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神戸の亜麻栽培/2016年-2021年


はじまり

2021年、亜麻栽培を始めて6年目になります。ようやく納得のいく亜麻が育ちましたので、これまでの経緯をまとめました。

2016年、地域活性化に取り組む兵庫県内の団体から、試験栽培のための亜麻のを分けていただきました。その種を、神戸市垂水区の実家の畑にまいたことから、亜麻栽培が始まりました。

亜麻栽培には北海道などの寒冷地が適すると聞きますが、神戸市の気候は、比較的温暖な瀬戸内海式気候です。温暖地域で亜麻栽培に挑戦される方の参考になれば幸いです。

以下は、繊維用亜麻に関するインド研究者の論文(翻訳)です。

適切なレッティング技術(繊維を取りだすために茎を発酵させる技術)が開発されると、インドも栽培適地になります。つまり、栽培目的を達成可能な地域は、全て栽培適地と言えます。

「亜麻繊維の優位性は、そのレッティング(retting )の期間とプロセスに強く依存しています。亜熱帯地域では、寒冷な亜麻の生育期に暖かく乾燥した季節が続くため、露浸漬(dew retting )を許さず、適切なレッティング技術の開発が必要です。」

「インドの北部地域にある、ウッタルプラデーシュ州、ウッタラーカンド州、ヒマーチャルプラデーシュ州などの州は、寒い冬に続く乾燥した夏を迎える亜熱帯湿潤気候の広大な土地を有しています。このような条件は、繊維亜麻の成長に非常に適しており、米小麦システムの大規模な土地の多様化を通じて繊維亜麻の商業化の有望な結果も示されています(Kumar et al.、2019)。」

Quality optimization of flax fibre through durational management of water retting technology under sub-tropical climate
Prithwiraj Dey, B.S. Mahapatra, Biswajit Pramanick, Ajay Kumar, M.S. Negi, Jai Paul, D.K. Shukla, S.P. Singh

1年目 やってみる

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写真の場所は、神戸市垂水区にある実家の畑です。母(当時78歳)が協力してくれます。

2016年の最初の亜麻は、問題なく大きく育ちました。3月に種をまいて、6月に収穫しました。無農薬栽培です。

2016年の亜麻(F1)

ところが、自家採種を繰り返すうちに性状が変化し、3年後の2019年には、栽培を続けることが難しくなりました。

2016年の最初の亜麻がF1種(交配種)だったことが、その原因として考えられます。

2年目 なにかおかしい

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2017年の亜麻(F2)

上の写真は、2017年の亜麻(F2)ですが、2016年の亜麻(F1)のような勢いはありません。背丈もばらばらです。

F1種では、次の世代で、性状にばらつきが生じるということです。F1種が悪いということではありませんので、誤解のないように記載しておきます。

3年目 やはりおかしい

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2017年の亜麻(F2)から自家採種して、2018年にも続けて栽培しました。しかし、下の写真の通り、亜麻(F3)の性状は改善しませんでした。

2018年の亜麻(F3)

2018年、亜麻から繊維を採取しました。
下の写真は、父(当時83歳)と母(当時80歳)です。

夏の暑い日に、乾燥させた亜麻を水に浸けると、数日で発酵して泡が出てきました。畑に放置して、土壌の微生物で発酵させる方法もあるようです。

亜麻の種取り
発酵
亜麻繊維

亜麻の楽しみ

亜麻には多様な楽しみがあります。一般には、薄紫色の(花ことば「感謝」)、亜麻仁油リネン織物などが知られています。

近年では、SDGsに向けたサステナブル素材としても注目されています。例えば、亜麻繊維と樹脂とを組み合わせた複合材料は、自動車部品などに用途が広がっています。

複合材料 参考記事:https://motor-fan.jp/tech/10013490

繊維を採取すると、織物に興味がわいてきました。以前から関心のあった分野です。

2018年には、近江上布の産地(滋賀県/写真上段)と、丹波布の産地(兵庫県/写真下段)を見学しました。

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2019年には、大島紬の産地(奄美大島)を見学しました。なお、大島紬には、以下の2つがあるようです。どちらも、地域団体商標として商標登録されています。

本場奄美大島紬(奄美大島産の紬織物)/本場奄美大島紬協同組合
本場大島紬(奄美大島に由来する製法により生産された紬織物 等)/本場大島紬織物協同組合

本場奄美大島紬

2020年には、宮古上布地域団体商標)の産地(宮古島)を見学しました。

特許庁: 地域団体商標登録案件一覧

4年目 交配種から固定種へ

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2018年の亜麻(F3)から自家採種して、2019年にも続けて栽培しました。この年の亜麻(F4)は、全く別の植物のように見えました。

この結果を受けて、2016年から続けてきた自家採種は断念しました。
そんな中、亜麻の本場北海道で、リネン織物の体験講座に参加しました。

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北海道の旅行中、幸運にも亜麻の種を入手することができました。品種は不明ですが、「繊維用の種」と聞きました。

北海道で繰り返し栽培されている亜麻なので、固定種であることは間違いないと思います。

5年目 潮目が変わる

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2020年、北海道の種で亜麻栽培を続けました。コロナ禍で、実家へ帰ることを自粛していましたので、写真がありません。

背丈が低く、見た目の成果は得られなかったですが、相当量の種を採取することができました。

👇 北海道亜麻の種から栽培した最初の神戸亜麻(H-K1-FLAX’20)の種です。
H[北海道]-K[神戸]1[1年目]-FLAX[亜麻] ’20[2020年]

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6年目 見通しがたつ

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2021年3月6日、神戸亜麻(H-K1-FLAX’20)の種をまきました。土壌には、牛糞をすきこみました。発芽は遅かったものの、昨年とは違って、グングン成長しました。

2021年4月1日 神戸亜麻畑

亜麻栽培では、連作障害がおきやすいと聞きますが、今のところ、問題はなさそうです。

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気象庁の発表によれば、今年の近畿地方は、昨年より25日も早い5月16日に梅雨入りしました。雨が続くと、亜麻が倒れる被害が目立ってきます。北海道は、梅雨による被害が少ないことでも栽培適地なのだと思います。

一部に雨の被害を受けましたが、写真の通り、立派な神戸亜麻(H-K2-FLAX’21)が育ちました。
H[北海道]-K[神戸]2[2年目]-FLAX[亜麻]’21[2021年]

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亜麻が倒れることを防止する方法として、以下の例が見つかりました。マス目状にロープを張っています。

The Woolgatherers Lltd., LLC
https://www.woolgatherers.com/id106.htm

同じように栽培したにもかかわらず、背丈の異なる2つのグループができました。

背丈の高いグループ(H-K2-FLAX’21-100)の平均長さは、100cm程度です。
背丈の低いグループ(H-K2-FLAX’21-80)の平均長さは、80cm程度です。

下の動画中の、花が咲いているグループが、背丈の低いグループ(H-K2-FLAX-80)です。 

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5月30日、雨で倒れた亜麻(H-K2-FLAX’21-100)を、背丈の低い亜麻(H-K2-FLAX’21-80)と一緒に収穫しました。

麻ひもで縛って、洗濯竿にかけました。この状態で乾燥させます。

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残りの亜麻(H-K2-FLAX’21-100)は、6月下旬頃に収穫する予定です。

まとめ

名称未設定-2

亜麻繊維や亜麻仁油を産業用途にそのまま使用することは、コスト面から難しいかもしれません。

しかし、亜麻を楽しむ文化が広がれば、その多様性から、様々な商品・サービスを開発できる可能性がでてきます。

「デザイン思考」や「フリーイノベーション」の考え方を取り入れながら、その可能性を追求していきたいと考えています。

続く



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