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リオ・グランデ・ド・スール州~アメチスタ・ド・スールの町とユクマンの滝~ 青木遼 月刊ピンドラーマ2023年6月号

今回紹介するリオ・グランデ・ド・スール州のアメチスタ・ド・スール(Ametista do Sul)という町はアメシストの産出する町で、町中にアメシストの鉱山がある。アメシストといえば、女性の憧れの宝石で二月の誕生石だ。アメシストの石言葉は、≪高貴・誠実・心の平和・愛情≫。高貴の色を示すその紫色は霊性の高さの象徴で、マイナスエネルギーをプラスに変える効果があるとされ、『愛の守護石』ともいわれる。

カンピーナスのヴィラコッポス空港からサンタカタリーナ州のシャペコ空港まで一時間半くらい飛行機に乗り、そこからアメチスタ・ド・スールの町まで90km。着いたらすぐに町の中央教会、サン・ガブリエル教会(Paróquia São Gabriel)に行く。


■ サン・ガブリエル教会とピラミッド 

サン・ガブリエル教会

壁から手水鉢まで、あらゆるものがアメシストでできている。見事な造り。この教会は2008年に建設され、40トンものアメシストが使われている。この一帯はリオ・グランデ・ド・スール州の自治体である。この教会の守護神、サン・ガブリエルは旧約聖書『ダニエル書』にその名が現れ、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教へと引き継がれている。

このサン・ガブリエル教会のすぐ横手にピラミッド Pirâmide Esotérica がある。下に水晶が引き詰められ、寝転がると癒しの空間が生まれる。天空の光、雲、青い空が透き通ってて見える。自由に皆寝転がり天を仰ぐ。

ピラミッドから空を見上げる


■ ワイン工場

その後、ワイン工場に行く。ここも洞窟の中にたくさんのワインが保管されている。適温の13~17度ぐらい。全長380メートルのこの洞窟は1922年にできたといという。銘柄に、ÁGATAと入っている。陽も暮れてくる。山間の夕陽は美しい。このあたりで有名な Hotel das Pedras に入る。名前のとおりあらゆるところに数々の石の細工がある。1メートル以上のアメシストやリオ・グランデの石で作られた鳥、木など数々の細工物。石の天国に宿しているような感じ。ブラジルが宝石の国とは知っていたが、これほど豊かな国とは!! 

洞窟内のワイン貯蔵庫

夕食の後、見上げた夜空に満天の星。星の観測図を取り出し、若い人はあれが何の星など探求心旺盛だ。あまりの素晴らしさに言葉もない。空気も良く星空は無限に広がる。


■ ユクマンの滝

ユクマンの滝

世界中でブラジルといえば、イグアス―の滝といわれているほどイグアス―は有名だが、このユクマンの滝(Salto do Yukumã)もとても珍しい。全長1.8km、高さは雨量によって異なり、5〜15メートルくらい。川のような長い滝。アルゼンチンとブラジルに面しており、小高い山の向こうはアルゼンチン。アルゼンチンからは観光の小舟も出ている。この滝はリオ・グランデ・ド・スールが管理しており州立公園となっている。総面積は、17500ヘクタール。見学時間は、水~土の8時半から17時まで。受付の資料館から滝まで600メートル程歩く。雨の多い水量のかさむ時期などは滝が隠れて見えないので、訪れる時期に気をつけた方が良い。案内の資料や地図などほとんどなく、自分の目で見て感じるしかない。公園内には6種類の豹、ジャガーがいるという。ブラジルは広い。このような資源があるというのは驚くほかしかない。ホテルから片道2時間ほどの旅程。

15時半ごろに、アメチスタ・ド・スールの町に戻り、ショッピング・センターに行く。ガウショがマテ茶を飲むのに使うクイヤ(ヒョウタンでできた茶器)や、銀・ステンレス製のボンバ(ストロー)なども宝石に交じって展示されている。飾りに石もついて見事だ。正面入り口の大きなアメシストの石の木は天上界の霊木を思わせる。


■ 竹の博物館

めずらしい竹の博物館(Museu do Bambu)があるというので訪れてみた。大きなパンダのぬいぐるみがある。入口には竹林があり、竹と笹はその一部。よって笹を食べるパンダがシンボルなのだ。ブラジルのインディオが作った竹細工の籠や椅子、楽器、ミニチュア・ハウスや飾り物が600種類ほど展示されている。竹を使った物差しや竹茶なども売っている。竹茶は不老長寿の飲み物という。竹の博物館は初めて見るが、日本では京都洛西や別府にもあるらしい。


■ 展望台

町中から15分ぐらい移動したところから、列車(トラクターを改造した車)で見晴らしの良い展望台 Mirante das Pedras に行く。高台なので近くの山や高原が眺望できる。途中、ガリンペイロの掘った洞窟なども見学。この高台の上に一軒、石の店があった。アメシストの色も濃く値段が良心的で安い。同行のブラジル人女性は、「とても安いわ!」と、40センチぐらいあるハート形のリオグランデの石を購入していた。かなり大きい。確かにサンパウロではこの値段ではないだろう。


■ アメチスト公園博物館

ここ Ametista Parque Museu の展示物は見事としかいいようがない。大きな原石の中から輝くばかりの水晶が見え、その結晶の美しいこと。数々の展示物に驚く。また個々の洞窟の中には多くのエリアがあり、お店も入っている。ビール、チーズ、チョコレート、お菓子、宝石類など。洞窟内を散策するのも楽しい。いったん外に出ると、トロッコで真っ暗な闇の洞窟を探険するツアーもある。ぶつからないか、ひやひやしながら乗っている。皆同じ気持ちだろう。スリリングなツアーだ。

アメチストの原石
店内のいろいろな石


■ 鉱物採掘人の仕事

地中の鉱物を掘り出す採掘人をガリンペイロ(Garimpeiro)という。この地域に900人はいるという。洞窟・地下・地下街 Subterrâneo は127か所あるとガイドさんが言っていた。幼少のころ、『地底探検』の映画を見て地底王国にファンタジーを感じていたが、この一帯の数々の洞窟は、文明の進歩すら感じられる地下街だ。涼しくて清潔。人が生きるのに雨、風がしのげて最高。ガリンペイロがダイナマイトを使い一部を爆破するところを見せてくれた。見物人は本物の爆破作業に大喜び。爆破された後はもくもくと洞窟内に粉塵が舞う。轟音ですごい迫力。

ガリンペイロ


■ 世界一の地下レストラン

地下にあるこの有名なレストランの表札にこう書いてある。

“Restaurante Belvedere 1º Restaurante subterrâneo de mundo”
(レストラン・ベルヴェデーレ 世界一の地下レストラン)

Restaurante Belvedere

確かに世界一。その雰囲気と宝石類に囲まれ、椅子やテーブルも巨大な貴石で作られている。レストランの奥は各エリアに分かれており、土産物も売っている。美味しい食材、ワイン、店内は多くの観光客で溢れる。

これらの自治体を作り、ブラジルの宝石アメチストを中心にこれだけの観光地を造り上げる。その発想に驚く他はない。ブラジルは広い。北のアマゾン、椰子の茂る東北伯の海岸線、砂浜、原生林。南泊のヨーロッパ風町並み、人種のるつぼといわれるブラジルだが、今回のアメチスタ・ド・スールの特異さにやはり驚く。このユクマンの滝も豊な水資源だ。サンパウロからそう遠くなく、二泊三日の旅程をお薦めする。是非、ご出立を。

 

青木遼(あおき りょう)  
無類の旅行好き。新しい土地に行き、新しい、珍しい土地でエストランゼイロになり新地を探索する。自分の中の何かを探し、見知らぬ人とのコミュニケーション。そこに新たな感動を感じる。滞伯歴40年以上。

月刊ピンドラーマ2023年6月号
(写真をクリックすると全編PDFでご覧いただけます)


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