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理想と言われた夫婦がコロナ離婚にぶちあたって得た教訓④

*出産・子育て*

胎児と胎盤とアイデンティティを排出して、私は乳児の母になったらしい。

いつも飄々としていて、ふわっとしていて、冷静で、芯がぶれない。
愚痴や不満や悪口・めんどくさいなどネガティブな言葉は使わない。
仕事が好き。寝るのが好き。遊ぶのが好き。人が好き。
写真を撮るのが好き。動き回るのが好き。ぼーっとするのも好き。
イライラしない。根ポジティブ。

30年弱かけて築き上げたこんな自分なら好きになれるというアイデンティティを、出産・育児の1年ばかしのあいだに容易く手放した。

いつも余裕がなくて、心配性で、イライラしてしまう自分と出会った。
余裕がなくなった時にでるのが人の本質なんだな、と自分をみて学んだ。

出産当日の病室で
小さなわが子と初めての添い寝をしながら私は
「とんでもないことをしたかもしれない」とおもった。

可愛い。もちろん可愛いんだけど。
夫や親が幸せそうな顔をしていてすごく幸せなんだけど。

これからこの子の人生を作っていく。
背負っていかなければならない。ミスは生命にかかわる。
ミスは絶対に許されないのだ。
私に、そんな大役が果たせるのだろうか。
大きな不安の渦に巻き込まれていた。

大学で少し社会学を勉強していた。
子どもの人格形成についてレポートも書いたし、
自分自身、幼少期の親との関係がすこぶる良好だったかというとそうでもない。
どちらかというと反面教師にしようと心に決めていたところが幾つもあった。

だからこそ、自信がなかった。
しかも、生まれた我が子はなかなかに難易度高めベビーで、新生児のわりに大きな声で朝から晩までよく泣く子だった。
生まれて二日目にして看護師さんに「癇癪もち」の烙印を押された。

大きな泣き声は私にとってはサイレンで、ひどく心をかき乱した。
夜中に病院の授乳室で泣き止まない我が子を抱いて茫然とした。

育てづらい子、このことはこの時の乳児が小学生になった今でも続いていて
わたしの頭を悩ませ続けている。

友人にも「〇〇(息子)は3人前だね!遠くで見てるぶんには楽しいけど、母は大変だね、ほんとに。」と言われる。

私だけでなく、夫もかえた。
子どもを見るととろけるように笑っていた子ども好きの彼は、
子どもの声にイライラして怒る夫になった。

夫婦の関係性もかわった。
おっとりしていたはずの妻と、陽気だった夫。
変わってしまった妻と、変わらない夫へのいら立ち。

私のアイデンティティも、夫の子ども好きも崩壊して、
夫婦の形もかえた強烈な存在感。

余裕がないときが人間性の本質。
この子がうまれて彼は、夫になった。
結婚して5年ほど経っていたが、カップルがやっと夫婦になった。

子どもをもって、夫婦になって、責任を負った。
責任のシーソーがちょうどよく真ん中に止まる時間は少ない。
小さなトゲが、ちくちくと、よーく耳を澄まさなければ聞こえない程度の音を立てて
私の心に、夫婦の和に、ヒビをつけはじめていた。


✳︎教訓✳︎

・子育てはペルソナ(仮面)をはがし、アイデンティティを攻撃する。
・余裕がない状況は、人の本質をむき出しにする。

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