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ホタテの日

毎月18日は帆立の日である。
本noteの規定により、年一回だ。
本来は6月18日なのだが、その日は考古学や縄文文化について、
考えるということに本noteではなっている。
高尚ぶって、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」からいこう。

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2018年の過去記事を引用する。

La scène représente à gauche Zéphyr, le doux vent du printemps. Il est 
représenté avec son manteau bleu pâle fermé par un nœud et entouré d'une
 nuée de roses. L'air s'échappe de ses joues gonflées, représenté par 
des lignes droites claires. 
La femme enveloppée d'un manteau vert possède une nature aérienne. 
Politien, dans ses célèbres Stanze per la Giostra, évoque une Brise 
(aura en latin et en italien), nom qui est repris au pluriel par Vasari.

Zéphyr(ゼピュール)というのは西風のことだという
ここちよい春の風を象徴しているかのようだ。
彼の羽織る青灰色のマントの周りに薔薇の花が舞い、
女性を包みこんでいる。
大気からマントにくるまれ守られる女性という題は
これは、Politien(ポリティアーノ)の詩の影響があるという
そしてヴァザーリによって複数回使われたお題だ
La Vénus sort des eaux, debout dans la conque d'un coquillage 
(coquille Saint-Jacques) géant posée sur les flots agités par le 
souffle de Zéphyr. Sa posture est en ≪ contrapposto ≫, pause typique 
des statues grecques antiques : ses hanches sont dans une direction 
contraire à ses épaules, ce qui fait ressortir sa silhouette élancée et 
gracieuse. Du ciel, tombent doucement des fleurs de myrte. À droite, 
elle est reçue par un personnage féminin, l'une des Heures, fille de 
Jupiter (Zeus) et de Thémis ou la divinité du printemps tentant, malgré 
le vent, de la couvrir d'un voile rouge parsemé de motifs floraux, pour 
cacher une nudité déjà bien dissimulée par la déesse elle-même. Cette 
posture témoigne que Vénus est très pudique.
中央には
ヴィーナスが水から登場している。
ゼピュールの吐息によって波立つ海の中、
貝の上にのっている。
ここに大きな帆立(聖ヤコブの貝)が使われている。
腰が肩の方向と逆に捻られているが、
優雅ですらりとしたシルエットを醸し出している。
空には、香桃木属の植物myrteの花が垂れこめる。
右側には、女性が描かれているがこの女性はHeures(ホーラという時をつかさどる神)の一人である。
ここではホーラは、ジュピターと娘とThémis(テミス)の子で春の神聖として表現している。
風が吹いているにも関わらず、花柄の大きなベールを差し出している。
ホーラ―自身の神聖によってすでに隠された裸をさらに覆い隠そうとしているのか。
それゆえにヴィーナスは一層恥じらいを感じているようにも見える
L’ensemble est animé d'un mouvement de légèreté : les personnages
flottent, volent, semblent danser. Le mouvement des fleurs, des cheveux,
des vagues et des tissus répond à celui du vent que Zéphyr fait souffler.

De cette composition ressort une sensation de calme : 
Vénus semble se réveiller d’un rêve, elle nous regarde s
ans nous regarder, ses paupières sont à demi ouvertes ; 
elle est nue, également, ce qui est première dans l'art de la peinture ;
d'ordinaire, seuls les oeuvres religieuses comportaient des personnages
féminins dénudés. La mer est paisible avec seulement quelques ondelettes,
pas de tempête à l'horizon, le vent est léger

たおやかな動きの中に登場人物が浮かび、舞い、あるいは踊っているようにみえる。
花びらの動きと 髪のたなびき、そして海の波とが、ゼピュールの吐息によって
広がっていく様子が見て取れる。
夢から覚めたようなヴィーナスは私たちをみつめることなく、まぶたは半開きである裸身のヴィーナス
海は模様でしか描かれておらず、地平線に嵐もなくただ柔かな風があるだけだ。
神の登場にしてはものすごく穏やかすぎる。
ここで使われている帆立は
古代ギリシャ・ローマでは女陰の象徴である
この女神の目覚めはとてもセンセーショナルだ。
女性の性への目覚めを象徴しているかにみえる。
聖ヤコブを使ってどんなに聖性をとりつくろっても、
ゼピュール(女たらし)の吐息によって吹き飛んでいるようにも映る

薔薇の花が出てくるのだが、アレゴリーである。処女の経血と関連付けられ生殖と豊穣を象徴する聖花として大母神に捧げられてきた薔薇はそれなりの意味がある。アレゴリーは抽象的なことをアイテムで表すことを指す。この逆も成り立つのだから、絵は文章と一緒である。これは決まりごとだから覚えるしかないような類いなものだ。東洋人が想像しても空想しても駄目である。これについては、絵画をみるときに留意しよう。

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帆立は中国語では扇貝(さんべい)と書く。
干したものから、いい出汁が取れるので、いい食材になる。
さて生でも矢張り美味なのだが、私的には飽きてしまう。
火を通すと風味が増して食べやすくなるのだが、
うまみが濃厚なのにすぐに食べきってしまうようで惜しい。
かといって鍋などに入れてうっかりすると、縮こまってしまう。
こうなると味は周りの食材やスープの中に広がるのだが、
身を食べる楽しみを失う。

じゃあ、どうするのか。
そう、蒸すのだ。

香港で蒜蓉粉丝蒸扇贝という料理を食べた。
粉丝は春雨のようなものであろう。
まずは、
锅里放点油,炒香葱姜蒜,放盐,生抽,白糖,高汤,大火收干
ネギやにんにくと唐辛子を油で炒め、
帆立に春雨を乗せさらにこの炒めたものを乗せ蒸すのである。

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こうすると、身を縮こまることもなく、また春雨が帆立のエキスを吸って十分に味わうことができる。さすがは奥が深い料理である。

来年はフランス料理はどんな帆立を調理するのか勉強することにしよう
できればクリームで煮るというだけじゃないほうがよい。

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帆立ラーメンというのがある。
ヌードル・サウンズというお店にある。
本郷三丁目店の写真が↓

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とてもオシャレな外観である。ラーメン屋にみえないが、ここの看板メニューが濃厚ホタテ69ラーメンだ。

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北海道産の帆立貝柱を粉にし、鶏や豚のスープを加えてスープを作る。
刻み玉ねぎと刻み大根であっさりと食べるのである。
もともとは新橋でORAGAというお店だったが、一度たたみ、見事に復活している。

ここでもう一度、絵に戻ろう。
キリスト教の台頭により、ローマ・ギリシャの偉大な文化は過去のものになったのだろうか。幸運なことにそれは否!なのである。ここには見事に復活しているのである。春の風(西風)であるゼヒュールとオーラが強い風とそよ風となって吹いている、海岸には聖ヤコブの貝(ホタテ)が古代世界の象徴として置かれている。

Avec l’essor du christianisme, on aurait pu penser que la grande civilisation gréco-romaine appartenait désormais au passé. Heureusement non ! La voici miraculeusement revenue, poussée par les vents printaniers Zéphir et Aura, souffle puissant et brise légère. Et c’est la coquille Saint-Jacques, clef de voûte et symbole architectural du monde ancien qui la dépose sur la plage.

その風にたなびく壮大なマントは、街一番の美女フローレだ。
このマントこそギリシャ・ローマの文化遺産を継承し、さらに豊かにしていく象徴である。これこそがルネッサンスなのだ。風に散りばめられたピンクの薔薇は、ローマのヴィーナスにフィレンツェの文化が咲き誇ることを加えているのである。

Voyez le magnifique manteau que la déesse Flore lui présente pour la recouvrir. Cette déesse Flore, c'est Forence à qui la plus belle femme de la ville - Simonetta Vespuccia - a prêté ses traits. Ce manteau est le symbole d’une culture nouvelle qui reprend l’héritage gréco-romain tout en le prolongeant et en l’enrichissant. Il s'agit de la "Renaissance". Aux fleurs roses de la Vénus romaine éparpillées par le vent s’ajoutent désormais les nombreuses fleurs de l’art florentin.
●Forence クロリスというnymphe ニンフがいた。ニンフとは、女神に使える精霊である。美しさゆえにゼヒュールに拐かされた。ローマ神話のフローレとみなされる。

この絵が描かれたのは1485年。ボッティチェリが40才のときの作品でフィレンツェのルネサンスの代表的一枚なのである。

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<来年の宿題>
・ホタテを使ったフランス料理
・貝料理の居酒屋について
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