神戸の亜麻栽培/2016年-2021年
はじまり
2021年、亜麻栽培を始めて6年目になります。ようやく納得のいく亜麻が育ちましたので、これまでの経緯をまとめました。
2016年、地域活性化に取り組む兵庫県内の団体から、試験栽培のための亜麻の種を分けていただきました。その種を、神戸市垂水区の実家の畑にまいたことから、亜麻栽培が始まりました。
亜麻栽培には北海道などの寒冷地が適すると聞きますが、神戸市の気候は、比較的温暖な瀬戸内海式気候です。温暖地域で亜麻栽培に挑戦される方の参考になれば幸いです。
以下は、繊維用亜麻に関するインド研究者の論文(翻訳)です。
適切なレッティング技術(繊維を取りだすために茎を発酵させる技術)が開発されると、インドも栽培適地になります。つまり、栽培目的を達成可能な地域は、全て栽培適地と言えます。
1年目 やってみる
写真の場所は、神戸市垂水区にある実家の畑です。母(当時78歳)が協力してくれます。
2016年の最初の亜麻は、問題なく大きく育ちました。3月に種をまいて、6月に収穫しました。無農薬栽培です。
ところが、自家採種を繰り返すうちに性状が変化し、3年後の2019年には、栽培を続けることが難しくなりました。
2016年の最初の亜麻がF1種(交配種)だったことが、その原因として考えられます。
2年目 なにかおかしい
上の写真は、2017年の亜麻(F2)ですが、2016年の亜麻(F1)のような勢いはありません。背丈もばらばらです。
F1種では、次の世代で、性状にばらつきが生じるということです。F1種が悪いということではありませんので、誤解のないように記載しておきます。
3年目 やはりおかしい
2017年の亜麻(F2)から自家採種して、2018年にも続けて栽培しました。しかし、下の写真の通り、亜麻(F3)の性状は改善しませんでした。
2018年、亜麻から繊維を採取しました。
下の写真は、父(当時83歳)と母(当時80歳)です。
夏の暑い日に、乾燥させた亜麻を水に浸けると、数日で発酵して泡が出てきました。畑に放置して、土壌の微生物で発酵させる方法もあるようです。
亜麻の楽しみ
亜麻には多様な楽しみがあります。一般には、薄紫色の花(花ことば「感謝」)、亜麻仁油、リネン織物などが知られています。
近年では、SDGsに向けたサステナブル素材としても注目されています。例えば、亜麻繊維と樹脂とを組み合わせた複合材料は、自動車部品などに用途が広がっています。
繊維を採取すると、織物に興味がわいてきました。以前から関心のあった分野です。
2018年には、近江上布の産地(滋賀県/写真上段)と、丹波布の産地(兵庫県/写真下段)を見学しました。
2019年には、大島紬の産地(奄美大島)を見学しました。なお、大島紬には、以下の2つがあるようです。どちらも、地域団体商標として商標登録されています。
本場奄美大島紬(奄美大島産の紬織物)/本場奄美大島紬協同組合
本場大島紬(奄美大島に由来する製法により生産された紬織物 等)/本場大島紬織物協同組合
2020年には、宮古上布(地域団体商標)の産地(宮古島)を見学しました。
4年目 交配種から固定種へ
2018年の亜麻(F3)から自家採種して、2019年にも続けて栽培しました。この年の亜麻(F4)は、全く別の植物のように見えました。
この結果を受けて、2016年から続けてきた自家採種は断念しました。
そんな中、亜麻の本場北海道で、リネン織物の体験講座に参加しました。
北海道の旅行中、幸運にも亜麻の種を入手することができました。品種は不明ですが、「繊維用の種」と聞きました。
北海道で繰り返し栽培されている亜麻なので、固定種であることは間違いないと思います。
5年目 潮目が変わる
2020年、北海道の種で亜麻栽培を続けました。コロナ禍で、実家へ帰ることを自粛していましたので、写真がありません。
背丈が低く、見た目の成果は得られなかったですが、相当量の種を採取することができました。
👇 北海道亜麻の種から栽培した最初の神戸亜麻(H-K1-FLAX’20)の種です。
H[北海道]-K[神戸]1[1年目]-FLAX[亜麻] ’20[2020年]
6年目 見通しがたつ
2021年3月6日、神戸亜麻(H-K1-FLAX’20)の種をまきました。土壌には、牛糞をすきこみました。発芽は遅かったものの、昨年とは違って、グングン成長しました。
亜麻栽培では、連作障害がおきやすいと聞きますが、今のところ、問題はなさそうです。
気象庁の発表によれば、今年の近畿地方は、昨年より25日も早い5月16日に梅雨入りしました。雨が続くと、亜麻が倒れる被害が目立ってきます。北海道は、梅雨による被害が少ないことでも栽培適地なのだと思います。
一部に雨の被害を受けましたが、写真の通り、立派な神戸亜麻(H-K2-FLAX’21)が育ちました。
H[北海道]-K[神戸]2[2年目]-FLAX[亜麻]’21[2021年]
亜麻が倒れることを防止する方法として、以下の例が見つかりました。マス目状にロープを張っています。
同じように栽培したにもかかわらず、背丈の異なる2つのグループができました。
背丈の高いグループ(H-K2-FLAX’21-100)の平均長さは、100cm程度です。
背丈の低いグループ(H-K2-FLAX’21-80)の平均長さは、80cm程度です。
下の動画中の、花が咲いているグループが、背丈の低いグループ(H-K2-FLAX-80)です。
5月30日、雨で倒れた亜麻(H-K2-FLAX’21-100)を、背丈の低い亜麻(H-K2-FLAX’21-80)と一緒に収穫しました。
麻ひもで縛って、洗濯竿にかけました。この状態で乾燥させます。
残りの亜麻(H-K2-FLAX’21-100)は、6月下旬頃に収穫する予定です。
まとめ
亜麻繊維や亜麻仁油を産業用途にそのまま使用することは、コスト面から難しいかもしれません。
しかし、亜麻を楽しむ文化が広がれば、その多様性から、様々な商品・サービスを開発できる可能性がでてきます。
「デザイン思考」や「フリーイノベーション」の考え方を取り入れながら、その可能性を追求していきたいと考えています。
<続く>
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