無敗営業
ドラッカーによれば、
「マーケティングとは、セールス
(営業)を不要にすることである」
となる。
補足すると、いわゆる「セールス」
「営業」のことを、お客様にモノを
売りつけること、相手が欲しくも
ないのに様々なテクニックを弄して
売ってしまうこと、
と捉えている節がある。
そのような「セールス」「営業」に
対して、「マーケティング」とは、
お客様の側からモノを売って欲しいと
言ってくるように仕掛けることだ
というのだ。
そうすれば、「セールス」「営業」
の側から半ば無理して売らなくても
良いことになる。
とはいえ、これは定義の違いの話で
あり、私などは、「営業」は広い
意味での「マーケティング」の一部を
構成している、と思うのである。
そして、「営業」の仕事は決して
なくならず、むしろ今もどんどん
高度化して、知的プロフェッショナル
が携わる仕事として進化しているの
ではないかと思われる。
Kindle Unlimitedの契約をして、
今まで以上に「積読」状態の本が
溜まっていく中、以前から読まねばと
思っていたこちらの本をようやく
読了した。
営業で断られたことがほぼない!
そんな「無敗」「無双」を誇る著者が、
自分の営業を客観的に言語化・構造化
して、再現可能性を高めてくれている
良書。
何か所もハイライトしたが、
顧客への質問力スキル習得のポイント
というのが特に印象的だったので
紹介したい。
警戒心の強い顧客から、核心に迫る
情報を聞き出して、効果的な提案に
つながるようなヒアリングをする
目的で、3つの「きく」を使った
4段階でのアプローチを提唱している。
まず、フェーズ1では「土台作り」。
顧客の心をつかむために、
明るい表情や声、豊富な話題を
駆使して、話しやすい雰囲気を作る。
次に、フェーズ2。
顧客に切り込んでいく「聞く」。
質問された際に、しっかりと相手の
意図を確認してから答え、
誠実な対応を全うする。
続いて、フェーズ3。
更に顧客の話を深掘りする「聴く」。
いわゆる積極的傾聴で、
顧客の重要な情報を更に
引き出していく。
最後に、フェーズ4。
より話を具体化する「訊く」。
この前までのフェーズで引き出した
顧客情報を踏まえ、ピンポイントで
確認したり、立てた仮説を検証する
ための、えぐるような質問を
投げかける。
さらっと一読しただけでは
分かりにくいと思うので、
ちょっと説明の仕方を変えてみると、
の順番をしっかり守って、商談中に
徐々に信頼関係を高めていき、
最後には際どい質問を投げかけられる
位の距離感まで近付いていければ、
効果的な提案を作るのに必要な情報が
十分得られるだろう、
ということである。
更に言い換えるなら、
最後に「鋭いツッコミ」で釣果を得る、
そのために前段階で耳をダンボに
しまくって、信頼関係をしっかり
構築せよ、という感じになる。
「質問力」と言いながら、
「きく力」がメインを占めているのが
興味深いところ。
人は自らが話したい動物、
その本能をくすぐる「聞く」「聴く」
という行為によって心を開かせ、
最後に鋭く「訊く」ことで、
言葉は悪いが「獲物を仕留める」
わけだ。
ここに挙げたのは、氏が構造化した
営業スタイルのほんの一部分に
すぎない。
興味ある方は是非実物に当たって
いただきたい。
本としての文字数こそ少なめだが、
中身はかなり煮詰まっていて
濃い目の味わいなので、じっくりと
堪能していただきたい。