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不利な状況だからこそ

先月、熊本からぼくのセッションとグループレッスンを目的に大阪に来てくれる女性がいました。

彼女以外にも、遠方からセッションを受けに来てくれる人がいます。また、ワークショップや養成コースを開催すると、「えええ、そんなに遠くから来てくれたんですね」という参加者がおられたりもします。

提供する立場としてはありがたいと思いますが、私も遠方まで学びにいくことも多くあります。ですから、その楽しみ充実感といった感情、冒険にも似た感覚を思い返し、熊本に帰っていく彼女をスタジオで見送り、なんとも言えない温かさが心にじんわり沁み渡りました。

「遠いしなぁ…」

この世界にはどこでもドアみたいなものは発明されてもいないので、移動はぼくたちの時間とお金を奪います。鉄道マニアの方々のように、移動そのものが楽しいという人は、それが楽しみとして機能しているからいいのでしょう。ですが、多くの人にとってはその時間分、仕事や家事の負荷が増えたり、他の部分にしわ寄せが生まれたり、「もっと近ければいいのに」と思ったりするかもしれません。たまにならいいんだけれど、毎回だと負担、ストレスになる。「ちょっと足が重いなぁ」いう感じです。

魔法の靴

熊本の彼女に話を戻すと、彼女の場合、毎月Zoomを使ったオンラインでの個人セッション。そして、職場での休暇を使ったりして、大阪に来てくれています。

直接ぼくから学べる機会は貴重だと彼女は思っているから、一所懸命、取り組んでくれています。養成コースやワークショップに参加される人たちの中には動画で撮ったり、メモをとるとそれだけで満足してしまって、見返さない人もいます。でも、彼女は熱心に復習して、その効果を最大限に受け取ろうと努力をしています。

昔、ドラゴンクエストというゲームの中で、歩けば歩くだけ経験値が貯まる魔法の靴みたいなアイテムがありました。その靴を履くとモンスターを倒さなくても、道をとぼとぼ歩くだけで経験値が積み上がっていくのです。

何かを学ぶ人たち、より良くなろうと何かを求めて努力している人たちは、誰もがそんな靴を履いているのかもしれない。彼女に限らず、遠くから来る人たちは、不思議なことにより回復や成長の速度が速くなります。

距離に限った話ではなく

考えてみれば、距離に限った話ではないかもしれませんね。
子供を託児所に預けて…とか、経済的に余裕のない中で…とか、そういった多くの人たちからするとハンディキャップを抱えているようにも思える人たちが、より大きな糧を得ていきます。

情熱の質量

動機、本人が切実に必要だと感じること。強い想いで、求める。モチベーションという言葉を使うと、上がり下がりするような印象もありますが、熱量って重要です。情熱の質量が重ければ重いほど、僕たちを遠くに運んでくれます。

家から距離が遠いとか、子供がいたり親の介護があって時間のやりくりが大変だとか、金銭的に余裕がないだとか。仕事が忙し過ぎて、心に余裕がないだとか。その人その人の事情において、ハンディキャップに感じることが何らかあるとします。それはマイナスでしかなさそうなのに、実は大きなプラスに作用している。実はドラゴンクエストの魔法の靴みたいに重要な役割を果たしていて、僕たちが得る糧の量を増やしてくれているのかもしれません。

頭で考えると合理的ではない、理に適っていない話なんですけどね。でも遠くに住んでいるあの人も、子育てに大変なあの人も、親の介護しながらのあの人も、終わらない残業を切りあげて駆けつけるあの人も、倦怠感で家から出かけるのも億劫なあの人も、あの人もあの人もあの人も。君も、あの人と同じように魔法の靴を履いているんです。

さあ、情熱を試しましょう。
不利な状況だからこそ。

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