SHIRO ✳︎落書きたち✳︎


ある1枚の画用紙の上で、おしゃべりをしている人たちがいました。
しろとくろが近づいても、しばらく彼らは気づいていないようでした。

「こんにちは。」

おそるおそる声をかけると、手前の顔の大きな(まるがおくん)人が

「わ!」

と驚いた声をあげました。

その声で他の人たちも、しろとくろに気がついたようでした。

「やぁやぁお客さんだ!
それにしても、、変わった格好をしているね!」

からだの長い人(ながほそくん)が面白そうに笑いながら言いました。

え、

しろは驚き、それから恥ずかしくなって
どこが変わってるのかなと自分のからだを見て探そうとしました。

「きみ、全部真っ白だよね!変わってる!」

顔から小さな手足が生えた(かおだけくん)人が言いました。


「そうかなぁ、、」

しろは少し悲しそうに俯きました。
変わってると言って笑われてしまったことが悲しかったのです。


するとかおだけくんが慌てて

「あ、傷つけるつもりはなかったんだ!
ごめんよ。
変わってるって言うのはね、僕達の間では最高の褒め言葉なんだよ。」

と言い、しろに寄り添おうとしました。

しろは顔をあげ、不思議そうに尋ねました。

「変わってるは褒め言葉なの?」

「もちろん!だって、個性があるってことだし
1番自分らしいじゃないか!
ありのままの自分を好きでいられたら、毎日楽しいだろう?」

そう言ってかおだけくんは両手を広げ、笑顔で

「見てよ、ぼくの姿。顔から手足が生えてるんだ!愛らしいでしょう?
顔しかないから、高いところに手が届かないし手が短いから頭がさわれないんだよ。不便なところもあるけど、でもこんな僕が好きなんだ!」

続いてながほそくんも楽しそうに笑いながらいいました。

「だから、かおだけくんが頭かゆがったら僕がかいてあげるんだよ。
僕はこの通りからだも手も足も長いから、なにかと便利なんだ。遠くのものも取れるし、外も遠くまで見れるんだよ。」

まるがおくんも言いました。

「僕は顔が大きいだろう?
だからいつもバランスをとるのが難しいんだ。よくかおだけくんやながほそくんに転びそうになったら、助けてもらってる。」

「僕達は自分の姿が変わってて好きだし、友達のことも変わってて好きなんだ。」

そう言って3人はほほ笑み合いました。

それを聞いて、しろも思わず笑いました。
素敵な人たちだなと思いました。

それから彼らに、自分の気持ちを話しました。

「ぼくね、羨ましいと思ってたんだ。
色がある人たちや個性がある人たちが。
華やかで、輝いて見えるんだ。それに比べて僕は全身真っ白だしこれと言って、個性もない。
だから、君たちのこともいいなって思ったんだ。
でも、、これが僕なんだね。
全身真っ白でこのからだなのは僕だけなのかもしれないね。」

「そうさ!
白はいい色だよね。空に浮かぶ雲の色、画用紙の色、これから何色にもなれるし、なんにだってなれるんだ。
雲のようにのびのびどこまでも行っちゃってもいいよね。
だからもっと今の自分を好きになっていいと思うよ。」

「嬉しいよ、君たちと話せてよかった。
僕、今の自分が好きになれそうだ。
ありがとう。」

しろが微笑むと3人も微笑みました。

「それはよかった!」

それからしろとくろは、3人とたくさんあそびました。

ながほそくんに抱えてもらい高い所から景色をみたり、まるがおくんとダンスをして転びそうになるのを助けたり、かおだけくんは頭の上にくろを乗せて楽しそうにスキップしていました。

たくさん遊んだ後、みんな疲れたので画用紙の上に横になりました。

「はぁー、楽しいね!
きみたち最高だよ!」

かおだけくんが言いました。

「こちらこそ。ぼくも楽しかった!
初めて思えたよ、ぼくがぼくでよかったって。」

「それはよかった!」

まるがおくんが言いました。

みんな話しているうちにだんだん眠くなり、しろたちはそのまま画用紙の上で眠ってしまったのでした。



✳︎ひとこと✳︎

最後まで読んでくださり、ありがとうございます💐
このお話は個性があってみんなと違うということがコンプレックスだったしろが、

個性を愛し、受け入れあっている落書きたちと出会って

ありのままの自分をもっと好きになっていいんだ

と思えるようになる物語です。

自分の個性を愛し、他人の個性も受け入れていけたら穏やかで、優しい時間がたくさん流れるだろうなって思います。

次回作品もお楽しみに😌

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