見出し画像

モン・サン=ミシェルへの片道切符と夜散歩|ロンドンモンサン2016 #4

前日の行程:
ユーロスターで1年ぶりのパリ入り。そして予約を間違えていた。

モン・サン=ミシェルへの片道ツアーとオンフルール

モン・サン=ミシェル。直訳は聖ミカエルの山。今回の旅のメインだ。

世界的に有名なモン・サン=ミシェルだが、パリからの行き方は少し面倒くさい。個人で行くなら、パリ→高速鉄道でレンヌ→在来線でポントルソン→バスで最寄りの停留所→電気バスでモン・サン=ミシェルという、東京から伊勢神宮に行くような行程。

そんなわけで、せめて片道は楽をしようと、「モン・サン=ミシェル日帰りツアー」の往路だけを予約するという、抜け道を使った。このバスツアーは、前年に「ロワール古城めぐり」をしたときの日本人向けツアー会社のマイバス社だ。

朝7時15分、マイバス社を訪れる。「いらっしゃいませ。おはようございます。」と久しぶりの日本語を耳にする。

・・・と、ここまでは去年と同じだが、ここからが違う。前年、ロワールに行くツアーを待っていた僕は、モン・サン=ミシェルに向かうバスを見送っていたが、今回は見送られるのだ。しかも同じバスでは戻ってこない、片道切符だ。

前年のガイドは、(古城めぐりなだけあって)みっちり歴史・文化財の話を聞かせてくれたが、今回はどちらかと言えばグルメの話がメイン。モン・サン=ミシェルの位置するフランス北西部(ノルマンディー地方とブルターニュ地方の境目)の美味しいものの話。客層が夫婦やカップルが比較的多かったからか、なかなかウケがよい。

だが、僕はグルメには興味がなかった。

そのため、盛り上がる車中を横目に、外の景色を楽しんでいた。ただ一つ、僕が面白かった話は「モン・サン=ミシェルの名物はシードル」というもの。有名なオムレツは、美味しいとか美味しくないとかじゃないので(もとが清貧な巡礼者のために出していたものなので、美味しさを求めてはいない)、それよりも、リンゴと、沿岸でとれる塩から作られるシードルが美味しいらしい。グルメには興味はないが、お酒には若干の興味はあった。

画像2

バスは途中の休憩をかねて、オンフルールという港町に立ち寄った。オンフルールは、モネの絵画にも描かれた美しい街だ。

だが、ぐずついた天候と、滞在一時間という短さで、その美しさをいまいち楽しむことはできなかった。なお、ムール貝をはじめとする海の幸が名物らしい。グルメ情報的に。

画像3

ただ面白いのは、この街がパリ中心部を通るセーヌ川が海にそそぐ河口だということ。それほど大きな街ではないため、貿易港としては足りないものの、漁船やヨットがセーヌ川に並ぶ様子は、港町らしくて悪くない。

モン・サン=ミシェル 防御力が高い

オンフルールの街を出てからおよそ2時間、バスはモン・サン=ミシェル最寄りのバス駐車場に到着した。ここから電気シャトルバスに乗り換える。干潟の環境保護のため、普通のバスは近くまで行くことができないためだ。また、ツアーとしては僕は片道切符なので、ここでガイドや他の乗客とはお別れ。

電気バスに乗り、モン・サン=ミシェルへと続く橋を進むと、次第にその全景が視界に入り、否応なく気分があがる。小島にへばり付くような建築は、まるで城だ。(事実、要塞として使われた歴史もある。)

画像4

電気バスを降り、島内に入ると、巨大な門がある。やっぱり城だ。これは防御力が高い。

画像5

画像6

門をくぐると、そこには小さいながら商店街があり、お土産物屋や食事ができる。また、今日の宿である「ラ・メール・プラール」もその一角にあった。とりあえずチェックインをして、部屋の鍵を受け取り荷物を置く。部屋はこじんまりとした可愛らしい部屋で、1人で泊まるには快適なものだ。

画像7

修道院 現役

島内を散策しつつ、修道院に向かう。商店街の一角が工事中で通れないため、遠回りをしなければならなかったが、それも探検のようで面白い。

画像8

長い階段を上り、修道院内に入ると、その巨大さに驚く。はじめは小さな礼拝堂で、その後、長い歴史の中で増改築が繰り返され、現在の姿になったそうだ。百年戦争期には、英仏海峡の要塞として使われ、その名残で島内には大砲やらが残されている。そのため、主なところはゴシック様式ながら、中世のいろんな様式と、軍事施設としての面影が混ざり合っているため、その歴史を感じることができて最高に面白い。

画像9

画像10

画像11

中庭の回廊を歩くと、柱の間から尖塔がのぞき、中世の修道士の気分になれる。この回廊、何か見覚えがあると思ったら、ハリー・ポッターのホグワーツだ。というより、ホグワーツ自体がモン・サン=ミシェルをモデルにしているようだ。

画像12

なお修道院としても当然ながら現役で、修道士たちが今も暮らしているとのこと。そのため、修道院として現役の部分は見ることができない。ただそれが一層、ここが聖地であることが感じられる。

島内夜散歩

画像13

修道院を後にして再び島内を散策。ただの階段を登ったり降りたりしているだけで楽しいのは、ここが本物の中世だからかもしれない。

時刻はすでに夕刻。日帰りの観光客たちが急ぎお土産を買い求めていて、島は盛り上がっている。小腹が減ったので、トーストを売店のお兄さんから買って食べる。(結果これが夕食になる。)

画像14

やがて日が落ちると、賑わっていた観光客の多くは電気バスで帰っていき、お土産物屋も閉店していった。

画像15

明かりが漏れているのは、僕が泊まっているラ・メール・プラールくらいだ。ちなみにこのラ・メール・プラールこそが、モン・サン=ミシェル名物「美味しいとか美味しくないとかじゃないオムレツ」を出すレストランでもあるのだが、うっかりトーストを食べてしまっていたので、オムレツはいいことにして、部屋に戻った。

しばらく部屋の窓から、ぼんやりと対岸に続く橋を眺めて過ごした。と、ここでふと思いつく。

「そうだ、ホテルを抜け出そう」

海外で夜に出歩くのは普通は避けるべき。だがしかし、ここモン・サン=ミシェルは、そもそも人がほとんどいない場所だ。しかもせっかく島内に宿泊しているのだから、これは出歩かないのはもったいない。

画像16

画像17

画像18

真っ暗な島内は本当に人がいない。人がいない街をただぶらぶらするのは、冒険感があってとてもわくわくするものだ。ただ街灯なんてものは無いので、ところどころの家の明かりを頼りに進む。何があるというわけではないが、暗闇の中の石造りの建物は、より一層中世の街に見えた。

画像19

そして、ライトアップされた修道院は、最高に美しかった。


この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?