Ep.1 それが日常
“リーーーーーーーン、、、”
モダンな“おりん”の音が鳴り響く。。。
都会にある小さい部屋には、昔ながらの大きな仏壇を置くようなスペースも無いし、北欧風を意識して取り入れた家具にも似合わなかった。なにより私たちは、まだ“仏壇”を意識するような年齢でもなく、本気の仏壇は物々しく感じた。
現代の部屋にも合うようにと、省スペースでありながら家具にも合う、おしゃれな仏具を取り入れたところ、弔問客からは必ず“使い方が分からない”と言われてしまう。。苦笑
ただ、毎日仏壇に間に合い、会話をするのは私たち家族ですし、私としては小さくまとまったゴールドの仏具は気に入っているからよいのだ。
そんな小さい仏壇に、お花と、夫が好きだったコーヒーか紅茶を供え、お線香をあげるのが日課になっている。
とは言え、朝は忙しい。2年生になった子供を『はやく!はやく!』と急かしながら送り出し、家事を少ししたら早々に仕事を始める。仕事家事育児が回らず、手を抜いていたりするけど、きっと夫は許してくれると思っている。
私の昔話を少しすると、、、
私は田舎で代々続く本家で育った。私の祖母(まだ生きている)は、先祖と家を守ること使命としていて、長女の私にもその教えはきっちりと教え込まれた。仏壇には、毎朝のお茶と炊き立ての米を1番に供え、般若心経と共に毎日手を合わせる。祖母の趣味もあったが、庭に咲く季節の花が綺麗に飾ってあったことを覚えている。
そんな私は、“仏壇の管理”が少々気負うものの印象があるが、現代では手を合わせながら何気ない会話を重ね、自分自身を癒していくような“故人との対話の機会”と言う意味が強いと思っている。位牌など含む仏具やお供物にこだわりすぎる必要はなく、本人たちが納得し、故人を想う場所であればいい(宗教の兼ね合いはあるが)。思い出話や良い報告はもちろんだけど、不安に感じたことも話しかけると不思議と気分が落ち着いたりするものなのだ。子供も同じで、寝る前には必ず『パパおやすみ!』と声をかけるし、バレンタインには手紙をあげていた。
だから、私たち家族にとって、夫は実在はしていないけれど、家族の一員で、“夫が出張に行ったまま帰ってきてない”と言う感覚のままである。
けれど、“夫が不在“と言う日常は、今までの日常とは全く異なるものであり、急に生きる世界線が変わったような、そんな感覚が大きい、、、
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