけ」と思う。この距離、本島から約30kmほどの近距離。

白い島が北センチネンタル島

チェンナイからは、IndiGoやSpicejet、そしてAir Indiaなど各種航空会社のフライトがあり、所要時間2時間。行かないと、行かないと、と思いながら、いつの間にか時は過ぎていたけれど、今思う。気に入りすぎて、「なんで、もっと早く行っておかなかったのか!」と。でも同時に、大好きな人々がいる、何回でも行きたい島になった。

以前、コルカタに行ったとき、国内線の到着便の荷物ターンテーブルでアンダマン・ニコバル諸島の主都ポートブレアの名前があって、みんなの服装がハワイから帰ってきたかのような麦わら帽子、短パン、サンダルで少し笑った。そうだ、同じインドなのだ。インドに住む外国人として、国内旅行でこの異国感を享受できるのは有難い。

チェンナイから

ヴィール・サーヴァルカル国際空港@ポートブレア

チェンナイからポートブレアまでのフライトはほぼ満席。繁忙期というのもあって、機内はほぼインド人カップル、家族、そしてたぶんアンダマンニコバル諸島で仕事をしているインド人の若者、そして西欧人らしきヒッピー旅行者3名。・・・と、必ず「韓国人?」と言われる、日本人(←私)。

いざ、上陸

空港につくと、空港係員が目視で外国人と判断するとイミグレーションを通るように言われる。(あれ、目視で良いんかいなと思う。厳しいのか緩いのかよくわからない。)聞かれるのは、滞在場所、滞在目的、宿泊数くらいかな。係員の方々の対応が丁寧というか、非常に紳士な方という印象。インド本土の対応に慣れると、拍子抜けするというか、この高低差を自分でも満喫?しながら、「滞在を楽しんで」と言われて、いざ上陸。(こんどは、1週間くらい滞在するよー島めぐりするよー!)

街中の様子
一瞬でチェンナイに戻った!笑 

本当はさ、この空港からハブロック島まで行く船が出ている港までタクシーとかオートとかさ、バスも途中まで出ているからいろいろ交通手段使うんだろうけれどさ、歩いていたら、いつの間にか突き進んでいた。

・・・で、何を思ったか、政府運航の船が出航する港に来ていた。

Phoenix Bay Jetty

係員の女性に、列に並ぶように言われて、扇風機の前に誘導されて待っていたところ、ふと「これ、ほんまに並ばなあかんのかな。」と思い出してきた。なぜなら、私は事前に高速船の予約をしていた。そして、予約したことだけ満足して、そういえば港はいくつもあるんやっけと思い出す。「気まぐれ旅」は、到着してからも「気まぐれ旅」だった。

Phoenix Bay Jettyは、当日購入も可能な政府運航のフェリー乗り場で、私が行かないといけないのはHaddo Ferry Terminalだった。係員の方も、若干苦笑いで、「オートに乗って!まだ間に合うわ」と。

いやしかし、ここまでもう10㎞ほど歩いてきたのだ。あと4㎞、徒歩40分ほど。歩こう。フェリーターミナルの前では、オート運転手が声を掛けてくる。まぁ、これ普通なら乗るよね。オートで8分ほどだからね。料金も200~300ルピーくらいが相場だろう。(Uber無いし島だから、本土よりも高い)

汗だくになりながら、ひたすら歩く。誰も歩いていない道を。

たまに見える海が癒し。しかし、この頃、出航時間の1時間前を切っていた。若干、急ぐ。マラソン大会のための、ろくな準備とか、定期的なジョギングは正直サボっているけれど、旅をしながら、荷物を持って10kmとか20㎞とか歩いていると、ふと、「これこそが、良いトレーニングになってるんちゃうかな?」と自分を褒める。

Haddo Ferry Terminal

ひたすら歩き、着いた!ここに入るまでに、乗船券のチェックがあった。この辺りの港って、防衛上も非常に重要で監視が厳しく、警察とか軍関係者が至るところにいる。そんなところに、タクシーでもオートでもなく、徒歩で来るから、そりゃ「誰やねん」となるだろうなと思いながら、乗船間に合わなかったらどうしようと若干急いできたけれど、警備の方にすら「落ち着いて、まだ間に合うから」と宥められる。たまに思う。私は、こんだけ汗だくになって、何を頑張っているんだろうかと・・・笑

周りは、バカンスに来たインド人だらけ。チェックインカウンターで乗船券をもらい、その後空港並みの荷物検査を通り、待合室で待つ。なんかふと、ベトナムでフーコック島に行くときに、人間よりもバイクを乗せるための券のほうが高額だったようなことを思い出した。島へ行くときって、なんか変な妄想があって、まるで島流しにあうような、「これ、戻ってこれへんかったらどうしよう」「難破したらどうしよう」みたいな感覚になる(どんだけーーー!)。自分で選んどいて。

あとから調べていたら、あのPhoenix Bay Jettyからは、政府のボートにも乗れるのだった。乗車券は700INRほど。たしか2時間半ほどかかるはず。これも、経験として乗ってみるのも良いけれど、お金で時間を買うのもひとつ。

快適な船内

まぁ、実際は、高速船で船酔いすることもなく、景色を楽しみ、無事到着したけれど。船で働いている方々は、インドの北東州の方々が多いようで、どちらかというと東南アジアのイメージ。「人を見た目で判断するな」というけれど、それとはまた違って、やっぱり見た目から感じる親近感、安心感ってあると思う。

ハブロック島到着

ひたすら緑に覆われた島々

ハブロック島に到着してからも、ひたすら歩く。この島は歩きやすい。あとで思ったけれど、ここでバイクレンタルしておけばよかったなと。普通、そうするんだろうな。

港に到着して15分ほど歩いていると、点在するリゾートホテルにたどり着く。この先にはビーチ沿いにテーブルが並んでいて、ほぼ人がいない。みんな日中はダイビングやシュノーケリングを満喫して、夕方から海辺レストランを満喫するのだろうな。

海辺のテーブルで本を読んでいると、「写真撮ってもらえますか」とインド人家族から声を掛けられる。完全に自分の世界に入っていたので、若干「下界」に戻ってくるまで時差があったけれど(笑)、何枚か撮影。

ふと、その家族グループの一人から「どこから?」と聞かれ「日本ですが、今はチェンナイに住んでいます」と言うと「学生?」と聞かれる。

面白き質問だった。日本人、チェンナイ在住者がこのアンダマン・ニコバル諸島のビーチで本を読んでいると、学生と連想するのか、と。そんな学生生活も、悪くはないな。あるいは「詩人です」とでも言っておきたい。

居心地が良すぎると、つい長居してしまうけれど、この時の私はまだ知らなかった。この後、どこに行っても居心地が良すぎて、むしろこの島から出たくなくなることを・・・笑

この島は、海鮮料理、イタリアン、アジアン、インド料理の宝庫だった。ただ食材があるだけじゃなくて、きっと腕の良いシェフが、この島の生活を気に入って、インド各地からやってくるのだろう。3食でお腹がいっぱいになるのが残念だったくらい、メニューの種類が豊富で、しかもそのメニューが全部ちゃんとあって、全部試したくなった!笑 (注:インド本土では、メニューの種類はやたら多いのに、無いことや既に売り切れ(←ほんまかいな)のことが多い)

あと、穴場も多くて、人が少ないから、サービス低下することも無いし、待たされることも無いし、何よりも静寂を満喫した。そして、どこに行ってもバックグラウンドミュージックの選曲がすばらしく、めっちゃゆっくりできた!このバランスよ!全ての体験が満足だった。

オーナー家族が世界中の旅から得たものを凝縮したデザイン
ダイビングやシュノーケリングなどマリンスポーツグッズが揃うお店

チェンナイ出身の男性は、アンダマン・ニコバル諸島の観光シーズンには島で過ごし、雨季にはチェンナイやインドの他の都市で仕事をするのだそう。その方曰く、ここハブロック島のほとんどの住民はベンガル人。そして、近くのニール島の人口の40%ほどがタミル人なのだそう。

Where am I …? 笑
THE楽園
ふらっと入ったハンバーガーが人気のお店
人懐こい犬もいた

バイクで風を切る瞬間がやっぱりこの島には合っていて、インド人観光客もそれぞれ思い思いの時を過ごしていた。途中、日が暮れる前に誰もいないベンチを見つけたので、そこでただひたすら瞑想時間。

ORANGE RANGEのキズナを聴きながら、ここインドの島で、ベトナムのフーコック島とコンダオ島、沖縄の西表島と波照間島を思い浮かべながら、ただ落ちていく夕陽を眺めていた。

空と海が重なったあの島のような・・・♪

島旅のお供に、E.M.フォースターの『インドへの道』

また、来年

結局、帰りも港から、めっちゃ声掛けてくるオートをすり抜け、ひたすら歩く。空港前にあったオシャレなカフェで一服し、また本土に戻っていく。日数じゃなくて、どれだけ記憶に残る旅ができるか。私の場合、どこかに行く予定を立ててから、とりあえず飛行機はおさえるけれど、現地の歴史や情報、外交関係やODAなどありとあらゆる方面から見るのは機内か、もしくは現地に行ってからになるので、たまに、インプットが間に合わないと感じることがあるけれど、でも同時進行で体験するからまた面白いのかもしれない。直近の新聞には、以下のような情報があった。

・アンダマンニコバル諸島への投資、タイに要請
観光業でも両国による協力の合意を期待する

・アンダマンニコバル諸島のビーチの活用
小屋の建設を検討(収益向上、雇用機会の創出)

・2020年12月18日
NEC、インドチェンナイとアンダマン・ニコバル諸島を結ぶ2,300㎞の光海底ケーブルの建設を完了。本ケーブルの敷設により、アンダマン・ニコバル諸島の通信環境は飛躍的に向上するとともに、電子政府や電子商取引の推進、教育の電子化など、インド政府によるデジタル・インディア政策にも貢献。日本で唯一、深海8000メートルの水圧に耐えられる光海底ケーブルを製造可能なNECの子会社である株式会社OCCが本ケーブルの製造を担当。

・2021年3月26日
外国の初開発援助として日本が参画。アンダマンニコバル諸島は、マラッカ海峡からインド洋に至る玄関口となる要衝。中国の海洋戦略にとってもマラッカ海峡は海上貿易の生命線で、海軍の主要な航路でもある。インド政府は同諸島で太陽光発電など再生可能エネルギーによる発電比率を100%にすることを目指す。総事業費は約40憶円。JICA無償資金協力。インド洋に軍事基地や商業拠点を建設する中国の「真珠の首飾り」構想に警戒を強めているため。

こんどは、ロス島やネール島などアイランド・ホッピングも楽しんだうえで、アンダマンに残る日本の戦跡(1942年~1945年)のひとつ、ポートブレアの独房監獄も訪れよう。

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