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いつかの夏に乾杯を

ビールがおいしく飲めるようになったのはいつからだったろう。よく覚えていない。

はじめてその味に触れたのは、親父にちょっとだけと言ってもらったのだったか、お茶と間違えて飲んだのだったか。
いずれにしろ、衝撃的にまずく感じたことだけが確かだ。

毒だ。これは毒だと思った。これを喜んで飲んでる大人達は頭がどうかしてると思った。

それでも周りがやたらとうまそうに飲むものだから、なにか秘密があるのだろうと興味だけが膨らんでいった。

そしてお酒が飲めるようになると、すぐにビールを試した。やっぱりおいしくなかった。でも、その頃になると親やTVだけじゃなくて同い年にもあのうまそうな表情をして飲むやつが現れる。ずっと膨らませてきた興味はそう簡単にはしぼまない。飲み会が続くなか、思い出したようにビールに挑戦しては撃沈していった。

あの苦味を受け入れられたのは、それを拒否した時よりも劇的なものじゃなかったと思う。
最初はなんだか今までよりいけるなと感じて、繰り返しているうちに喉を鳴らして飲むようになっていった。

いまじゃ、僕よりビールをうまそうに飲むやつはちょっといないんじゃないかってほどいい顔でグビグビといっている。

冷えたグラス、黄金の液体、白い泡。ストレスを弾けさせる炭酸に、幸福を噛み締めるような苦味。

最高のお酒だ。そう思えるようになったのはいつだったか覚えていないけど、きっと夏だったんじゃないかと思う。

だって、この季節のビールはこんなに美味しいのだから。

さぁ、注ごう。

あの夏に、この夏に、乾杯!


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