頭を持ち上げるエクササイズについて②

前回の記事からの続きになります。

仰向けでおこなうエクササイズで頭を持ち上げることが苦手な人は「腹筋が弱いから」と考えがちです。ですが、これは間違った考え方です。腹筋が弱いからではなく、「身体の使い方」が上手ではないから頭が持ち上げづらくなっているのです。頭を上手に持ち上げられるようになると、自然と腹筋は強化されていきます。

身体の使い方が上手くなると腹筋と言っても表層にある腹直筋ではなく、深部にある腹横筋を強化することができます。そうすることで、体幹を組織化することが上手くなり、姿勢の改善や腰痛の解消につながります。またこの筋肉が上手に使えることでウェスト周りもシュッとした印象に、くびれができる方向に変わっていきます。トレーニングを頑張っているのに自分がゴツゴツした印象に感じる人や腰痛があるという人は、動きの質(エクササイズの質)に目を向けてみてください。

◆ここまでのまとめ
・頭を持ち上げる&持ち上げ続けるのが苦手なのは、腹筋の弱さが原因ではない。身体の使い方(動きの質)に問題がある。
・エクスパンショナルピラティスでは、腹直筋ではなく腹横筋で頭を持ち上げたい。
・頭を持ち上げる場面で「てこの支点」がどこなのかがわかると、より快適にエクササイズがおこなえる。


前回の記事で、腹横筋は多裂筋に付着しているとお伝えしました。多裂筋についても確認しておきましょう。

背中にはたくさんの筋肉がついています。表層にある筋肉は身体の前側にあった腹直筋と同じように、深層部にある筋肉よりもより大きく逞しくなります。脊柱起立筋群と呼ばれているこの筋肉群は、かなり強い筋肉の集まりです。表層にある筋肉を蛍光灯のような筋肉、深層にある筋肉をダウンライトのような筋肉と考えるとわかりやすいかもしれません。背中側にある深部の筋肉が、多裂筋になります。

<蛍光灯とダウンライト>
腹直筋(蛍光灯)/腹横筋(ダウンライト)
脊柱起立筋群(蛍光灯)/多裂筋(ダウンライト)

蛍光灯の明るさを落としてあげなければ、ダウンライトを明るくしていくことはできません。つまり、腹横筋を使って頭を持ち上げるためには腹直筋の緊張をとる、テンションを落とす必要があるのです。

色がついている筋肉「多裂筋」が、脊柱起立筋群の奥に存在しています。筋肉の走行が、斜めに走っているのがわかります。

多裂筋は、とても賢い筋肉です。筋肉には「賢い筋肉」と「賢くない筋肉」があります。手のひらを手の甲を触ってみて、どちらが繊細に情報を多く受け取れるか考えれば、手のひらだとわかるでしょう。固有需要感覚に差があるからです。固有受容器の豊富な筋肉の1つが、多裂筋です。賢くないから重要ではないという訳ではないのですが、この多裂筋が機能しているかどうかは力が抜けた状態で良い姿勢が作られているかどうかの重要なポイントになります。しなやかで伸びやかな背骨のためにも、ダウンライトの質感を持っている賢い多裂筋が活躍する必要があります。多裂筋ではなく、脊柱起立筋群で姿勢を維持している人はしなやかさや伸びやかさに欠けていて、ゴツゴツとした感じやぎこちなさを感じさせます。背骨を棒のように固めてしまっている人たちです。

さて、今回のテーマである「動きのクオリティを重視して、頭を持ち上げること」に話を戻します。以前にも述べたように、この筋肉と腹横筋がつながっているのです。

多裂筋と腹横筋は関係性が深く、恋愛関係が成立しています。実は、多裂筋のスイッチが入らないと腹横筋はアクティブにならないのです。

<インナーマッスルの恋愛関係>
多裂筋(背中側)★腹横筋(腹部)

蛍光灯の電源を落とさないと、ダウンライトを明るくすることはできないと先に書きました。ですから、エクスパンショナルピラティスではエクササイズに入って行く前に、蛍光灯の緊張を落とすようなセイクラムリリースなどのEPAセルフリリーステクニックをおこなうのです。

「脊柱起立筋群(蛍光灯)の緊張を軽減することで、多裂筋(ダウンライト)のスイッチが入る。多裂筋から筋膜を介してつながっている腹横筋(ダウンライト)に収縮が起こる。そして頭を持ち上げる動きにつながっていく。腹直筋(蛍光灯)のスイッチが抜けているので、腹横筋によって頭は持ち上げることができる。」

このような流れになっています。この動きのクオリティで動くために①でも述べたように、呼吸の質はとても重要になります。次に続きます。

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