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テレワークをすぐに始める方法は? 8つのノウハウを共有します (1)

本稿では、新型コロナウイルス感染予防対策として、テレワークをすぐに始めるための方法について解説します。一般論ではなく、アステリア株式会社が2011年から9年間培ってきた実践的経験を元にテレワーク実施の具体的なノウハウを共有します。使っているツール名などもできるだけ固有名詞で触れて実施の参考になるようにします。

テレワークを始めるには何が必要か?

まず、テレワークに必要な8つの項目を整理します。それは下記の8つ。

(1) 制度/ルール
(2) ネット接続環境
(3) テレワーク機器
(4) セキュリティ
(5) 勤怠管理
(6) 業務管理/報告
(7) 会議/イベント
(8) 資料の共有

8つもの項目があると多いと感じる人もいるかもしれません。メディアなどでは、絵になるということから「オンライン会議」ばかりが取り上げられがちですが、仕事は「会議」ばかりではありません。むしろ、より進んだ企業では会議をいかに減らすかに取り組んでいる企業も多いでしょう。

そういった現状を踏まえて整理したのが、この8つの項目です。しかし、今回は特に「すぐに始める」ことが求められるので、全てをしっかりやりましょうという話ではありません。項目毎に

【すぐにテレワークを始めるために】
【落ち着いてから取り組むこと】

の2つのポイントに分けて説明します。

テレワークを始めるための8つの項目

(1) 制度/ルール

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【すぐに始めるために】

通常であれば、まず会社での制度化や、部門でのルール策定を行うことから始まりますが、今回はそういうことは言ってられません。「制度/ルール」は、できるだけ即席に簡易に作ることです。その上で、1番大事な事は、会社や管理者がテレワーク推奨であると明確に宣言することです。テレワークによって仕事上不利にならないということを明言すること。ポイントは不安を払拭すると言うことです。

即席のルールは例えば以下のような項目を現実的な方法で決めておくことが考えられます。
・テレワークの申請方法
・業務内容の指示・伝達方法
・業務進捗や結果の報告方法
・テレワーク中の個別連絡方法
・会議の実施方法

これらの方法としてアステリアでは、自社製品のPlatioHandbook以外に、SlackTrelloGoogle DocsBoxGoogle MeetZoomなどを使っていますが、これらのツールについては、この後それぞれの項目で詳しく述べます。

【落ち着いてからやること】

「落ち着いてからやること」はテレワークの制度化です。就業規則またはテレワーク規定を制定すること。そして、もう一つ大切なこととして評価制度をアウトプット重視に変えていくということです。

制度について、アステリアは就業規則に入れるのではなく、テレワーク勤務規定として別途規定しています。規定の中では、「上長連絡/承認の方法」「報告事項」「勤務時間」「勤務場所」「セキュリティ」「給与」などを規定しています。アステリアでは、「セキュリティ」以外の項目は性善説に立ってできるだけ柔軟にしています。また、評価制度について、アステリアでは、評価の単位を「課業」という、タスク毎に達成度を評価する仕組みにして、「上司の言うことをきいたか」ではなく「個々の仕事のアウトプット」を評価基準としています。

(2) ネット接続環境

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【すぐに始めるために】

社員・スタッフ側のネット接続環境が必要です。接続できるだけでなく、テレワークに必要なスピード(帯域)の確保が必要です。固定回線で光回線を繋いでいる人は問題ありません。携帯のティザリングやWiFiルーターの場合「4G」「LTE」の接続でも問題ないでしょう。それ以外の場合は、回線スピードを測ります。上下とも10Mbps(ビット/秒)の速さがあれば十分ですし、安定して3Mbps(ビット/秒)以上であれば、大きな支障はありません。

回線スピードの計測には、私はSpeedtest (by Ookla)を使っています。パソコンでもスマホでも。計測は朝、昼、夜など異なった時間で計って、快適な時間を探しておくことも役に立ちます。

また、企業側としては、上記に満たないようなネット接続環境の場合には、十分な接続環境を確保するための費用補助なども検討するとよいでしょう。

【落ち着いてからやること】

落ち着いてからやることとしては、社員全体のネット接続環境の実態調査を行うことです。それに対して実態に則したテレワーク実施ツールを策定するとともに、利用ガイドラインを制定することです。また、場合によっては、会社のネット接続環境が貧弱なことがありますから、会社のネット接続環境の確認も忘れてはいけません。

(3) テレワーク機器

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【すぐに始めるために】

すぐに始めるためにはまず自宅で使える何らかのコンピュータ機器が必要となります。パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットなど。いずれかが1台はないとテレワークはできません。このため、自宅には機器が無いと言う場合には、会社のPCの持ち帰りを緩和する方策が考えられます。
自宅で機器を使ったり会社と持ち歩いたりする場合には、会社のファイアーウォールでの防御やIT部門の支援が減るので、セキュリティーが重要です。最低限でも、以下の3点は実施しましょう。

(1) パソコン使用のユーザーログイン設定(パスワードや顔認証)
(2) アンチウイルスソフトの導入(モバイルの場合はMDM
(3) 記憶装置(ハードディスク、SSD)の暗号化

個人で使える機器がない場合もあるでしょう。こちらは会社の共有物を使うことも考えてはどうでしょうか。今回、全社的なテレワークが実施されるケースが多いので、例えばデモ用の機器、セミナーなどの共有物、展示品なども対象として考えられます。

【落ち着いてからやること】

落ち着いてからやることとしては、自宅で仕事ができるための機器の整備です。方法は2つあります。

(1) 個人の自宅パソコンを利用する
(2) 会社のパソコンを持ち帰る

どちらの場合もセキュリティがポイントとなります。パソコンを持ち運ばない方が一見セキュリティが高そうですが、ノートパソコンの場合は会社のパソコンを持ち帰る方法がお勧めです。その理由は、個人の自宅パソコンは、会社のIT部門やセキュリティポリシーが及びにくいからです。一方で、会社のパソコンはセキュリティの問題だけでなく、仕事をシームレスに進められる利点もあります。パソコンの機種に関しては、災害対応の観点からは、停電などにも対応できるように、一定時間バッテリー駆動ができるノート型もしくはAii-in-One型(SurfaceなどのPCとタブレット両用)が良いでしょう。

(4) セキュリティ

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【すぐに始めるために】

セキュリティは、非常に重要なことですが、すぐにできることことは限られています。後で述べるようなネットワーク環境のセキュリティは会社での対応が必要になりすぐに対応出来ない物も多いからです。そこで、すぐにできることとしては、使うパソコンや使うアプリケーションとしてセキュリティの高いものを使うことになります。先に述べたようにパソコンでは、
(1)ユーザーログイン
(2)アンチウイルス
(3)ハードディスクの暗号化

に加えて、アプリケーションとしては
(4)データ経路が暗号化されているか
(5)転送などができないように管理者がデータの管理ができるか
(6)データの閲覧状況などが後から確認できるか

などといったことを満たしているアプリケーションを使うと良いでしょう。特に電子メールは (4), (5), (6)全て満たしていませんので、機密文書や個人情報に関するデータはメールでのやりとりは避けたほうがよいでしょう。

【落ち着いてからやること】

落ち着いてからやることとしては、全てのデータ通信を暗号化したまま行うことのできるVPN (Virtual Private Network)を会社で導入することが必要です。会社で認めているモバイル機器にも導入できることを忘れてはなりません。また、テレワークを前提としたセキュリティポリシーの策定や改訂も早めにやりましょう。

続き:(5)勤怠管理→

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