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言霊と新しき世界、自ら切り拓く


昨日締め切りの仕事を提出し、迎えた徹夜明けの朝。朝といっても目が覚めると昼の12時半。すぐにピンときてスマホを開ける。


新元号「令和」

和風の美しい響き。予想外の爽やかさに、心がほろほろほぐれていく。希望の兆し。解放の予感。


今年大学に合格した弟が、今日東京の寮に引っ越した。家族の新生活が始まる。私の大学も今日から新学期。久々の大学に出向く。桜がまちを所々で色付けしている。貼り出される連絡事項の数々。新入生のはにかみ顔。仕様の変わった附属図書館。本を借りると、貸出期間が2週間から1ヶ月に伸びている。あ、そっか。私今日から4年なんだ。突然やってくる変化の自覚。

弟と反対に、私は実家に帰省する。弟の荷物を運んだ父の車に捕獲されて。春休みというのに色んな用事に追われていたので、やっと一息つける。3日間だけだけど。


実家。参考書が山積みだったリビングが綺麗になっている。知らぬ間にちゃっかり両親が当てていたバスケ選手のサイン付きTシャツが額に飾られている。癌治療を終えた祖母の頭にうっすらと髪。換羽期を終えたインコの艶やかな翼。お風呂上がりのトレーニングに励む父。

私も久々の湯船に浸かる。ホカホカの体で、顔パックを開け、顔に乗せてみる。目の穴の下にくまみたいに丸く折り返された部分。目をつぶってその余剰を引き上げれば、まぶたもパックできるということだが。

「忖度」

ふと浮かんだ二文字。別にパックの余剰はサービスみたいなもので、そんな大層なもんじゃないだろう。だけど、言葉にすると滑稽でちょっと笑えてくる。
ああ、言霊ってこういうことかと、唐突に理解する。謎のタイミングだけど。言霊。別に霊的な力とか魔法とかそういうことじゃなくて。概念に言葉が授けられるということの力の強さ。
世界は言葉で理解される。「雨」という言葉がなければ私たちは雨を知らない。「恋」という言葉がなければ私たちは恋を知らない。
だから言葉が先にあった時、私たちは引力のようにそれに引き寄せられるのかもしれない。私は顔パックを通して「忖度」という言葉に引き寄せられた、ということ。


4月1日。
今日はまさに心機一転の祝日。私の心も日常も、昨日と今日では全然違った。新元号が発表されたという特別な出来事があったから、「平成」じゃない、もう一つの日本にワープした気持ちになる。もう一つの世界。それは、存在するのじゃなくて、私たちが作り出していくものなのかもしれない。

夢物語は存在するのではなく、生み出すもの。まるで言霊と同じ。そんな風に考えて生きていたい。

新元号「令和」という言葉に引き寄せられるこれからの時代は、どんな風に変わっていくのだろう。いや、どんな風に変えていこう。案外悪いことばかりじゃないこの世界。卑屈な目じゃなくて、洗濯されたばかりのような新鮮な目で、世界と付き合いたい。


これからの時代の冒険家たちが、希望を持って新しいスタートを切ることができますように。


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