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美術館博物館の職員の存在について。

ついに長らくお世話になっていた美術館が、改装工事のため、長期休館に入りました。こちらの写真は閉館前日に滑り込みで観客として展覧会を見に行って撮影した写真です。私たち展示室内の作品監視やチケット販売などの受付業務をしている職員というのは大抵何処の美術館でもいえることではありますが、非常勤もしくは当館のように派遣業者による派遣パートタイマーでまかなわれていることがほとんどです。美術館のように、展覧会と展覧会の間に展示替えのための休館が挟まるような所では、正社員としての雇用には月間の勤務日数に開きが出来すぎるため、展覧会の開催期間ごとの短期雇用が確かに理にはかなっているともいえるのですが、勤務形態ではなく、業務内容という面から見ると、実は美術館受付監視員という仕事には、勤務先の館の特性に関する知識や、展示している作品に対する知識、所蔵している作品に対する知識など、意外に専門性の必要な知識を要求される業務が多いのです。そのほかにも、大規模展覧会などの監視業務となれば、いわゆる雑踏警備に匹敵するような、人の流れを把握して滞留の起きないように適宜誘導する能力なども要求されるのです。さらに大規模な館ならば(だけともかぎりませんが)海外からの来館者の対応として最低限の英会話能力なども必要とされます。その場限りのイベントスタッフで人数だけを補ってなんとかなるような、単純明快な業務内容ではないのです。短期雇用の使い捨てで賄っていては、毎日発生する様々な出来事に、臨機応変に対応していくことは、とてもではありませんが不可能でしょう。
一体何が言いたいのか、不思議に思う方々もいらっしゃるかもしれません。
端的に言ってしまえば、“改装などで長期休館に入るとき、そこで働いていた美術館、博物館のスタッフ達は一体どうなってしまうのか。”と云うことなのです。それぞれが皆、経験豊富な現場で培ってきた知識を持ち合わせた、いわば『プロフェッショナル』であるはずです。勤務先の学芸員のそれぞれの専門分野を把握し、それに対応した問い合わせにも的確に対応し、最低限の展示作品に対する質問にも回答可能で、館内の設備などにも詳しく、観覧以外の様々な来客などにも的確に応対する。そうした『館のプロ』という人材が何処の館にも居るのです。
最初にも言いましたが『観客として』休館前の最後の展覧会を見に行きました。ギリギリまで残ったスタッフに挨拶をしながらじっくりと館内を堪能しました。最終日まで残ったスタッフは、休館後どうなるのか。もちろん『契約解除』(失業)ということになるのです。私は生活の事情で失業するわけにはいきませんので、最後まで展覧会を見届けたくはありましたがやむなく転職という道を選びました。全国各地の美術館、博物館でも、このように改装休館によってせっかく培った経験を活用できずに失業する同業者が沢山、居るのです。

昨今『美術館、博物館の非正規雇用問題』というものが話題に上ったりもしましたが、博物館、美術館の雇用に関する問題というものとしてこちらの非正規派遣職員の問題にも光が当ってくれたらいいのにと思ってしまいます。

残念ながら私はもう美術館、博物館の『中の人』ではなくなりましたので(一般企業に就職。)いままでのように裏側の話などは出来なくなりますが、これからもいち美術館博物館ファンとして、展覧会などについて書いていこうと思います。また、展覧会でお会いしましょう。

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