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笑顔と健康を伝播させること: 自主隔離中に学ぶベトナム人の教え

新型コロナの影響でベトナムから一時帰国後、自主隔離中。一応、コロナの潜伏期間が14日間と言われていて、帰国者に対する14日間の「隔離」とか「待機」要請って言うけれど、各都市での外出自粛やロックダウンと共に、社会隔離は広がり、リモートワークは進み、この状況がやがて人々の「日常」になると思っている。

ベトナムでは全土に渡って本日から「社会隔離」の状態で、食料品や医療関連のお店以外は休業、必要最低限の外出以外は控え、観光局でも全ての職員が在宅勤務となった為、ある意味国を越えた仕事が「やりやすく」なった。そして、もともと国民がzalo、Facebook、messenger、zoom等のSNSやツールを使いこなす土地柄、ネットでの仕事やコミュニケーションに慣れている。

「こう、せざるを得ない」状況にならない限り、日本はなかなか動かない状況が、皮肉にもコロナによって一気に変化している。あれだけ「リモート・ワーク」に対して、二の足を踏んでいたのに。同時に、人々の動きが止まると、お世話になった多くのお店、宿泊施設関連の皆さんが本日、4月1日から営業を一時休業もしくは閉業という決断を下した。

社会制度や政治が異なる国を簡単に比較はできないけれど、過去1年、ベトナムから日本を見ていて、そして、今、日本で日本を見ていて、「日本は、とても敏感で感情的な国民性だ」という自分なりの再確認。何よりも日々刻々と増え続ける感染者数に、とても敏感だ。そして私自身が、とても発言に気をつけるようになったのも、自分自身で感じている。見えない何かと戦っている感覚。

皆、不安なのだ。誰が感染しているか見えない。自分も気づかずに感染しているのかもしれない。明日、何が起こるかわからない。誰もが、「大丈夫だ」と言ってくれる人を求めているのかもしれない。

そんな人々に言いたい。不安かもしれないけれど、あなたにできることは、愛する人々に「自分は健康だ」と笑顔で伝えることである、と。なぜなら、「笑顔と健康は伝播する」ということを、私は周りのベトナム人たちに教えられ、何度も救われたから。

ベトナムは社会主義国(経済は資本主義経済)で日本は民主主義国なので、政治や法律からして異なる。完全なるトップダウンで動く国と、自粛要請としか伝えられない日本とは違う。ただ、今後この「予期できぬ」世界の動きに、冷静に、迅速に、客観的に、私たちは対応を迫られている。そして、私はこのベトナムという国の、特に周りのメコンデルタの人々の「柔軟性」や「人間力」というものが、世界を生き抜く上で今後計り知れなく重要になってくると思っている。

参考に、以下は3月31日の時点での世界の新型コロナ感染者数。ベトナムでの感染者数は188名(死者0名)でリストには掲載されていない。

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日本人の「敏感で感情的な国民性」は、身の回りに入ってくる情報にも顕著に表れる。

日本語のコロナ記事
まず、日本語の記事は前途の通り「新型コロナウイルス国内感染者2000人超える」「成田空港で帰国者に対する自宅での待機要請をせず検疫を通過させた」等。ひたすら、「また東京都内では感染者数が・・」という情報が入ってくる。とにかく文面が「ネガティブ」だ。その情報を知ったところで、自分がどうしたら良いのかわからないまま、不安に陥る。

ちなみに、上記通過された方々、要請されずとも、自己隔離しましょう。どれだけ元気でも、基本「自分は感染している」意識で。(このニュースが朝日新聞から出た際、日本在住の人々から「外から入ってきた者に対して不安すぎる」というコメントが見られたが、むしろ、帰国者の間では、在住国でのコロナ対策規制のほうが厳しかった場合が多いので、街中でマスクをしていない人々が多すぎる日本のコロナ対策の意識の低さに驚くことになった)

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この情報を放送するのは、もう不安を煽ること、視聴率アップしか考えていない。こういったニュースばかりで、結構うんざりするので、私はもう10年程、テレビを観ていない。で、テレビを観ていないけれど、facebookにアップされるようになったので、余計うんざりw

英語のコロナ記事
ベトナムでは外出する際のマスク着用が義務付けられていて、処分や罰金の対象になるのだが、このニュースは「マスクを着用していない運転手が、腕立て伏せをして自身の健康を証明した」という内容のもの。もはや、ここから少し「笑い」が入る。最初、信じられなかったものが、今では「ベトナムのネタ」として、正直、少し羨ましくなるときがある。ちなみに、これだけではなく、「コロナの歌」に代表されるように、ベトナムはとにかく姿勢がポジティブだと思う。健康に対しても、常によく言われる。

世界経済フォーラムの「限られた資源下でのベトナムのCOVID-19対策」では、2月1日という早期の段階で中国全土からのフライト規制、検疫強化や待機要請、テト休暇後の一斉休校等が評価されている。

ベトナム語のコロナ記事
全体的に、とにかく動きが早い。目的が明確であり、計画からの実行が迅速であり、印象的なのは「家族」を大事にする国民柄、国民全体の健康と社会保障も守る。記事は全て、この3月31日に起こったことだ。現地の友人たちは誰もが「僕たちは政府を信じているし、このコロナとの戦いに勝つ!」と言っている。

「『コロナ拡大防止対策に集中する為に』政府と地方とのオンライン会議の開催を停止する」と。的確な場所にリソースを投入すること、社会保障を保つために主観的にならないようにすることと資源のバランスを保つよう首相が各都市、省に求めた。以前、日本の感染症対策の第一人者である神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授が「日本の医療には無駄が非常に多く、医療従事者に余裕がない。無駄を排除することで余力をつくり、キャパシティを増やせる。」と言っていた。この集中すべきものを見極め、無駄を排除する行動は必須だ。そして、「不確かさに耐える」力を持つこと。

「全国規模の15日間の社会隔離」
3月31日の正午の時点で発令された、4月1日の午前0時からのベトナム全土に渡る外出禁止令。完全なる社会主義のトップダウン。とにかく物事の決断が早くて、スケールが大きくて、守らないと処分や罰金。ちなみに、この時点でまだフェイスブックの東南アジアの旅行者グループで「ハノイからダナンへ行く途中で、明日の宿を探している」というような旅行者と見られる人々の投稿が見られるけれど、ベトナムはこういう規制は徹底していて、宿の新しいゲストの受け入れも一切禁止しているので、キャンプかな・・・。

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上記は、首相指示第16号の内容抜粋。

そしてまた首相は「私たちは、多くの家族が失業により苦しんでいるのを知っている。社会保障の詳細について、明日(4月1日)議論する予定だ。」と語る。

で、以上は政府関連の記事なのだが、新聞記者の方やランナー仲間、同僚、友人たちの間で共有されている記事や画像は、非常に示唆に富むというか、元気をもらう。

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ベトナム政府の記事の画像は非常にドラマチックなものが多い。「COMING SOON」とは映画だ!

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一斉に「社会隔離」が実施される前日の友人のFacebook。元気だ。Đạp xe mùa Covid(COVID季節のサイクリング)というタイトルもまた斬新。

ちなみに、私が行っているジムのインストラクターが、チームにつけた名前はCrossfits Corona。これも、コロナの時期に発足したチームの為。ブラックジョークというか、日本だと「不謹慎」とされる部類の名付け方がまた、日常を笑いで吹き飛ばしてくれる。この環境が結構大事なのだ。

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"I am safe"を仲間に知らせるために作られたバーチャル・マラソンのアプリ。このアプリ上で、期限内に自分の決めた距離を走れるか、己と、またチーム参加の場合はチーム戦での戦いだ。いかに「日常をクリエイティブで満たせるか」。これは何も、この特殊な時期に限ったことではなく、今までも、これからも。

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そしてベトナムで有名なzalo(日本でいうLINE)のコロナスタンプ。これは、是非日本でも積極的に作ってほしい。でもそういう心理的「余裕」もないのかもしれないし、これも「不謹慎」だと言われかねない。

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そして、空港のフリーペーパーに掲載されていたコロナ感染と最前線で戦う人々の物語。こういった医療従事者、空港の危機管理者などの声をもっと日本で聞きたい。誰よりも彼ら、彼女らを守らなければならない。ホーチミンのタンソンニャット空港で働く女性が言っていた言葉が印象的だった。

"Khi bản thân mình an tâm thì mới có sức để cống hiến trong mùa dịch này."
自分自身の心に平穏があると、この時期に目の前のことに専念する力が持てる。

強い。そして言葉が哲学的。もちろん、この女性は同時に「不安」も述べている。家に帰ったときに、子供を抱きたいが、何かをうつしてしまうのではないか、と。重たい防護服を着ての勤務。そして多くの人々が行きかう場所での長時間労働。それぞれが、自身の健康維持に注力することにより、あらゆる人々が「専門」に集中できるようになる、という想像力を働かせることも大事だと思う。

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友人が突然zaloで送ってきた写真。半径1m以上?

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ベトナム航空日本支社のインスタをベトナム人の友人がシェア。「こんなんあったよ~」って、よく見たら日本支社だった。また乗りたくなる。

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「社会隔離」が始まって1日目の、友人の自宅エクササイズ。彼はフェイスブックで動画シェア。むしろ私もこれ欲しい。

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zaloシェア。バイク乗車時も1m以上の距離を保つwこの発想が面白いし、結構「教育的」だなぁと。

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これはコロナ関係無いけど、日常ふとしたときに送られてくる「くすっ」と笑える写真。いや、むしろ必死に解いてしまう。

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ヨガのクラスの方が共有していたメッセージ「感染が広がらないように、社会全体を隔離するという命令を厳守してください。家族全員の平和を願い、毎日家でヨガを練習し、よく食べ、定期的に水を飲み、前向きに考えて。」

私は一時帰国する際に言われたことがあった。「途上国は、医療設備が最新ではないから、万が一の時の緊急支援が不可能だ」と。それは、理解している。日本は世界まれにみる病院のベッド数やecmo(生命維持装置)数を誇る。ただ、日本はオンライン医療や医療設備、教育の施設や設備が可能であっても、それを使う人間の心が弱いと感じている。相談窓口の電話開設するのは良いけれど、それで人の心が疲弊しないようにしないと。そしてシステムを疑うこと。不要なものにエネルギー奪われて、本来集中すべきものに集中できていない状況は何としてでも避けたい。

『サピエンス全史:文明の構造と人類の幸福』の著書であるユヴァル・ノア・ハラリ氏が「多くの国で国全体が大規模な社会実験のモルモットになる」と言っていた。ベトナムは、社会主義国で、トップダウンの指揮で全てが動く。その代わり、政府批判や順守しない場合は罰金や処分などの対象となる。日本は民主主義で、かつ同調圧力が強く働いている、かつ中途半端に市民の権限は強化されているので、何よりも「信頼」が必要だと思う。日本人の日本国に対しての信頼。この状況で、「自国の生存」に集中してほしい。そして個人は、何よりも自身の健康と「命があること」に感謝し、健康に生きるという、当たり前だけれど忘れがちな「笑顔と健康」を周りに伝播させてほしい。


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