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挫折をしても、旅の経験を活かして新たな道が拓けた話

以前、わたしのちょっとした歴史のようなnoteを書いた。
今回はこの記事に書ききれなかった、挫折後のちょっとしたサクセスストーリーだ。

初めての挫折

この記事にも書いたが、わたしはずっと国際協力の道を目指していた。
小学生の頃はユニセフに行くことが夢で、ユニセフハウスに連れて行ってくれと母にせがみ、「どうしたらユニセフで働けますか」と聞いていたらしい。

大学、社会人と徐々に自分で自分の道を選び、歩むことができるようになり、将来の道筋は大体決まっていた。

国際協力に強い病院で薬剤師の経験を積む
→病院の派遣or青年海外協力隊を通して海外経験を積む
→海外の大学院に留学して公衆衛生を学び修士をとる
→国連で働く

このロードマップは定期的に見直していたが、大学のときからこの大枠はほとんど変わらずにいた。もちろん、より地域に根ざした活動がしたいとか、より細かい興味分野は増えていったけれど。
勝手に感じていた使命感と、海外が好きで海外で働きたいという気持ちは、かなり強いものだった。

だから、ロードマップ2番目の「海外経験を積む」ところを目指していたときに父の病気がわかり、東京の実家に戻ると自分で決めた後、やりたいことがわからなくなってしまった。

もちろん、大切なものを選んだことに後悔はない。
でも、今まであまりにもまっすぐに進みすぎていたから、それ以外の道が霞んで見えてしまっていた。初めて味わう挫折だった。

モチベーションが低かった転職活動

「社会起業家」に興味があったため、そのビジネススクールにも通うが、やっぱり海外に目が向いてしまう。
(そこでの学びや仲間との出逢いはかけがえのないものだったし、結婚にも繋がっているので、ここではプライベートな方で道が拓けたけれども!こちらの話は機会があればまた。)

とりあえず、良さそうな薬局がもし見つかったら働くか。

そんなモチベーションで転職エージェントに登録した。
今思えば、上から目線の嫌な客だっただろう。笑
やりがいが持てそうな場所があれば働きたいし、見つからなければ、今すぐ働かなければいけないわけではないので結構です。みたいな感じで言った気がする。
一応貯金もあったし、実家暮らしになったから、お金は当分問題なかった。

東京は地域のつながりも薄そうだし、東京での薬局薬剤師には、正直興味がなかった。その中でも興味のある「ハーブ」「アロマ」「小児」「地域活動」のワードに引っ掛かるところで探してもらった。
そうしたら、条件にぴったりの場所が見つかり、面接中に感動して泣きそうになるくらい尊敬できる社長に出逢った。
神様、見放さないでくれてありがとう。

在留外国人対応の課題

それからは、自分のモットーである「たんぽぽのように生きる」を胸に、ふわりと舞い降りた場所で根強く、この地域のために、この患者さんのためにと働いた。

働くうちに、徐々にその地域の特性がわかってきたのだが、在留外国人が多く、しかも日本語が話せない人が意外と多かったのだ。
夫が仕事で妻と子どもを連れて来日しているケースが多いようだ。わたしの勤めていた薬局は小児科の近くだったため、日本語の話せない母と子が1日に1回程度来局した。

他のスタッフは英語ができない人ばかりだったため、決まってわたしが対応に呼ばれた。
ちなみにわたしは、英語がそこまで流暢なわけではない。
ただ海外経験が周りの人より多く、海外の人とコミュニケーションを取るのが好きなだけだ。

でも対応に呼ばれるたびに、わたしは思った。

自分がいないとき、この患者さんはどうなってしまうのだろう。

知らない土地で、言語が伝わらない国で、本当は聞きたいことやわからないことがたくさんあるだろうに、「自分は英語が話せない」と言語の壁をスタッフの方からも作ってしまっていることで、不安はもちろん質問もできないのではないか。
更には、間違って薬を飲んでしまう危険もあるのではないか。

解決策を考えるために、わたしが考えた課題は3つ。

1. 金銭面
2. スタッフ側の自信のなさ
3. 医療用語

1. 金銭面
自動翻訳機や通訳サービスなどを利用すればもちろん解決するかもしれないが、性能の良いものはお金がかかるので、ニーズがそこまで大きくないことにはお金をかけてもらえない。
大手チェーンだったり、外国人患者が過半数の場所なら話は別だろうが、数が少ないからといって見放していい患者なんていない。

2. スタッフ側の自身のなさ
日本人の特徴かもしれないが、綺麗な英語を話せないと「自分は話せない」と思っている人が多い。
それに既存の薬局英会話の本は、英文が長かったり、文字ばかりが並んでいるので、英語が苦手な人は本を見ただけで「あ、これはわたしには読めない」と活用できていない現状があった。

3. 医療用語
日常会話であればジェスチャーなどを使ってなんとなく伝わることもあるが、専門的用語ではなかなかそうはいかない。
たとえば痰はPhlegm、トローチはLozengeなど、知っていれば単語だけでも伝わるけれど、意外と難しい言葉が多い。それに、医療の専門用語と一般的に患者さんが使う単語では違う言い回しをすることもある。そんなこともあり、Google翻訳など一般的な翻訳サイトを使用すると誤訳が多いようだ。(現在はある程度解消されているかもしれない)

ありそうでなかった解決策

これらのことを前にして、わたしは考えた。
英語ができない人でも対応できる、現場で本当に使える英語のツールが必要だ。

だからわたしは、大学生のときに自分が言語の通じない土地に旅行に行ったときのことを思い出した。
わたしが愛用していたのは、「旅の指さし会話帳」だ。

日本語と外国語、そして発音がカタカナで書いてあり、指をさしてカタカナを読んでコミュニケーションをとるというツールだ。
言語ができなくても、日本語で発音が書いてあるので読みやすいし、イラストによって視覚的にわかりやすくなっている。
指さし会話帳を使うことで、わたしは現地でもコミュニケーションを楽しむことができた。

これを参考に、薬局の現場で頻出のフレーズに絞ったツールを作成した。
情報量が多いといざというときに探せないので、紙1枚に収まるよう情報を厳選して作成することにこだわった

当時はパワーポイントで作成したものを薬局内で使用していたが、幸運なことに、旅の指さし会話帳を出版している情報センター出版局さまのご厚意でツールを監修していただき、きれいに使いやすくデザインしてくださった。
さらにHPで無料公開させていただけることになった。

それ以外にもニーズに合わせたツールを作成したり、近くのインドカレーやさんに声をかけて栄養相談の協力をしてもらうなど、
外国語対応のチームを会社で立ち上げて対応するようにした。

ありそうでなかった取り組みだったのか、新聞などのメディアにも取り上げていただき、講演や雑誌の執筆のお話をいただくことも増えた。

そしてなんと!!!!!
自分が監修した書籍も出版することができた。

英語だけでなく他の言語の対応についても要望が多かったため、まずは一番リクエストの多い英語と中国語に対応できる書籍にした。
今回もこだわったのは、情報の探しやすさ
最初にフローチャートをつけ、それを見ればスムーズに対応できるように工夫した。

人生に無駄なことはない

薬局は、コンビニよりも数の多いこともあり、全国を支えられるポテンシャルのある存在だとわたしは思っている。

全国の薬局が外国人患者さんに寄り添えたら。

東京に戻り、目指していた道がなくなってしまったのに、仕事を通していつのまにかそんなことを思うようになっていた。

旅の経験が、わたしに新しい道を見せてくれた。

まさか旅の経験が、こんな風にわたしの人生を彩ってくれるなんて思ってもみなかった。
きっと、人生に無駄なことなんてない。
遊びだと思っていることだって、仕事に生きること、誰かの役に立つことがあるかもしれない。
旅で身につけた度胸が、何かを動かすきっかけになるかもしれない。

だから、海外になかなか行けない今でも、悲観しすぎずにいてほしい。
挫折を経験しても、常に前を向けなんて言わないから、自分の経験を信じてほしい。

きっと道が見えるときが、やってくるはずだから。

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