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2024東大国語/第四問/解答速報

【2024東京大学/国語/第四問/解答速報】

出典は菅原百合絵「クレリエール」。筆者の専門はフランス文学・哲学。

問一「ガラスは薄くなっていくが、障壁がなくなる日は決して来ない」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。

〈GV解答例〉
外国語により母語を置換することで外国文学の理解の度合いは高まるが、結局両者の微細な違いによる違和感は完全に排除できないということ。(65)

〈参考 S台解答例〉
外国語に習熟することで文学作品の理解が深まるが、言葉が持つ微妙な感触まで理解できているという実感は得られないということ。(60)

〈参考 K塾解答例〉
外国語で文学作品を読み表現する際に生じる違和感は、外国語に習熟するにつれ減少するが、母語で書かれた文学に接する時のような自然さには達しえないということ。(76)

〈参考 Yゼミ解答例〉
母語以外の外国語で理解し、表現する際の困難は学習によって減らすことができるが、困難そのものをなくすことはできないということ。(62)

〈参考 T進解答例〉
外国語で読み、表現する際の対象を捉えきれていないと言う感覚は、学習につれて弱まりするが、傍による齟齬なき対象理解とはいつまでも異なるということ。(72)


問二「世界の見方が変容する経験」(傍線部イ)とはどういうことか、本文に即して具体的に説明せよ。

〈GV解答例〉
言葉と対象の対応関係は言語体系ごとに異なるので、新たな外国語を知ることで、同じ対象なのに異なる見方で体験することになるということ。(65)

〈参考 S台解答例〉
母語と異なる背景や成り立ちを持つ外国語を知り、それを通して事物を認識することで、世界が未知の様相で立ち現れてくること。(59)

〈参考 K塾解答例〉
clairiere という語を知ったことで、ただの空き地が木漏れ日のまばゆさと結びついたように、外国語の習得により新たな視点や感覚が得られるということ。(70)

〈参考 Yゼミ解答例〉
人は言葉の枠組みを通して世界を認識しており、外国語を習得することで従来とは異なる新たな世界の見方ができるようになるということ。(63)

〈参考 T進解答例〉
未知の意味を含意する外国語で表現されることを知った、既知の対象の認識が改められるように、外国語を通じて新たな相貌を見せた世界と新たな関係を拓くこと。(74)


問三「『本当の答え』が口から飛び出てくる」(傍線部ウ)とはどういうことか、説明せよ。

〈GV解答例〉
外国語により自己の対象化が可能になり、母語では意識に上らなかった心の奥に秘匿された直視に堪えない自分の瑕疵が露わになるということ。(65)

〈参考 S台解答例〉
自らと密着した母語のもとでは秘匿しえていた弱みが、自分と隔たりのある外国を通すと図らずも言葉になってしまうということ。(59)

〈参考 K塾解答例〉
よそよそしい外国語を用いるからこそ、自分が抱えていた様々な悩みにつながる、意識下に隠されていた醜悪なものが、図らずも言語化されてしまうということ。(73)

〈参考 Yゼミ解答例〉
自分の存在と深く結びついている母語ではどうしても表せなかった自身の欠点や愚かさが、外国語によって不意に表現されるということ。(62)

〈参考 T進解答例〉
厳密な思考を通じて対象の表現を図る外国語を用いるから、心奥に隠された弱き、醜き自己が言語化されて露呈し、苦悩の真の原因や解決法が得られるということ。(74)


問四「そのようなほの暗い場所を自分のうちに見出し、認めるのは、不思議と静かな慰めを与えてくれる経験でもある」(傍線部エ)とあるが、それはなぜだと考えられるか、説明せよ。

〈GV解答例〉
外国語による自分の瑕疵の発見は無惨でも、心の奥にそれを押し込めていた母語からの解放であり、真の自己を受容していく過程でもあるから。(65)

〈参考 S台解答例〉
外国語を介して無意識の世界に抑圧された自己の負の側面を意識することは、自己をありのままに受け入れる安らぎをもたらすから。(60)

〈参考 K塾解答例〉
外国語を通して、抑圧されてきた自己の欠点や未熟さに向き合うことは、晴れやかな経験ではないが、自分をまるごと受け入れることに通じ、心の平安をもたらすから。(76)

〈参考 Yゼミ解答例〉
自身を規定する母語から解放され、外国語を通して自分を見ることで、これまで気づかなかった自身の隠れた内面に触れることができるから。(64)

〈参考 T進解答例〉
無意識の領域にあって母語では捉えられず、外国を通じて漸く露呈した自分が愚かで醜かろうがやはり自分であり、見失われていた自分を取り戻せたのだから。(72)

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