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チャーハンと海老餃子は、それはもう特上の味がした。

よく晴れた、でも風の強い1日。大輪の花で家の中を明るくしてくれていた芍薬は、3本とも、そろそろ終わりのときに近づきつつあるようだ。最後まで見守って、また新しいお花を買いに行こう。今度はどんなお花にしようか。

夕方、LINE で連絡が来る。夫の先輩の奥さまからだ。昨年末、こちらとあちらの2家族で食事をしたときに初めて知り合った。わたしより少し年上の彼女は、聡明でやわらかな雰囲気を身にまとい、誰の話もにこやかによく聞いてくれる、すてきな人だった。関西で暮らすようになってから日が浅いわたしは、まだここで友人とよべるような人には出会えていない。彼女を友人とよぶのは畏れ多いが、でも、彼女と親しくなれたらいいなとすぐに思った。

とはいえ、連絡先を交換してくださいだなんて、なんだかナンパみたいに思えて言い出すことができずにいた。とうとう食事を終えて、解散するというそのときに、思いがけず彼女がこう言った。「今日はお話ができて、すごく楽しかった。もしよかったら、また会えるとうれしいな。夫を通してというのも面倒だから、連絡先、交換しませんか?」と。なんと、東京出身の彼女のほうも、東京で暮らしていたことのあるわたしと話すことを楽しいと思ってくれていたようだ。自分でもびっくりするくらいうれしかった。

その後、何度かやり取りをして、久しぶりに今日の LINE。特にどうということもない内容だったが、彼女もその家族もみんな元気でいることがわかってよかった。5月初めに少しだけ近いところに引っ越してきた彼女が、世の中が落ち着いたらぜひにと誘ってくれたから、もう少ししたら新しいまちに遊びにいこうと思う。

夫がひいきにしている中華レストランが1か月の休業を経て営業を再開し、今、店舗での営業とともにテイクアウトにも対応しているというから、夕方、様子見がてらお願いしてみようということになった。チャーハンと海老餃子を電話で注文し、受け取りに行く。途中、大きなスーパーの前を通ると、休業していたはずの生鮮食料品部門以外の売り場が、いつの間にかすべて通常営業に戻っていた。最近、ここを通らなかったから、ぜんぜん知らなかった! わたしの知らぬ間に、世の中は元に戻りつつあるようだ。

中華レストランは、ドアを開け放ち、入り口に消毒液を置きながら営業していた。立派な折りに詰められたチャーハンと海老餃子は、それはもう特上の味がした。早く安心してお店に食べに行ける日が来るといいなあ。

(2020年5月19日)

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