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そういうものにお金を払えたことを、ありがたく思った。

月曜日のヨガが厳しいものであることは、もうわかっていた。しかし、わかっていても対処のしようはない。今日もまた、わたしの上半身の体力は、プランクとサイドプランクに持っていかれてしまった。げっそり。

昨日、久しぶりに友人たちと話ができたからか、それとも単に天気がよかったからかはわからないが、なにやら生まれ変わったようなすがすがしい気持ちで朝を迎えた。今日の自分は新しい自分なのだから、これまで先送りにしていたこともどんどんやっちゃうぞ!と、どこからか意欲も湧いてくる。これはめったにないことだ。その意欲を無駄にせぬよう、ずっと気になっていた物事を朝から次々と片づけることにした。

今風にはストックルームとよばれるらしい、納戸の整理をする。出したままになっていたオイルヒーターを片づける。最近ほぼ出番のないホットプレートを納戸にしまい込む。その空いた場所に、オーブンの上に乗っていた各種天板を収納する。どれも大した片づけではないが、まとめて済ませることで、何か大きな仕事を成しとげた気分になった。

引きこもり生活では日々の変化が感じにくく、ただ同じ毎日が繰り返されていくような気になってくることがある。そこを踏みとどまり、1日1日に違う色を付けていくには、こうやってルーティンでないことするのが大事なのかもしれない。

夜は、昨日、ワインショップで買ってきたおかずセットを食べることにする。少し離れたところにある人気イタリアンレストランが、このワインショップでの販売のために数量限定で用意したものなのだという。ハンバーグとエスカベッシュとカポナータが、それぞれ真空パックになって入っているセットだ。昨日、たまたま一つだけキャンセルが出たとのことで、店員さんが勧めてくれたのだ。「一人前しかないから、二人だとけんかになっちゃうかもだけど……」と言いながら。

ハンバーグには、この状況下で高級ホテルなどから買い手がつかずに行き場を失った高級な牛肉が使われているのだという。このイタリアンレストランは、予約が取れなくて有名なお店だと聞くから、これは願ってもない機会だ。たとえこの先にけんかが待っていようとも、突き進むほかはない。わたしは、無言でうなずき、財布を出したのだった。

エスカベッシュとカポナータは、真空パックから出してそのままお皿に。ハンバーグはパックのまま湯煎で温めてからお皿に。そもそも人気店のシェフが作ってくれたものだから、真空パックを経たものとはいえ、見た目はもちろん美しい。ちょっとおしゃれなお皿を使っちゃったりなんかして、ごちそう感も出してみる。これだけだと二人で食べるには少ないので、家にあるもので適当おかずも作って、テーブルに並べた。ちょっとちぐはぐな感じもするが、気にしてはいけない。それが家庭料理というものだ。

ハンバーグは、ひき肉に加えて牛肉を細かい角切りにしたものも混ぜて作られており、ぎゅむぎゅむしてたいへんおいしい。ハンバーグだと、家で簡単に温めて、おいしく食べることができる。人気店シェフによる、高級牛肉をうまく生かしたさすがのアイデアだと感心した。どこかで誰かが問題を抱えたら、そのそばにいる人がアイデアを出してともに乗り越える。なんだか、そういうものにお金を払えたことをありがたく思った。

(2020年5月11日)

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