続・孤独の冷やし中華
その日は歩くだけで背中に汗が一筋垂れるような蒸し暑い日だった。
所用を済ませた私は昼食をどこで食べようか考えあぐねていた。
せっかくだから毎年行こうと思っているうちにシーズンが終わって食べ損ねているちょっと良い中華料理屋の冷やしトマト麺でも食べに行こうか…いや、今日は白いTシャツを着ているからスープが跳ねてシミにでもなったら大変だ…やめよう。
次にパッと頭に思い浮かんだのは昔からある居酒屋の海鮮丼ランチ。手頃な価格にも関わらず厚めの刺身が乗った満足度の高い一品。
現在地から徒歩5分ほど。道中、新しく出来た唐揚げ専門店を気にかけながら目的地に向かう。
店前に着く。
「11日〜15日は営業します。16日と17日は休業。」
すっかり曜日感覚と日付感覚を失った私はスマホを取り出しホーム画面を確認。なるほど。今日は16日の火曜日。
踵を返し、第二候補の海鮮丼の店に向かう。
そこは鮮魚店が営む飲食店で、前述の店より少し高いが鮮度は抜群。味は間違いない。歩いて5分ほど。
道中、先ほど気になった唐揚げ専門店で試しに鶏モモ唐揚げをひとつだけ買ってみる。うまい。揚げたて。今度は鳥南蛮も買ってみよう。
目的の鮮魚店兼定食屋に辿り着く。なるほど。
座る場所がない。
とんでもなく混んでいる。やめよう。
近くにランチで海鮮丼を出している魚専門の居酒屋もあったが、何か違う。これじゃない。
何の未練もなく商店街を立ち去り、Googleマップで海鮮丼と検索するが目ぼしい店は見当たらない。
これはもう、冷やしトマト麺を食べに行けと言うグルメ神の思し召なのではないだろうか。
10分ほど歩き目的地に着く。
店頭には「恐れ入りますがただいま満席です」の札が掲げられている。ご丁寧にありがとうございます。
店員さんは申し訳なさそうに「20分から30分お待ちいただきますが…。」と告げる。
恐れ入りますが待たせていただきますよ。20分だろうが30分だろうが。
結果、呼ばれたのは45分後だった。
唐揚げを食べていて良かった。(寝坊した為、なにも食べずに外出している。)
あと本を持ってきていて良かった。(古い店なのでスマホの電波が入らなかった。)
心なしか薄暗い席に着く。
さすがちょっと良い店なだけあって、水ではなくライチ紅茶なるシャレオツな飲み物を出してくれる。しかも青いグラスに注いで。
うまい。キンッキンに冷えてやがる。ライチの香りがする。
一応客として形式通りにメニューを開き、即座にお目当ての冷やしトマト麺を注文する。私はこれを食べるために45分も待ったんだ。45分も。
おしぼりと紙エプロンが運ばれて来る。
白Tスープ跳ね問題は一瞬で解決した。ありがとう。
そこからまた15分ほど待ち、やっと冷やしトマト麺がやって来る。
白い冷気のようなものが見える。まさかアイス並みに冷やして…?
一口食べる。
うんめえ〜〜〜。
素揚げした野菜が1番うまい。特にナスうんめ〜。
麺もツルツルでおいしい。
トマトスープもうまい。
素揚げしたヤングコーンもうんめぇ〜。
海老は普通。
ごちそうさまでした。
※途中から「孤独のチェーン」のパロディでお送りしました。
※「孤独のチェーン」とはサンミュージック所属の漫才コンビぽ〜くちょっぷの篠木さんが一時期YouTubeで公開していたグルメ動画シリーズ。「孤独のグルメ」からレポートやうんちく要素を除き、ただ「うんめ〜」と言う心の声が漏れる世界一平和な動画であり、一部界隈では根強い人気を集めている。
※1番のおすすめは「いきなりステーキ」回。緊急事態宣言明け一発目の作品で久々に「こどチェ(孤独のチェーンの略称)」できる喜びが随所に溢れている。
※冷やしトマト麺の冷気に見えたものは、素揚げした野菜の湯気でした。
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