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置いてけぼりの世界①

今や、可愛くなる方法すらネットに約束された時代。
人気は自信になる。自信は行動で生まれるもの。

「ミクちゃんもう髪型変えたの?」
「かわいいー!似合う!」

私がクラスへ入ると途端に皆笑顔になる。可愛くなるための努力を怠らない私に相応しい反応だと思う。この髪型は昨日発売された雑誌、anuanuの表紙を飾った人気アイドルyukkiと同じもの。小顔効果ばっちりのふんわりボブに混ざる若干の外はねヘアが抜けを感じさせるのよね。

優越感に浸っているとこちらを睨む視線を感じた。私のこと中には気に入らない人も勿論いるみたいだけれど、先月人気ヘアーランキング1位の髪型したような時代遅れに敵視されたところで相手にならないわ。

フッと薄ら笑いを浮かべる。

この時の私は、自分は独りぼっちなのだと…まだ知らずにいた。

壁に投影された教科書に合わせて私たちの机にあるタブレットも変わっていく。授業はまじめに受けていない。全部インストールされてるし、ソフトを使えば計算も漢字もすぐに出てくるし。

先生達もそれがわかっているからたとえ今、私のように別のことをネットで検索する生徒がいても怒らない。いつか先生もロボットに変わるんじゃないかな。知識に制限ないし、人件費かからないし。

あ…このワンピースいいかも。

タップした途端、大音量で動画が流れる。
「見てくれてありがとー!」
「朝比奈…」
「あはは…すいません」

音量を徐々に小さくしていくと動画の女性がフェードアウトしていく。

「個人製作支援会社Linkが勧める新作は」

はあ。個人製作とか、バカらし…

人気なものを買えば間違いない世の中で、どうして誰かが誰かの感性で作った不確かなものを買うんだろう。

髪や服、鞄から靴アクセサリーまでランキング1位の物で覆われている私はこんな失態をきっかけで誰かに見られても恥ずかしくない。自分を第三者目線で見たとしたら現れるステータス表が見えた気がした。その目のままクラスメイトを見る。Yamazonランキング3位の鞄、Zi-Zitown5位のジャケット。ネットトレンド特集に載ってたチェックスカート。

皆、1位で揃えれば可愛くなるのに。

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