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22テイストイメージ診断 第2回

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前回はテイストスケール法の座標がどういう作りになっているかについてご説明いたしました。今回は、それを使ってファッションを分解し、テイスト位置(座標上の位置)を判断するやり方について、書いていきたいと思います。

まずは具体例です。下の写真のファッションをご覧ください。ちょっとだいぶ似合っていないのですが、そこは目をつぶって、首から下をご覧ください。

色を見てみましょう。インナーのポロシャツが彩度の高い黄色、スカートが高彩度の青の地に、高彩度のオレンジのドットですね。全体として、彩度が高い、つまり強度の強い色が使用されています。黄色は高明度、青は中明度、オレンジはやや高明度です。黄色と青は色相差も明度差もあり、コントラストの効いた配色と言えます。青とオレンジも反対色相で明度差がありますので、スカートの柄もコントラストが強い配色です。スニーカーはミディアムグレーに白の紐です。両方とも無彩色で、中明度と高明度の組み合わせですね。ほどほどの明度差です。中コントラストと言えるでしょう。全体のファッションの中では、スニーカーはあまり目立ちません(真っ赤なスニーカーとかならば目立ちますが)。全体としてかなりコントラストが効いており、強度の強い配色と言えますが、もっと強い配色も考えられますので(スニーカーを真っ赤にするなど)、「やや強い」くらいに思っておけばよいでしょう。明度の点では、面積の大きい青が中明度ですので、全体を見たときの印象も中明度です。このファッションを構成している色は、だいたい中濃度と言えるでしょう。

次に柄の大きさを見てみます。オレンジのドットはとても小さいですね。濃度軸上で上の方に位置している、つまり軽さのある柄だということになります。

生地を見てみましょう。スカートは、薄い生地ですね。そして、シャカシャカしていて粗めの質感が感じられます。触るとざらっとした感じでしょう。ポロシャツは鹿の子のぼこぼこした生地です。厚さは中くらいからやや薄いくらいでしょうか。生地感は、全体として、強度は強め、濃度は軽め、というところです。

その他の要素として、スカートにはリボン結びにした紐がいくつかついていますね。スニーカーも紐がついていて、紐を通す穴にはハトメがしてあり、ソールはしっかりめについています。この辺りも、強度を増す要素になります。

という分析を総合すると、強度は「やや強め」、濃度は「やや軽め」のファッションだな、ということがわかります。と、言っても、「黄色は明度が7で彩度が10」「スカートの生地の薄さは5」のように数値化した上で、濃度と強度をそれぞれ足し算して求めているわけではないので、本当かなあ、という感じがすると思います。「ポロシャツの生地の厚さは中くらいからやや薄い」と言われても、どういう基準でそう言っているのか、よくわからないですよね。この基準を一覧にしてお伝えできるととても楽なのですが、今のところ、たくさんの例を見た上で「これくらいならば、まあこんなもんでしょう」という基準を各人が作っていくしか方法がありません。すみませんが、ここは職人技です。将来的にはもう少し簡単に扱える形になるといいなとは思っておりますが。

02-02_ソフトカジュアルの位置

もうひとつ例をご紹介いたしましょう。

02-03_フェミニンとエレガント

左のファッションを見ていきます。色は、まずインナーが透け感のあるオフホワイト、ニットキャミもほぼ同色のオフホワイトです。そしてスカートがミディアムグレーです。全て無彩色か無彩色に近い色で、彩度の点では強度が弱いです。ですが、上下で明度差がかなりあり、コントラストはやや強めですので、その点では強度はやや強めと言えます。靴は光沢のあるベージュで、ストラップはゴールドのラメです。彩度的には低彩度で、コントラストもほぼありませんので、強度は弱いです。洋服とのコントラストも、あまりないですね。ネックレスはごく淡いローズとクリスタル(透明)、バラのブローチは淡い紫です。それぞれ、彩度がやや低彩度〜低彩度で、トップスとのコントラストも弱くなっています。上半身はほぼ一色、という感じに見えますね。全体として、色という点では、彩度は低め、コントラストも上下のコントラストがある以外は全て低めです。

次に素材と装飾について見ていきましょう。上半身はほぼ一色ですが、インナーとニットキャミは異素材です。インナーは薄くて透け感のあるソフトなニット、ニットキャミはもう少し厚めで、コットンの質感を感じる素材です。ニットキャミにはギャザーと紐の装飾もありますね。ネックレスはローズクォーツとクリスタルの組み合わせで、質感には少しだけ差を感じます。インナーの質感との差もありますね。バラのブローチは、上半身の中では最も彩度感を感じるアイテムですが、同時に素材感の面でも少し際立ちを感じます。さらに、スカートはチュールで、生地自体にも強さがありますが、上半身の素材との差も感じます。靴はなめらかな素材ですが、ラメのあるストラップが合わせてあるのでその分は強度が増しています。つまり、このファッションは、様々な質感のアイテムを組み合わせでできており、その点では決して強度が弱いわけではない、ということです。色と素材を総合的に見れば、このファッションの強度は「中くらい」です。

濃度についても考えていきます。色は、上半身が高明度、スカートが中明度です。同じくらいの面積比ですし、全体の明度は「やや高め」くらいでしょうか。素材の点では、薄い生地の組み合わせなので、全体として軽めになっています。ネックレスは小粒かつ透明なので軽め、バラのブローチも決して大きくはなく、素材も分厚くは感じませんので、全体の濃度を大きく引き下げるほどの重さは持っていません。ニットキャミの紐も細めで軽く、そこまで量が多いわけではありませんので、重くなることはありません。靴も中明度、ストラップもヒールも細く、つま先も細く、やや軽めのアイテムです。総合して考えれば、濃度は「やや軽め」の位置にあるファッションと言えます。

02-04_フェミニンの位置

次に、右のファッションを見てください。

02-03_フェミニンとエレガント

色は、上下ともにほぼ差のないミディアムグレーです。低彩度で低コントラストですので、この上下の配色は、考えられる限り最も弱い位置にある組み合わせです。濃度は、明度が中くらいですので、中くらいですね。スカーフのみ、もう少し明度の高いライトグレーです。スカーフにはうっすらと模様が見えますね。彩度も低くコントラストも弱いので、柄と配色の点で、強度は弱いところにありそうです。いろいろな模様が見えますが、細かい模様というわけでもなく、大きなブロックがどどーんと見えるわけでもなく、柄の大きさは中くらいかな、という印象です。このスカーフは、明度は高め、柄の大きさは中くらいですので、濃度的には中くらいからやや軽めですね。トップスとスカーフにはやや明度差がありますので、少しだけ強度が増します。トップス、パンツ、スカーフ全て、生地感はなめらかです。トップスはかなり薄手ですが、パンツは中くらいの厚みです。スカーフがあることで、少し重さが加わります。ブレスレットはほぼ同色のグレー、ビーズは小粒でもなく、重さを感じるほど大きくもなく、中くらいのサイズです。靴は、やや暗めのベージュです。明度は中くらいでしょうか。ストラップの太さも中くらい、つま先も細くも太くもない中くらい、ですね。ヒールは細めですが、黒ですし、ピンヒールではないので、軽さは感じません。全体として、濃度は中くらい、強度は弱めの位置にあるファッションです。

02-05_エレガントの位置

この二つのファッションを比べてみて、いかがでしょうか。両方ともグレーを中心としたほぼ無彩色のファッションで、どちらもソフトな印象ですし、一見すると似ていると思います。ですが、強度はかなり異なっております。つまり、右のファッションと左のファッションでは、似合う人が随分異なる、ということです。このモデルは同じ人なのですが、まあ、両方とも似合っていませんね。その点はごめんなさい。ヘアスタイルやメイクもファッションに合わせて変えているのですが、顔は変えられないので限界があります。


ここまで、3つのファッションを例にご説明いたしました。ファッションの要素をどのように分解してテイスト位置(強度がこのくらいで濃度がこのくらい)を判断していくのか、雰囲気をつかんでいただけたでしょうか。テイストスケール法は、一言で言えば、「物を構成する色・柄・素材などの要素は、それぞれが強度と濃度にプラスまたはマイナスに作用し、全体の演算結果が座標上の位置として示される」という理論です。具体的には、「高彩度」は「強度を増す要素」、「低明度」は「濃度を重くする要素」、「生地がなめらか」は「強度を引く要素」、「柄(など)が小さい」は「濃度を軽くする要素」のような感じですね。その要素の全体におけるインパクト、たとえば色の面積比がどのようになっているかなどを見て、それがどのくらい効いてくるかを判断しつつ、テイスト位置を判断します。それぞれの要素の効きがどのくらいかというのは、勘というか感覚というか、経験則でうまいことわかるようになっています。資格認定講座や勉強会などで実施しているトレーニングについても、機会があればご紹介したいと思います。また、これはあとでご説明いたしますが、合わせて「誰と調和するファッションなのか」(当該ファッションに誰の顔を当てたとき、それが調和して見えるのか)というのを見ることで、補強しています。このやり方が正しいという主張は、こういう活動を長いこと続けていく中で、このやり方で全体に矛盾がなく、訓練をした人の間で意見が一致する、というのが一応の根拠となっています。

さて、22テイストイメージ診断と言いつつ、何が22なのかを全くご説明しておりませんでした。テイストスケール法では、座標を22のエリアに分けて、それぞれに名前をつけています。そのひとつひとつを「テイスト」と呼んでおります。下記の図をご覧ください。

02-06_22のテイスト名

座標の左上、「キュート」のエリアは、強度がかなり強く、濃度はかなり軽い、という位置です。それよりもさらに強度が強く、しかし濃度はやや重くなるのが「クリアスポーティー」の位置です。「キュート」よりもやや強度が弱く、濃度が軽くなると「ロマンティック」の位置になります。「ロマンティック」は全てのテイストの中で最も濃度の軽いテイストですね。「ロマンティック」と同じ強度で、濃度がやや重くなると「フェミニン」です。「フェミニン」と同じくらいの濃度で、強度が「クリアスポーティー」と「フェミニン」の中間くらいに位置するのが「ソフトカジュアル」です。こんな感じで、イメージを表す言葉がつけられた22のエリアが存在するわけです。

現在でもテイストスケール法は配色を中心とした理論なのですが、故佐藤邦夫先生がテイストスケール法を考案したのも、配色とイメージの関係からでした。たとえば、上で挙げた5つのテイストは、下のような配色からイメージされる言葉を名付けたものなのです。

02-07_キュートからフェミニンの配色

特に色彩の理論に関して知識がなくとも、キュートの配色とフェミニンの配色を比較すれば、キュートのほうがより強く、フェミニンはよりソフトに感じると思います。また、ロマンティックとフェミニンを比較すると、ロマンティックに軽さを、フェミニンに重さを感じるのではないでしょうか。佐藤先生は、様々な配色を「強さー弱さ」「軽さー重さ」を軸として分類し、「同じくらいの位置」に存在するもの群としてまとめようと考えました。これは、実験により、人が配色からイメージする言葉が「同じくらいの位置」の配色で共通していることを発見した結果です。この群の数が22だったので(人が配色からイメージした言葉をカテゴリ別に分類するとき、カテゴリの数を22にするのが最も合理的だったので)、テイストスケール法には22のテイストが存在します。

もともとは配色だけの理論だったのですが、ここに素材感や形状を加えることで、実際のデザインにしっかり役立ちます。色だけをしっかり考えたところで、素材や形がイマイチならば、その物はどうがんばってもイマイチなのは当然ですよね。と、いうわけで、「キュートの配色」に合う素材や形状はどういうものなのか(キュートな配色でごつい素材とごつい形状では、キュートだと感じていいのかどうなのか、人はよくわからなくなってしまいます。きちんとキュートに見えるには他の要素をどうしたらいいのか、ということですね)、「ロマンティックな配色」ならばどうなのか、ということを考えていった結果、今のようなテイストスケール法の原型ができあがった、ということです。

22テイストイメージ診断では、「あなたはキュートタイプです」という具合に、テイスト名で診断結果をお伝えします。ですが、これを「あなたはキュートなファッションをすると似合うタイプです」というふうに解釈するのはちょっと待ってください。22テイストイメージ診断では、「キュート」というのはあくまで「位置」につけられた名前にすぎません。「位置」というのは、「このくらい強くて、このくらい軽い」ということですね。非常に抽象的なので、ここから具体的なファッションを想像するのはとても難しいと思います。逆に言えば、具体的なファッションのご提案をしているのではない、ということです。次回はそのあたりのお話をしたいと思います。

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