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あの頃、リモートで繋がって出来た曲『脳内旅行』

2年前の春から梅雨にかけてのあの頃。
第1回目の緊急事態宣言が発令され、日常の風景や生活様式が急に変わり始めた。
あらゆるイベントやライブは中止や延期に追い込まれ、不要不急の外出自粛やステイホームなんて言葉もよく聞いた。県境を跨ぐ移動はもってのほかだった。

そんな日々の中、YouTubeの片隅で生まれた曲がある。
1人の鼻歌シンガーソングライターを中心に全国各地の顔の見える人や見えない人が集まり、歌詞が紡がれ音楽になって旅の記憶が一本のミュージックビデオにもなった。

タイトルは『脳内旅行』

RYO TAKAKURA(漫才コンビ三拍子の高倉さんが音楽活動をする時の名義)と帯広のバンド“かれこれ黄昏”の出会い、『脳内旅行』と言う曲が完全リモートで作られて行った過程、そしてこの2組が再会して曲を披露した帯広凱旋ライブまでを書き残したい。

2020年3月14日『ホワイトデーライブ』in帯広

北海道帯広出身のRYO TAKAKURAさん凱旋ライブとして開催されたホワイトデーライブ。
イベントを開催するか中止や延期にするかは各主催者の判断に委ねられていた難しい時期で、それは出演者や観客も同じだった。

今では当たり前になったオンライン配信も出始めた頃。このライブも開催10日前くらいに急遽配信が決定した。(出演者の方々も主催の方もかなり大変だったと思う。)
3月14日のホワイトデーライブにてRYO TAKAKURAと共演したのが“かれこれ黄昏”。
初対面だったらしい。

ライブの様子

かれこれ黄昏は帯広を中心に活躍している3人組のエンタメグループで、ギターとカホン、ボーカルの歌声がとにかく格好良い。そしてなぜかトークがおもしろい。
音楽に疎く説明が出来ないのでまずは動画を見てほしい。格好良いとしか言えない。

RYO TAKAKURAさんの楽曲はバラエティに富んでいて一つたりとも似通った曲がない。
本業漫才師なだけあって歌詞が面白くて語感も良く一度聞いたら耳から離れない曲調が特徴的。

公式YouTubeチャンネルでも何曲か聴けるが、各種サブスクにてアルバム『SONGEN』が絶賛配信中なので是非聴いてほしい。

2組の縁はここから始まるが、2年後の6月まで再会することは無かった。オンラインを除いて。

RYO TAKAKURAチャンネル配信

2020年4月14日 新曲制作企画始動&歌詞の募集

2020年4月7日に東京など7都府県に緊急事態宣言が出て、凡そ10日後には全国に拡大した。
三拍子が毎週月曜日にやっているYouTube生配信番組『生漫DAY』も時間帯を22時から19時に移動し、テレワーク形式で行われるようになる。

4月9日からRYO TAKAKURA公式YouTubeチャンネルにて高倉さんが週1回の生配信を開始。
第2回目から視聴者を交えての新曲制作企画が始まる。
RYO TAKAKURAの楽曲がどういう風に作られていくかをみんなで参加しながら見ていこうと言うものだった。

それまで当たり前のように出来ていたことが出来なくなったり様々な楽しみが失われて行った中で、何かが出来ていく過程を見るのはとても楽しかった。

まずは歌詞の作成から。
緊急事態宣言中でステイホームや県境を跨ぐ移動の自粛が叫ばれる中、旅行気分だけでも味わおうと言うことでテーマは「旅行」に。
配信を見ている視聴者からチャット欄で旅行あるあるを募る。
ついつい大喜利気分で書き込んでしまう者もいれば、誰もが共感するような旅行にありがちな出来事を書き込む人もいて楽しい時間だった。

2020年4月21日 新曲アカペラ披露&かれこれ黄昏協力決定

冒頭でチラッと書いたがRYO TAKAKURAさんは鼻歌シンガーソングライターの異名を持つ。
楽器を弾いたり楽譜に起こして曲を作るのではなく、鼻歌で頭の中のメロディーを表現してプロのミュージシャンに依頼をして曲を作り上げていく。

旅行あるあるを募集した1週間後には歌詞が完成し、生配信でアカペラを披露した。

過去も未来も世界の果ても
脳内旅行
旅に出よう

RYO TAKAKURA「脳内旅行」より

私は特にこのフレーズが好きで、頭の中で何度もリピート再生していた。
当時はかなり鬱屈とした日々を過ごしていたので世界がどこまでも広がって行く感じがとても心地よかった。

さて曲の原型は出来たが、ここからプロの手によって育てて行く必要がある。誰に依頼すべきか。あの人が良いんじゃないか、この人ならやってくれるんじゃないかとチャット欄を交えてあーだこーだ言っていた時に颯爽と現れたのがこの人。

かれこれ黄昏「曲つけます!」

これぞ生配信の醍醐味。
何かが始まる瞬間にリアルタイムで立ち会える。

ここからRYO TAKAKURAさんは東京でミュージックビデオの撮影、かれこれ黄昏は北海道で曲の作成に取りかかる。
5月に入ると全国各地に点在する視聴者達はミュージックビデオに使う思い出の旅行写真を用意し、RYO TAKAKURAさんに送った。

2020年5月13日 かれこれ黄昏 デモ演奏披露

アカペラを披露して約3週間後には曲が完成し、かれこれ黄昏のデモ演奏が公開された。

始まった瞬間からいきなり格好良い。
誰もアカペラからは想像出来ない仕上がりだった。
どこか物悲しいような、それでいて力強い。
突如現れて工藤静香ダンスをするホワイト渡辺さん(サングラス)も良い。

最高の曲が出来あがった。
残すは MVの完成を待つのみ。

2020年6月17日 『脳内旅行』 MV公開

デモ演奏披露から約1ヶ月後、『脳内旅行』 MVが公開される。

動画を見ると分かるが撮影は全て高倉さんの自宅内で行われており、一歩も外に出ていない。(一瞬玄関から外に出ようとして止めるシーンもある。)

視聴者から寄せられた思い出の旅行写真をRYO TAKAKURAさんが歩いて巡る。

脳内なら国内のみならず世界どこへでも旅行が出来る。思い出の場所へも行ける。
今はまだどこへも行けないけど、落ち着いたら好きな場所に行こう。

そんな想いが込められた MVとなった。

映像の制作に携わったよし江さんはRYO TAKAKURAの『目玉バキバキ男と蝶ネクタイ木男』のアニメ MVも手がけている。

曲の方だが、高倉さんが自宅で録音した歌を帯広在住のエンジニアよっちさんがかれこれ黄昏の演奏と合わせてレコーディングしたらしい。

東京と帯広で一つの曲が作れるのかと驚いた記憶がある。

MVを見ていつかこの2組が揃って『脳内旅行』を歌う日が来てほしいと強く思った。


2022年6月5日 帯広凱旋ライブ


MVが公開されてから約2年後、遂にRYO TAKAKURAとかれこれ黄昏の再共演が実現する。

三拍子が旭川での演芸祭に出演した翌日に開催された帯広での凱旋ライブ。
高倉さんの同級生も多く集まる中、終始温かい雰囲気で行われた。

1曲目は『脳内旅行』

かれこれ黄昏とRYO TAKAKURAさんが同じ画面に現れて、ギターとカホンが鳴り響いたその瞬間。
RYO TAKAKURAさんが歌い、かれこれ黄昏の笹原さんも歌い、2人の歌声が重なりあったその瞬間。
ホワイト渡辺さんがRYO TAKAKURAさんの横で工藤静香ダンスをしたその瞬間。

全部がこの2年間待ち望んでいたもので胸がいっぱいになった。

落ち着いたら脳内じゃなく
駅前の足湯入ろう

『脳内旅行』より

『脳内旅行』の歌詞は最後こう締め括られる。
ようやくあの騒動が落ち着いて以前のような日々に戻りつつあるのかと思うと感慨深い。

2年前の3月に帯広で出会った4人が、どこへも行けない日々の中で遠く離れた場所から1つの曲を生み出し、帯広で再会してその曲を歌う。

その一連の流れを見せてもらい、歌詞や MVの作成に参加させてもらうことが出来て本当に良い思い出と経験になった。

推してて良かった三拍子&RYO TAKAKURAさん

瞬間で見ても長いスパンで見ても楽しく面白いものを見せてくれる。今やっている何かがこの先大きい何かに発展するかもしれない。
これだからファンをやめられない。(やめようと思ったことはないが。)

なお、『脳内旅行』はアンコールでももう一回披露された。ビキニ姿で。

バッグにそっとビキニ詰めて
今日はどこに行こうかな

『脳内旅行』より

歌詞の伏線回収である。
(初めての人に説明が難しいがRYO TAKAKURAさんがビキニを着て「ヘンタイです」と歌い踊るBeach Queenと言う曲がある。そのおかげでRYO TAKAKURAと言えばビキニ。)

今回は配信での視聴となったが、いつかこの2組がまた帯広で『脳内旅行』を歌う姿を見に行きたい。


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