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高級料理を食べる浮浪者

東京の繁華街、銀座の路地裏に一人の浮浪者がいた。彼の名前は山田。  

山田はかつてはサラリーマンだった。しかし会社が倒産して失業し、住むところもなくなり、路頭に迷ってしまった。  

山田は、毎日、銀座の路地裏でゴミを漁って生活していた。しかし食べられるものはほとんどなく、空腹を満たすのに精一杯だった。  

ある日、山田は銀座の高級レストランの前に座っていた。レストランの窓からはおいしそうな料理が運ばれてくる様子が見える。  

山田は思わず、唾を飲んだ。  

「ああ、なんておいしそうなのか」  

山田はいつかこんな高級料理を味わってみたいと夢見ていた。  

そのとき、レストランの店員が山田に声をかけてきた。  

「すみません、何かお困りですか」  

山田は驚いて立ち上がった。  

「え、えぇ、いえ、大丈夫です」  

「もしかしたらお腹が空いていませんか」  

「え、えぇ、そうですが」  

店員は山田をレストランの中に招き入れた。  

「では、こちらで何かお召し上がりください」  

店員は山田をテーブルに案内し、メニューを手渡した。  

山田はメニューを眺めて目を輝かせた。  

「うわ、なんて豪華な料理だろう」  

山田は迷わず、一番、高価な料理を注文した。  

しばらくして山田の注文した料理が運ばれてきた。  

山田は料理を前にしばらく感嘆の声を漏らした。  

「うわ、なんて美味しそうなんだ」  

山田は慎重にフォークを持ち上げ、一口食べた。  

「う、うまい、うまいぞ」  

山田は目を閉じて味わいながら噛み締めた。  

「こんなにおいしい料理は初めて食べた」  

山田は夢中で料理を平らげた。  

食事が終わると店員は山田に言った。  

「どうでしたか」  

「う、うまい、最高でした」  

「よかったです。また、お越しください」  

山田は店を出て路地裏に戻った。  

「ああ、なんて幸せな時間だったことか」  

山田は満足感に浸りながら歩き出した。  

その日から山田は、月に一度、高級レストランを訪れるようになった。  

山田は高級料理を食べることによって生きる希望を取り戻した。  

ある日、山田は店員に言った。  

「実は僕は昔はサラリーマンだったんです」  

「そうなんですか。それではどうして今は」  

「会社が倒産して失業してしまって……」  

「それは大変でしたね」  

「でもここに来ると、また、生きる力が湧いてくるんです」  

「それはよかったです」  

店員は山田を励ますように言った。  

「これからも頑張ってください」  

「はい、頑張ります」  

山田は店を出ると再び路地裏に戻った。  

「ああ、また来たい」  

山田は高級料理への憧れを胸に明日を生きる決意を新たにした。 

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