びしょ濡れの僕らと飲み干せない友情
盆に友達四人で宅呑みをした。場所はいつもの、山小屋みたいなアパートだった。
暑い日差しの昼過ぎ。皆が揃うと、時間などお構いなしに宴は始まった。ローテーブルに買い出ししてきた惣菜を雑に広げ、グラスにビールを注ぐ。
一人一人とはたまに遊べても、中学校の友達4人が全員揃うタイミングは少ない。こうして集まって、皆の顔をみながらグラスを鳴らせることがとても嬉しい。
前は肉ばかり並んでいた机に、いまはゴマ和えや酢の物が混じっている。買い出しの時の予想通り、みなの箸はそちらに伸びていく。
「おっさんになったなぁ」と言いながらビールを飲む笑顔は、言葉とは裏腹にどこか若々しい。食の好みの変化なんて、嘆くことじゃないものね。
嫌な大人にならなければいいなと考えながら、僕も笑う。もう30歳になるのに、そんなことを思うくらいには子供なのだ。
顔をみていると、なにも変わってないように見える。でもきっと皆少しずつ変わっていっていて、それに苦しんだり喜んだりしているのだろう。それでも、やっぱり笑い声は昔と変わらなくて。ふつふつと浮かぶ幸せを、言葉にする前にビールで流し込んでいた。
山小屋もどきのニューマシン「羽根ない扇風機」の性能に驚きながら、結局汗はおさまることなく「あっついなぁー」と繰り返す僕ら。
そんな時、山小屋の主がすくっと立ち上がって玄関へ向かうと、髪をびしょ濡れにして戻ってきた。
表の水道で水浴びをしてきたんだ。彼は笑って「涼しいー!」と言った。
その爽快な様子に、ためらうことなく皆が続いた。
照り付ける日差しの中で、ホースから水がキラキラと輝いていた。最初は髪を濡らすだけだったのが、そのうちに誰かが服の上から水をかけると、もう着替えがないとかどうでもよくなって、あっという間に僕たちは水浸しになった。
4人で「涼しいー!」と大声をあげる。はしゃいで笑っているうちに、夏の暑さは濡れた体を乾かしていく。その度に誰かが水をかけ、また子供のように笑い声があがる。
幸せだった。その時僕の手元にビールはなくて、湧き上がる言葉はそのまま喉から外へ飛び出した。
「友達かよ!!!」
僕は叫んでいた。あいつも、あいつも、あいつも。びしょ濡れになりながら頷いて、「友達やなぁ」と笑っていた。
こうして思い出しながら書いているだけで、自然と口角があがっていく。今、僕の手元にビールはあるけど、この暖かな気持ちは何度やっても飲み干せない。
また集まれるのを楽しみに。
あの夏に、乾杯。
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