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禁「早食い」セラピー

ある日家族で夕食を食べている時に

「パパが太ってるのは、食べるのが早いからだよ。ゆっくり食べなさい」

と次女に注意された。

私は食べ終わって立ち上がろうとしたところで、見回してみると妻も娘二人もまだご飯が半分以上残っている。たしかに食べる速度に差がある。

どうやら次女は父親の太り具合を問題視しており、独自に原因を探るため観察していたようだ。そしてついにその原因と思われる行動を見つけたので、教えてくれたらしい。ありがとう娘よ。

なるほど確かに私はそれなりに太っている。早食いが太る原因になると聞いたこともある。ここはひとつ心配?してくれた次女の言うことを聞いて早食いをやめ、この太った体と決別するとしようではないか。

「パパこれからゆっくり食べるよ」

そう伝えたものの。

それでスパッと行動を変えられるならたぶんそもそも太っていない。この体はこれまでの数々の決心と挫折の結果だ。挫折が圧倒的に勝ち越している。

次女はウムウムと満足げにうなずいているが、これまでの挫折を見てきた妻は明らかに疑っている目でこちらを見ている。長女は聞いてない。

言ってみたものの自分でもこの決心が続く気がしない。2日後にはすっかり忘れて早食いに戻っているんじゃなかろうか。2日でやめるくらいなら最初からやらなくていいか...と次女の気遣いをドブに捨てるようなことを考え始めたところで禁煙セラピーのことを思い出した。

「禁煙セラピー」というのは20年くらい前に読むだけで90%の人が禁煙に成功すると話題になっていた本だ。

当時私もタバコを吸っていて特にやめる気もなかったのだけど、評判になっていたので「ちょっと読んでみるか」と東京出張の暇つぶしに購入してみた。

すると何ということでしょう、大阪から東京に行く新幹線で読みはじめて、数日後大阪に戻ってくる頃にはタバコをぱったり吸わなくなっていた。吸いたいという気持ちも湧いてこない。意図せず禁煙に成功してしまったのだ。

禁煙セラピーに書かれていた肝心の内容は全然覚えていないのだけど、読んでいるうちに「タバコを吸う必要もメリットもなかった」ということに気がつき、納得してしまったことは覚えている。

大した決意がなくても案外行動というのは変えることができるということを学んだ貴重な経験である。さっきまで忘れてたけど。

この話を思い出して早食いをやめる自信がなんだか湧いてきた。

考えてみると食べることが好きすぎるのが問題なのかもしれない。食事への興味がありすぎる。好きすぎて夢中で食べてしまうのだ。だとしたらこれを解決するには、それが霞むくらい夢中になれるなにか別のものを見つける必要がある。

例えば面白い漫画が置いてあったら子供は食事そっちのけで漫画を読んでしまうだろう。それと同じ状況を作り出せばよいのだ。

自分が夢中になれるとしたら...アレだ。

「というわけでPS5が必要だと分かった。買わせてほしい」と次の日の夕食時に妻に伝えたら「早く食え」と怒られた。次女は失望のため息を吐き、長女はやっぱり聞いてない。

誰か「禁早食いセラピー」を書いて出してくれないかな。


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