今日も食べる。明日も食べる。
「本当に美味しそうに食べるね」
付き合ってる人に言われて思いがけなかった言葉である。
私って、美味しそうに食べてるのか?
思い出した記憶があった。小学生の頃、給食の時間に友達に言われたのだ。
「麻衣ちゃんってたべるとき目をつむるよね。あじわってたべてるの?笑」
目を瞑っているなんて完全に無自覚だった私は、愕然とした。なぜか目を瞑りながら満面の笑みで頬張る彦摩呂さんが脳内再生され、私は急に恥ずかしくなった。茶化すような友達の口調にちょっとだけ傷ついた。それ以来、食べ物を口に運ぶ時は意識して目を開いて食べるように心がけたのである。
彼は、美味しそうに食べる私が好きだと言った。彼のスマホの写真フォルダは食べる私で埋め尽くされた。
そっか、好いてくれるなら、別に悪いことではないか。そう納得したので今回は食事の方法を特に変えることはしなかった。
彼は私の二倍の量のご飯を、私の半分くらいの時間で平らげる。元々の口の大きさや噛む回数が違うからだと思っていたけれど、彼の話を聞いて理由がわかった。彼は、仕事の関係で素早く飯を腹に入れるということが身についたらしい。つまり、食べ物を腹を満たすものとみなして食事をしていたのだ。
ここのところが私と根本的に違かった。
私はやっぱり食べ物を味わうものとみなしていた。
まず、今日は何を食べようと考える時、必ず自分の心に食べたいものを聞いていた。それとお金と栄養バランスも一応掛け合わせて、その時にベストなものを選択した。
食べる時も、腹を満たすためというのはもちろんあるけれど、それ以上に味わうことを堪能していた。だから自然と噛む回数も多くなったし、少量ずつ分けて食べていたのだ。目は瞑っていないけれど。
「ご飯とおかずの量を計算して食べている」
そう伝えた時も驚かれた。
例えばカレー。私は長年の修行で身に付けた、カレーとご飯を1:1の量ずつ口に運んで最後まで食べきるという技を自然とやってのける。
彼は残った白ご飯だけでもばくばく食べる。彼曰く、白ご飯だけでも美味しいから関係ないそうなのだけれど、私とはカレーの概念が違うのだなと思った。
そんな彼は私のことを羨ましがる。
「食べるのが好きってことは、毎日幸せな時間が3回はくるってことじゃん。いいなあ」
そうだね。私は日々、幸せだ。
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