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鹿児島再訪の旅-③-後編

入来武家屋敷群を後にして向かったのは国鉄宮之城線入来駅跡。
ここは事前の予定には入ってなかったけど地図を見てたら見つけたので、ちょっと寄ってみようと思った場所だ。
今年の5月の北海道オホーツク地方の旅の時に気づいたのだけど、地方の廃線になったローカル線の駅の跡がGoogle mapに多数マーキングされているのだ。
大抵は駅のホームの跡がほんのり残っているだけだったりして、わざわざ訪れるほどのものではないけど、ここはSLを模した建物(公民館らしい)があったりするので、どうせ通り道だからと立ち寄ったのだ。
先ほどランチをいただいたみのりのちょっと先にあり、元々が駅だったので、周囲には郵便局やタクシー会社やカフェなどがある。

SK型の公民館?
転轍機

調べたら転轍機は分岐器(いわゆるレールのポイント)を手動で転換させるための装置らしい。
鉄道の遺構はこれくらいしか残っていなかったし、先を急ぐので写真だけ撮って次の目的地に向かう。

次の目的地は山や里山を抜ける県道を30分ほど走ったところにある永野鉄道記念館。
こちらは駅舎や車輛が保存されていて、ちょっとした鉄道公園みたいになっている。
地方に旅に出る度に、たまにはローカル線に乗ろうと思うのだけど、恐ろしく不便なダイヤと意外と高額な料金に断念してしまう。
しかし、こう言う遺構なら時間も取られないし大体が無料なのでありがたい。
3日目の行き先をどこにするか探していた時に真っ先に見つけた場所で、Google mapに載っている写真やクチコミを見たら是非とも行きたくなった場所である。
鉄ヲタでもない限り知らないマイナーなスポットだから、イルカゲストハウスの明美さんはもちろん知らなかった。
Google mapの素晴らしいところは細く探せばこう言う施設やお店が隈なく見つかることだと思う。
ガイドブックやサイトだけでは知りようもない。
定番の観光スポットを周れば充分だと思っている人には意味がないかも知れないけど、自分らしい旅がしたいので、基本は事前にGoogle mapで行き先を探してプランを組み立てることにしてる。
それに地図を元にプランを練ると、距離感とか方向感覚が分かるので、移動に無駄がなく予定が立てられることだと思う。

事前の情報では記念館の鍵を近くのYショップで借りれば中に入れるとのことだったけど、小さな駅舎の事務室に少々の資料などが展示されているだけだったので、中に入るのはやめて、展示されている車輛を撮影するだけにした。

薩摩永野駅跡
駅舎が記念館になっている

Wiki先生によるとこの薩摩永野駅のあった旧国鉄宮之城線は鹿児島本線の川内駅と山野線の薩摩大口駅を結ぶ66.1kmのローカル線で民営化直前の87年10月10日に全線が廃止された。
なんと36年前の今月に廃止されていたのだ。
因縁を感じてしまう。
そしてこの薩摩永野駅は急斜面ではないのに、終点の薩摩大口駅に向かうためにスイッチバック駅になっている。
写真の車掌車側の先が川内で左が大口に向かう線路と思われる。
国鉄時代は日本全土に血管のように張り巡らされていた鉄路も、今や風前のともし火で、かつてのローカル線の多くが消えてしまった。
あたしだってほとんど利用することがないのだから、無責任な懐古趣味であることは承知しているけど、あの頃は良かったなぁと思わずにいられない。
あの時代は国鉄全線乗車はハードル高かったけど、多分今なら昔の1/10の苦労もしないで走破できるのではないだろうか。

3年前の宮崎・鹿児島の旅では日南線や枕崎線に乗ってみようと思ったのだけど、ダイヤを調べたら下手すると日帰り出来ないほどの少なさに驚いた。
もちろん乗れなかったわけだけど、そりゃ地元民だって利用しなくなるよねと思った。
乗客の減少とダイヤの減少の悪循環なんだろう。
しかも国鉄時代と違ってJRは民間企業だから収益が上がらなければ廃線にするしかない。

一応は乗り鉄子を名乗っているけど、関東周辺の鉄道に乗るのが精一杯である。
先日友人の乗り鉄子と秩父鉄道に初めて乗ったけど、いくらローカル私鉄とは言えさすが埼玉県の路線だけあって1時間に1本か2本はあるので、それくらいなら途中下車しても終点まで余裕で利用できる。
だけど日南線にしても枕崎線にしても途中の大きな駅の先はそれこそ1日に3本くらいしかない上に、どちらも路線が長いから日帰りで往復なんて無理だった。

ここの展示車輌の素晴らしいところは決して保存状態が良くないことだ。
とか言うと怒られそうだけど、スイッチバックのポイントの近くに展示されているSLの動輪がピカピカに塗装されているようなものには萎えるタイプなのでご容赦を。
程よく塗装が剥がれて錆びていたり雑草が室内まで進出していたり、これはレトロ・廃墟好きには堪らない光景だ。
それにリアリティがある。
現役時代のままに駅舎や駅構内の線路や保線車輌が保存されているので歴史的価値もあると思う。

たまに訪れる観光客らしき人が何人かやって来たけど、滞在中はほとんど誰もいなかったので、せっかくだからとセルフポートレイトを撮ることにした。

去年の10月に訪れた門司港の九州鉄道記念館では多数の国鉄車輌が展示保存されていたけど、観るだけで乗ることは全く出来なかった。
それに比べたら少ししかないけど乗り放題のここは嬉しい。
最初の3枚はレトロ風に加工してみた。
時間があれば着替えたりもっといろんな写真が撮れたんだけど、それでも充分に楽しかったし、思いついてセルフ写真を撮って良かったと思う。
それに現役の路線では決して撮れない写真だから尚更だ。
線路内で撮っただけでも大炎上してしまう(笑)

これが無料なのが申し訳ないけど、だからと言って有料にできるほどの内容でもないので仕方ないかな。

入来麓武家屋敷群も無料だったな、そう言えば。
飲食と交通費以外ではちっともお金を落としてない。
本当に申し訳ない。
その分こうして鹿児島の魅力を発信しているので許して欲しい。


永野鉄道記念館をちょっと東に行くと、永野金山の遺構があちこちにあり、最初はそこに寄るつもりだった。
しかし、きちんと保存されていないみたいだし、かなり点在しているし、クルマを停める場所もなさそうだった。
前日にGoogle mapで改めて調べたらその先にもうひとつ金山跡の遺構がある集落があった。
そちらは霧島市になるのだけど、廃校の山ヶ野小学校の雰囲気が良かったのと、集落に駐車場があるので、そちらに向かうことにした。
県道を外れて集落に向かうとどんどん道は狭くなるし、廃屋みたいな民家も増えてそれらしき景色になる。
駐車場の標識があったのだけど、とてもクルマで入って行けそうもなくて通り越すと廃車になったワゴンが放置された一角に出た。
そこで引き返してなんとか駐車場にラパンを停めて、周辺を撮影する。
小学校跡の標識もあるのだけど、どうしても見つからない。
しばらく歩いていたら別の出入り口があり、そちらから駐車場に入るのが本来の進路だったみたいだ。
あの苦労はなんだったんだろうか。
気を取り直して撮り歩いているとようやく小学校の建物が見つかった。
あまり時間がないので急いで写真を撮る。
帰ろうと思った時にこの建物の前でセルフを撮りたくなり、タイムリミットが迫る中、ほんの少しだけ撮る。
誰も来ないのでTシャツを脱いでちょっと大胆な格好もしたけど、時間が許せばここで思う存分セルフ写真を撮りたかった。
それに集落ももっと撮りたかった。
こう言う雰囲気は大好きである。
いつかまたここに撮りに来たいと切実に思う。
それほど期待してなかったけど、想像以上に良かった。

さて最後は来る時に偶然見つけた日帰り温泉の福如雲である。
17時で予約したので10分前を目指してラパンを走らせる。
姶良市まではそれなりにあり、一般道で行くと時間もかかるので九州道を利用したETCカードを念のために持って来て良かったと思う。

9月18日にオープンしたばかりだけあってキレイだった。
受付の券売機で入浴券を買う。
お部屋は4タイプで狭い方から¥2700、¥3000、¥3600、¥4200となっている。
¥3000のタイプが一番数も多い。
平日は電話予約可能で、土日祝は予約不可。
いずれも到着した時点で空いているお部屋を選ぶシステムで、予約の場合も指定は出来ない。
あたしが選んだのは¥3000のお部屋で、最初は一番安いお部屋にしようと思っていたのだけど、この値段の違いは川に面しているかどうかで、¥300しか違わないなら川のせせらぎが聞こえる方がいいなと思ったのだ。
もちろん塀に囲まれているので川は見えないのだけど、せせらぎの音が聞こえるだけでも温泉気分が増すと言うものだ。
もっともお隣に家族連れが入ったので、ちびっこのはしゃぐ声がうるさいのなんの(笑)
でも他人に気兼ねなくのんびりお湯に浸かれるのはありがたい。
普通の銭湯や温泉の共同入浴が苦手なのでもっとこう言う施設が増えたらいいなと思う。
芋の子を洗うような混んだお風呂やカランで順番待ちとか、絶対に嫌だ。
あと、個室だとスマホを持ち込めるし好きな音楽を聴けて写真も撮れるのが良いと思う。
平日は80分のはずなのにオープン記念のサービスなのか90分だった。

お風呂を出てスッキリしたところでレンタカーを返しに空港に向かう。
空港の近くのスタンドで満タン返しのための給油をする。
3日間で500km走って¥3400で燃費はリッター25.8kmだった。
ラパンの平均燃費計が終始22.5kmだったので、思ったより良かった。
初日が200km、中日が150km、最終日が150kmとほぼキレイな数字だったのは面白い。
空港のレストラン街にある「ふく福」で黒豚うどんをいただいて夕食にする。
事前にオンラインチェックインの時に確認した時は通路側の席も予約が入っていたけど、搭乗してドアが閉まったら誰も来なかったので窓際でゆっくり出来た。
満席に近い埋まり具合だったし前方7列目の席なので、キャンセルしてくれた人には感謝しかない。
帰りの便では残念ながらスペシャルプレゼントはなかったけど、担当のCAさんがいっぱい話してくれたので、それはそれでご褒美ということにする。

前回も今回もレンタカーで遠出したので鹿児島市内をろくに見てない。
前回はちょっと乗った市電も今回は乗らなかったし、カフェとかも行けてないので、もし次に行く時は1日くらいゆっくり市内を見て回ろう。
イルカゲストハウスも良かった。
また明美さんに会えるといいな。

最後になるけど旅についてのあたしのテーマの文章を。

流れ行く遠くの街灯りを見ていると、胸が締め付けられる想いになる。
その灯りの下では見知らぬ人々が暮らしていて、これまでもこれからもあたしとは交わることのない人生を送っている。
その中のほんの僅かの人と、偶然に偶然が重なって出会い、親しくなったりする。

出かけて良かったと思い、帰って来て少し寂しく思う。
そしてまた旅に出る。
旅を繰り返して、あたしの人生は進んで行く。

-完-

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