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ヨセミテ国立公園とアメリカホテル浸水事件

10月冒頭、主人と私は、アメリカで1,2位を争う屈指の人気を誇る「ヨセミテ国立公園」を訪問しました。

アメリカに移住して2ヶ月足らずで、ヨセミテ国立公園に訪問したことをアメリカに2年駐在している先輩駐在員の方に伝えると、
「もうヨセミテに行ってきたの!?俺、まだ行ってないよ~」というレスポンスが返ってきました。

なんでそんな早く行くことになったかというと、8月にアメリカにやってきた私が
「ヨセミテ公園、冬になる前に絶対行きたいー!」
「行かないなら、私一人でも行くー!」
わがままこいていたため、主人が気を遣って早めに計画してくれたからこそでした。

ありがとう、主人。愛してるよ。

そんなヨセミテ公園訪問が、出発日の2日前に決まって、前日ぎりぎりまで準備に追われた。

主人が突然
「明後日から行くから宿取っておいて」
と言い出したためです。

「ほわー!!もっと早く言ってよ!!」という感じでしたが、
仕事以外のことは予定を先延ばしにする癖がある主人が、パッパと予定を決めてくれたので、我に返って宿を調べ、そそくさと予約しました。

その時は、まだ、圧倒的な感動と想定外のトラブルに巻き込まれるとは思ってもいませんでした。


神々の同窓会

ヨセミテ国立公園までは、自宅のあるシリコンバレー群から車で7時間弱ほどでした。

公園に到着する寸前、車の運転は主人に任せ、私は助手席でぼーっと窓の外の風景を見ていました。

木の少ない乾燥した山々が続いているのに飽きてきたところで、前方に白い大きな岩の山々が現われました。

私はそれをみて、見たこともないくせに、直感的に察しました。
「あ、ヨセミテ公園だ!」

それは、大きな大きな白い巨大な存在。平たく言ってしまえば、白い大き目なただの岩山なのですが、青い空に強烈に映えるその姿に、まるで世界を想像した神々なのでは、と思わざるを得ないほど、心から感銘を受けました。

大人になり、会社員となり、複数の外国を旅し、刺激的で幻想的なTVゲームや、漫画、アニメを観て生き、断食や、シビアな瞑想修行を経験し、メンタルをやられて会社を1年以上休職し、恐怖にさいなまれながら復職し、仕事が好きになり結婚、退職、アメリカ移住を開始した40歳となった、

振り返ってみたら、いろいろ心揺さぶられる経験をしてきた自分が、心から感動できるものは、かなり少なくなってきているのでは、と思い始めてきたのが最近。

そんな自分でも、心から感動することがまだあったんだ、と、いうことに気づけたことも、自分にとっては祝福でした。

素敵なヨセミテ公園の風景を見て、普段、自然に興味のない主人も感銘を受けていて、白い岩山たちが見える川辺のきれいな場所で、大の字になって寝ていました。

断食、瞑想など、やや精神性の高い習慣を持っている自分は、残念ながら霊性的なものを感じ取れるぐらいの高い感度を持ってないほうだと思っています。
それでも。
白い岩山たちはさながら神様のようで、私たち人間や動物、自然の世界を見守るがために、ここヨセミテ公園に集まってきたのではないか、と、ふと思ったのでした。

危機一髪!アメリカホテル浸水事件

ヨセミテ国立公園訪問の際、移動時間の長さと、ヨセミテ国立公園を回るのにかかる時間を見積ったところ、どうしても近くの宿に1泊する必要性がありました。

よって、私はBooking.comで適当な宿を予約しました。
ヨセミテ国立公園から車で約1時間の距離にあり、周りに飲食店があるマリポサという街の宿でした。

ヨセミテ国立公園を堪能した1日目、19時頃にチェックインし、近くのピザ屋さんでたらふくピザを注文しました。
ボリュームがかなりありましたが、お腹一杯に食べることができました。

そして宿に戻り、主人とだらだら過ごしていると、気が付くと寝落ちしており、目覚めたときは、次の日の朝4時でした。

その時、私は生理中で、早朝の出発前にどうしてもお風呂に入っておきたかったので、浴室のバスタブにお湯を入れ始めました。

15分ほど経過した後、浴室に行って、お湯を止めようとしたところ、お湯がバスタブから溢れて、浴室のフロアが水浸しとなり、寝室入り口から1メートル程にまでお湯が浸水していました。

私はあわてて湯を止めました。どうしようと思っていると、主人が起きてきました。トイレに行こうと浴室に入ると、浴室が水浸しでびっくりしていました。

「ごめんね、バスタブに湯を張っていたら、溢れちゃって・・・」

私たちが住んでいるアパートのバスタブは、ある程度、湯が溜まってくると、ある一定のところでお湯がはけるような構造になっていました。
よって、ここのホテルの浴室も、同様の構造になっていると思い込んでいた私は、ある程度見積もったうえ、バスタブにお湯がいっぱいになりそうな頃合いにお湯を止めようと思っていました。
しかし、アパートのバスタブと大きさが異なりますし、お湯が出るスピードも異なっていたため、予想よりも早くホテルのバスタブは湯であふれてしまったのでした。

「ああ、溢れちゃったんだね。しかたないね」

主人がそう話しかけてくれた時、部屋のドアがドンドン!と叩かれました。

え?なんだろうと思っていたときに、主人がドアを開けました。
すると、ホテルのスタッフが、すごい剣幕で、

「おたくの部屋から水漏れして、下の階の部屋に水が漏れていて、お客の荷物がずぶぬれになっている。どういうことだ!?」

と、問い詰めてきました。
主人は英語で、バスタブの湯があふれてしまったことを説明しました。

「なんでシャワーを使わなかったんだ!?」
「シャワーを使ってはいけないと、フロントでは言われませんでしたよ」
と、主人は反論してくれました。

その後のスタッフの話を聞いたところ、2点の大きな問題となっていたことがわかりました。
1.私の部屋からの水漏れで、下の部屋に浸水した
2.下の部屋に浸水した結果、なぜか下の部屋の火災報知器が反応し、警戒音とともに、スプリンクラーが作動、部屋が水浸しになり、他のお客さんにも影響が出た

1.は、確実に私の過失でしたが、2.はこの宿の構造上の問題でしたが、連鎖して起きてしまっては、責任感を感じざるを得ませんでした。

ホテルのスタッフの方は、カンカンに怒りながら、
「この件の金銭的な請求はしっかりさせてもらうからな!!いくらになるかはホテルのマネジャーが出勤してから確認する」

と厳しい言葉を残して去っていきました。
私は、私たちはとてつもない不安に襲われました。

いくら請求されるのだろう。

思わずインターネットで調べ始めました。
ヤフー知恵袋では、同様の件で、100万円の請求をされたとの情報がありました。
また、別の件では、営業停止による損害の請求もされたために1200万円の請求をされたとの事例も確認しました。

私たちは完全に青ざめました。
支払方法は現金なのか、クレジットカードは可能なのか、、、
できる限りの準備をし始めました。

その時、私はハッと気が付きました。

駐在者とその家族は、海外で何かあったときの海外旅行保険に加入している。そこに請求された金額を申請してキャッシュバックを受けることは可能なのでは。

私はすぐにアメリカのヘルプラインセンターに電話を掛けました。

とても幸運なことに、私は離職する直前まで、人事労務の仕事の一環で、
海外旅行保険の手続き担当者でした。
よって、ほかの駐在者よりも危機感が高かったため、何かあったときに、いつでも問い合わせができるように、ヘルプラインセンターの電話番号、主人と自分の海外旅行保険の証書のPDFを常に所持していました。
そして、日本からヘルプラインセンターの担当者に電話をかけ、どのように相談すればよいかの初回のステップの踏み方も、担当者として把握していたのでした。

電話を掛けたところ、今回の件は補償の対象になるとのことでした。
その事実に安堵しましたが、どうやらホテルとの値段交渉、支払方法の交渉、支払いまでは、センターではサポートしてくれないとのことでした。
これは、英語ができない方、こうなった場合の相場の支払額を把握していない方は致命的な状況に陥るところですが、またしても幸いなことに、英語については、主人はシンガポール赴任10年のベテランであり、私もオーストラリアに留学していた経験があるため、そこまで不利な状況ではありませんでした。

それでも、いくら請求されるか、不安が心を駆け巡りながら、
ホテルのフロントで、暗い気持ちを持ちながら、主人と二人でホテルのマネジャーが出勤して請求額が確定するまでの朝10時までは、地獄のようでした。

私は請求金額が確定するまでの間、できるかぎりホテル側のスタッフとの交渉に臨みました。
自分が海外旅行保険に加入しており、今回はその保険が適用になることを伝えて、保険の証書のPDFをスタッフにシェアしたりと、
英語は主人の方ができるので、主人通して必要なことを確認して実施してもらいました。

そして、朝10時過ぎに、請求金額が確定しました。

金額は、宿泊費にプラスして約200ドル(2万5千円程度)でした。

主人と私は思わず脱力しました。
よかった、大した金額ではない。

「わかりました」といって、そそくさと清算して、ホテルを後にしました。

私は、主人に猛烈にあやまって、シュンとしました。

すると主人は言いました。

「実は、マレーシアに出張してホテルに泊まった時に、同じようにバスタブにお湯を入れながら寝てしまって、お湯を溢れさせてしまい、寝室まで水浸しになったことがあったんだ。でも、そのホテルはしっかりしていたから、下の階に浸水はしなかったし、追加請求されることもなかった。だから今回は運が悪かったと思っているよ」

そうなんだ。そっか・・・。
そうだったとしても、、、やっぱりヘコむわ。
主人の励ましを込めたお話に感謝しながらも、

私は心底、落ち込みました。

ヨセミテ国立公園への旅、2日目にして、こんなトラブルを起こしてしまうなんて、ある意味、奇跡的で。
でも、こんな異国での想定外な事態に備えるために、海外旅行保険に加入させてもらっているのだと、身をもって理解したのでした。

一難去った後にやってきた幸運

その後、すぐにまたヨセミテ国立公園に向かい、残りの時間を過ごすことになりました。
気持ちがまだ落ち着いてませんが、時間はどんどんなくなっていきます。
よって、とりあえず昨日のピザ屋でお持ち帰りしたピザをもって、再び公園に行くことになりました。

再び公園に行く途中で、私たちは道を間違えました。
あれれ?こっちじゃないよね・・・戻った方がよくない??

そんな話が出て、不安になっていたところ、急に視界が開けるような場所に出ました。そこには、多くの人がいて、とてつもなく素晴らしいヨセミテ公園のビュースポットのようでした。

この風景は一生忘れない

奇跡じゃん!!
私たちは喜びました。

朝の事件で超へこんでいた私たちに与えられた、突然のラッキー。
素晴らしいヨセミテの景色が見えるこの場所で、私たちは2ショットの写真を撮りました。
その写真がのちに、主人のお父様によって印刷され、おうちに飾られることになる写真となりました。

そんなラッキーに出会った後は、素敵な小川が流れるそばで昼食のピザをほおばり、駐車場がフルで埋まっていたばっかりに、適当な場所に駐車し、小川の近くでのんびり過ごすことになりました。
その場所の風景がまた素晴らしくて。

色々、トラブルにあったのも、その後にラッキーな体験ができたことも、
もしかしたら、ヨセミテ公園の白い岩山の神様たちから頂いた素晴らしいギフトだったのかもしれない、と、ふと思いました。

ありがとう、白い岩山の神さま

そして、忘れてならない、今回の旅の企画のために仕事の調整をして休暇を取り、トラブルにも冷静に対処してくれた上、私を素晴らしいヨセミテ公園に連れていってくれた主人には心から感謝しました。

この件を機に、主人への尊敬の気持ちがますます増えたのでした。


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