新しいカテゴリーを創造する戦略

ファーマシューティカル、あるいは
ファーマとは、「医薬品」を意味する。

コスメティクスとは、「化粧品」を意味する。

「医薬品」の場合、効果効能を訴求できる分、
様々な規制でがんじがらめだ。
価格だって「薬価」というシステムにより
決められることになっているし、
広告に対してもかなり広範な規制が
敷かれているのはよく知られるところ。

「化粧品」の場合、効果効能を訴求するには
「医薬部外品」のように、より医薬品寄りに
商品を寄せていくというアプローチと、
あくまでも効果効能が得られそうな
「イメージ」を売っていくアプローチがある。
実際にはそれらを適宜ミックスしながら、
法に触れない範囲で、消費者に対する
コミュニケーションを設計し、
展開するのが常道だろう。

そのような「医薬品」と「化粧品」の市場の
狭間で、ユニークな陣取りを試みている
化粧品会社のニュースリリースを目にした。
全薬工業の「アルージェ」という化粧品の
シリーズである。

あくまでもメインの土俵は「化粧品」。
なのだが、「医薬品」寄りに陣取ろうという
意図をハッキリと表明しながら戦っている。

リリースにある通り、
「コスメティクス」と
「ファーマシューティカル」をもじって、
「コスメシューティカル」という造語が欧米に
あるのを援用し、自らをその薬効性の高い
スキンケアである「コスメシューティカル」の
ブランドだと訴えている。

自分の土俵をこうやって定義してしまう、
というのは、これまでにない市場を創造する
ことにつながり、戦い方として非常に賢い。

大きなところでは、iPhoneがそれまでの
「携帯電話」の定義を変え、
「スマートフォン」市場を創り出した
ことが想起される。

あるいは、スターバックスが、単なる
喫茶店ではなく、「サードプレイス」
というコンセプトを打ち出して、
コーヒーを飲みながらくつろぐ場所を
提供することをメインの価値として
訴求したことにも通じるかもしれない。

「アルージェ」の話に戻る。
「コスメシューティカル」という言葉が
どこまで日本人になじむのか、
消費者の心に刺さるのか、
実のところ難しいだろうと思われる。
単純に、言葉が難しすぎる、あるいは
覚えにくいからだ。

自分のポジショニングをハッキリとさせて、
それを消費者に伝えていこうとする、
その気持ちはよく分かる。
決してその方向性が間違っているとは
思わない。

ひょっとすると、一般の消費者向けに
「コスメシューティカル」であることを
訴えたいのではなく、
あくまでもB2B目線で、すなわち商品を
置いてくれるであろうドラッグストア
などの小売店対策を意識した訴求なの
かもしれない。

欧米ではよく知られているらしい
「コスメシューティカル」スキンケアの
代表格であることを、小売店に対して
意識付けすることで、売り場獲得の
商談をやりやすくする意図を持った
コミュニケーションだと考えると、
より納得がいく。

実際の効果はいかほどか、関係者に
聞いてみたいところである。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。