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狐の嫁入り


友人と京都へ行った時のこと。
駅に降り立った瞬間に大粒の雨が降り注いだ。
空はと言うと晴天であった。
いっそ、すがすがしい降りっぷりに、大笑いしながら雨の中を走りながら、移動した。
行き先は伏見稲荷大社。

「これは盛大に嫁入りしてそう」
「ね、行き先が行き先だけにね」
「披露宴中じゃないの?で、テンション上がってるのよ、きっと」
「テンション上がった結果、土砂降りかぁ……それとも嬉し涙?」

伏見行の電車に乗る時には雨はすっかり上がっていた。
御朱印もいただき、ご祈祷中の祝詞を聞いたりと随分と楽しい一日だった。
狐の嫁入りに遭ったせいかどうかは分からないけれど、その日はかなりの距離を歩き回ったにも関わらず、全く疲れが出なかった。
帰りの電車では大概爆睡してしまうというのに。

不思議なくらいの元気さは翌日まで続いた。
やっぱり、これはちょっと歓迎ムードだったのかもしれない。
嫁入りついでにふとした気まぐれで、旅人に幸せをおすそ分け
してくれたのかもしれない。
そう思うことにしている。

#創作大賞2023
#エッセイ部門


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