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良いモノを作るのが先か、良い客を探すのが先か

昨日、小布施町にある出版社である
文屋さんの木下豊さんが、講演で
語ってくださったことを紹介した。

もう一つ、是非とも紹介しておきたい
ことがあり、昨日の続篇的な感じだが
お付き合いいただきたい。

木下さんが考える「理念経営」の実例と
して、三つの例が紹介されていた。
一つ目が伊那食品工業、
二つ目が昨日紹介した小布施町、
そして三つ目がこれから紹介する
小布施牧場である。

こちらの牧場は、木下さんのご子息が
経営されている。
木下さんご自身も、取締役として名を
連ねていらっしゃるが、なんと、
「取締役用務員」
という肩書き!

2017年に設立されたばかりの、まだ
若い会社だ。
「楽農経営」というスローガンで、
美しい里山を作り、それを日本全国に
広げるだけでなく、ゆくゆくはアジア
にも広げてゆきたい、そんな壮大な
ビジョンを掲げている。

美しい里山を作る、その具体的な中身
として、サイトでも紹介されている
通り、以下の点を追求している。

①小規模:ジャージー牛わずか10頭、ストレスフリーな環境
②放牧型:美しい里山を維持、飼料の域内自給率100%
③地域内循環型:善玉菌液活用で、堆肥・飼料・生き物の好循環
④高品質六次産業:練られた収益モデル(一次×二次×三次=六次産業)
⑤教育と普及:たくましい里山づくりの成功モデルを横展開

何と、3年目の今年、既に単年度で
黒字を達成できそうだとのこと。
そして、早くもMUJI Cafeや、白馬に
オープンしたスノーピーク、軽井沢
プリンスホテルといったところと
取引を始めているそうで、ビジョン
実現に向けて着々と前進している
のである。

お話を聞いていた限り、とにかく
牛にとって良い環境を整えて、
高品質なミルクを生産することに
経営の重点を置いているように感じ
られた。
しかしながら、どんなに良いモノを
作っても、それを理解して、喜んで
お金を払ってくれるお客様がいない
限り経営は成り立たない。
「鶏が先か、卵が先か」
とはよく言うが、
「モノが先か、客が先か」
というのは経営にどうしてもついて
まわる問題である。

そんなところが気になって、お客様
をどのように獲得していったのか、
不躾ながら質問をさせていただいた。

同じようなビジョンを持ち、常に
情報交換を続けている、那須高原に
ある姉妹牧場「森林ノ牧場」さん
から、MUJI Cafeさんとの取引の一部を
譲ってもらったり、あるいは新聞で
スノーピーク白馬進出というニュース
を知って直接営業をかけたり、
最後のプリンスホテルについては
先方からわざわざ調べた上で連絡を
もらったり、ということで、何か特別
な方法論とか、成功法則があるという
ことではなかった様子。

しかし、共通しているのは、どこも
品質には並々ならぬこだわりを持って
いるブランドばかりという点。
良いモノに対する目利きができる
ところばかりである。
これは、良いモノを追求しているから
こそお互いがすぐに分かり合えて、
意気投合して話が早く決まる、そんな
ことだったのではないかと推測する
ところ。

もちろん、良いモノを作っていれば
いつか誰か分かってくれる人が
現れるはず、そんなナイーブな考え
を推奨するわけではない。
良いモノを作り続けつつ、
同士を見つけて切磋琢磨したり、
質の高い情報発信を続けたり、
自分たちのことを分かってくれそうな
お客様の情報にしっかりアンテナを
立てておいたり、
そういうことが全てあいまって、
順調な経営を実現できているに
違いない。

結局のところ
「モノが先か、客が先か」
という問いに対する答えは、
「両方」
だと言わざるを得ないのだが、
「その前にビジョン」
というのが答えだろう。
これは正に「年輪経営」そのもの。
そんなことを意識させられるので
ある。


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ahiraga
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。