見出し画像

【竹下隆一郎のSDGs 1on1】第2回 〜職場を「安全地帯」にする方法〜 ゲスト:堀江敦子さん

「コンテンツの力で、経済と人を動かす」をビジョンに掲げ、サービスを開発中の新会社PIVOT。そのチーフSDGsエディターである竹下隆一郎が、この人と話したいというゲストをお招きして対談をする「竹下隆一郎のSDGs 1on1」。

第2回のゲストは堀江敦子さん。企業に対して女性活躍やダイバーシティのコンサルティングなどを行っていて、最近は大企業からの相談も増加するなど、社会的な注目度が高まっています。コロナ禍において大きく働き方が変わっていく中、『職場を「安全地帯」にする方法』について話し合いました。
※今回の該当テーマ:「5.ジェンダー平等を実現しよう」「8.働きがいも経済成長も」(SDGs: 持続可能な開発目標17項目より)

画像3

堀江 敦子/スリール 代表
大手IT企業勤務を経て、2010年25歳でスリールを起業。 「子育てしながらキャリアアップできる人材・組織を育成する」をコンセプトに、企業向けに若手女性・復職社員・管理職向け研修を展開している。 内閣府、厚生労働省、東京都など複数行政委員を兼任。千葉大学教育学部の非常勤講師も務める。

信頼があるからこそ、厳しいことも言い合える関係性

竹下 SDGsというと環境問題のイメージが強いのですが、実は職場環境や人材戦略の分野とも、密接に関わっています。今日は、その分野のプロである堀江さんのお話を伺い、議論を深めたいと思っています。

堀江 ありがとうございます。私は「仕事と育児の両立」をテーマに2010年に起業したのですが、当時は女性活躍という言葉も、働き方改革という言葉もありませんでした。そう考えると、この10年間で大きく社会の意識が変わってきたという実感があります。

竹下 昨今、地域などのコミュニティにおける直接的なつながりが希薄になってきているからこそ、職場には自分が認められていると実感できるような「心理的安全性」が必要です。

堀江 確かにそうですね。しかし、心理的安全性といってもそこには、何でも受け入れてもらえるという生ぬるい関係性ではなく、信頼を前提にして耳が痛いことも互いに言い合えるような緊張感のある関係性があると思っています。

例えば、相手が家族だと、嫌われたりしないと分かっているからこそ、嫌なことが言えたりしますよね。どんなことでも一つの意見として取り入れてもらえるような、ここにいてもいいんだって思えるような安心感こそが、心理的安全性につながると思います。

竹下 全くおっしゃる通りです。みんなが自由に意見が言える職場というのは、もしかしたら自分が批判されるかもしれない職場ということ。つまり、ダイバーシティというのは優しさだけを発揮することではなく、逆に厳しいことでもあるので、私は自分の職場のダイバーシティには、覚悟をもって取り組んでいます。

画像2

ダイバーシティを会社に導入するには

竹下 私は男性の育児休暇の取得率が2%以下だった2008年に、4ヶ月間の育児休暇を取得しました。最近では男性の育児休暇取得義務化の流れなどもあり、誰もが長く安心して働ける職場環境作りの議論が活発になっています。そのような職場にしていくには、働く個人として具体的にどうしたら良いでしょうか?

堀江 そうですね、二つ大切なことがあると思っています。一つは上司にメリットを感じてもらうこと、もう一つは上司の原体験に紐づけて自分ごと化してもらうことです。

まずは、上司にとってのメリットについてです。育児や介護などに取り組む個人が、自立して働き活躍することで上司の仕事がどれだけ楽になるのか、が分かるように工夫をして伝えてみてください。会社を変えていくには、単に文句をいうのではなく、ポジティブに置き換えて、組織と対話をしていくという心がけが必要です。

また、自分ごと化してもらうためには、体験しかないと思っています。私たちがやっている「育ボスブートキャンプ」では、17時に退社してみるなど、上司自身が育児中の社員の立場を体験してもらいます。それを通じて自分自身のマネジメントを振り返ることで、当事者の意見が自分ごと化できて、変わっていきます。

竹下 確かにそうですね。一方で組織としては、個人的なことこそビジネス的なことと捉え、どうやって職場で個人的な声をあげられるようにするか、が大切です。さらに、その声があげっぱなしにならないよう、どうやってそれを仕組みに落とし込むのか、そしてもし採用されなかった場合に、その意見をどう納得させるのかという工夫が必要になってきます。

堀江 個人の伝え方と組織の受け止め方は、どちらも重要ですね。

一人ひとりが安心して、長く働ける職場に共通していること

竹下 これまで、ダイバーシティのある組織について話してきましたが、そのような会社の共通点はありますか?

堀江 リーダーが率先して、現場の声やさまざまなステークホルダーの意見に耳を傾けて、それをチャンスと捉えている点があると思います。

例えば、サイボウズ代表の青野さんは「何も言わない奴は卑怯だ」とおっしゃっていて、社員に対してさまざまな情報を開示して、意見できる場も提供しています。そのため、社内の制度は人事ではなく、社員たちが自発的に作っています

その例のひとつとして「育自分休暇」という、35歳以下の社員は、6年間は辞めても戻ってこられるという制度があります。育児だけではなく、自分の勉強だったり、海外青年協力隊にいったりしてもいい、というものなのですが、自然発生的に制度ができて、それが自然と社員に使われて広がっていく風土があるのがいいですよね。

他にも、積極的に次世代の声を取り入れるために、新卒を取締役に選出してらっしゃいます。

同様に、ユーグレナさんも、CFO(※Chief Future Officer:最高未来責任者)という「会社と未来を変えるためのすべてが仕事」という役職を、18歳以下限定で募集して、Z世代の意見を取り入れようといていらっしゃいます。

このように、経営者自身が自分と異なる人や、耳の痛い話を積極的に取り入れて、行動してらっしゃることが共通していると思います。

竹下 確かにそうですね。これからの経営者は、社員でもお客様でもないような人をステークホルダーと捉え、意識的に耳を傾けていく必要があります。そうすることで、全く新しいアイデアやイノベーションが生まれる組織となり、多様な価値観を持つ人が安心して受け入れられる、ダイバーシティのある職場になっていくと思います。
堀江さん、本日はありがとうございました。

堀江 こちらこそ、ありがとうございました。

<まとめ>
・信頼関係を前提として、どんなことでも一つの意見として取り入れてもらえるという安心感が、心理的安全性につながる
・個人がダイバーシティを職場に導入するためには、上司にメリットを感じてもらい、自分ごと化してもらえるように伝えることが重要
・安心して働ける職場のリーダーは、率先してさまざまな声を拾い上げ、それを行動に移している

画像1

次回のゲストはブイクック代表の工藤柊さんです。今っぽいヴィーガンについて語りますので、お楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?