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私的:ドミニク・ミラー考察その①

今、スティングが3年半ぶりに来日公演をしている。
自分も今日3/11(土)に有明アリーナに観に行きます。

しかしごめんなさい。自分がお目当てなのはスティングではなく、彼と30年に渡り活動を共にしている、ギタリストのドミニク・ミラーなんです。
本当に申し訳ない。自分、変なんで。自覚してます。

私にとってドミニク・ミラーとは、音楽における絶対神であり、「The Perfect  Man」です。だから以降、すみませんがスティングではなく、ドミニクの事を書きます。

最初に彼を観たのは正に彼がスティングのツアーに初めて参加した、ソウル・ケージツアーの1992年の日本公演。
その時自分はドラムをやっていたので、最初は初めて見るスティングと、ヴィニー・カリウタが目当てでした。ソウルケージの音は大好きだったけど、ギタリストにあまり興味がなかった自分は誰が弾いてるのかも知らずに行った。

初めて聴いたドミニクのギターは、実に色彩感豊かでスタイリッシュで、弾き倒すタイプではないが、ここぞ!という時に実に印象的で効果的な一音を放ってくるタイプで、まず演奏と美しい音色に心奪われた。
その日はスティングの喉の調子が悪いのもあり、耳がどうしてもそちらに向いてしまう状態でもありました。

そして当時の彼はルックス的にもなんとも色気のある美しい顔立ちで、弾く姿もフェロモンが溢れ出てくる感じで、普段自分は余りギタリストに熱を上げる事など全くなかったのに、たったその1回でドミニク・ミラーは私の人生における、唯一の「ギターを抱えた王子様」になったのでした。本当にスティングを食ってしまうくらいの音と姿、両方の色気があり、そのキラキラオーラに完全にノックアウトされてしまった。(当時の彼を知っている方には理解してもらえると思う・・・)

しかし30年経った今は、その創り出すサウンドに畏怖の念すら感じる絶対的な神となっています。

ECMに移籍して以降のアルバムは特にそうです。
1枚目の「Silent Light」では、彼の音楽の「Space」の部分に物凄く共感し、その研ぎ澄まされた音の空間に圧倒されました。

そして2枚目の「Absinthe」ではもう「完璧」といってもいい仕上がりに、畏怖の念を抱きました。特にこの「Absinthe」の中の音像風景ってのはちょっと言葉に出来ないほど凄いですね。このアルバムでは稀代の天才ドラマー、マヌ・カチェと若きバンドネオン奏者のサンチャゴ・アリアスの力も大きいですが。まあ特にドミニクとマヌ・カチェってのはもう最強のコンビじゃないかと個人的には思ってます。

本当にこの人は、地球上で1番自分が好きな音楽を創り出してくれる人です。

ドミニクの事を「職人ギタリスト」という形容をする人が居ますが、なんかちょっと違和感感じますね。職人的ミュージシャンというと、なんか昔のLAなどのスーパーセッションマン的なイメージがあるけど、この人の場合は、「音の芸術家」って言っても良いような気がしています。

「そこに必要ではない音は絶対に出さない」という人です。だから「弾かないギタリスト」です。

装飾をしていくのではなく、どちらかというと「削ぎ落として削ぎ落として、純粋な物だけ取り出して音にする人」です。だから最後提示された彼の音楽というのはとんでもなく密度が濃い、音楽的に純度の高い物になります。だけどそれを熟考してスタジオに籠ってあれやこれややる訳ではなく、普通にパッと演奏でそういう世界が創れる人です。実際上記ECMの録音なんかほぼライブ録音そのままで、制作日数も3日くらいです。

彼は技術的にはとても技巧派で、やればなんでも弾けるでしょうが、弾きません。その時必要だと思えば弾くでしょうけどね。その音楽的な見極めが「神」な人です。

彼の創り出す音は、絵画の巨匠が、練習に練習を重ねて引いた1本のデッサンのラインのような感じです。巨匠たちはその1本の線で対象物の本質を捉えて表現しようとします。

ドミニクの創り出す音もそうです。
「これしかない」という「その1音」で表現したいものの本質を捉えようとする。

そういう音楽家です。

今日、私はドミニク・ミラーを見に行きます。


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