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【感情紀行記】燈

 来たる!夏休み。行く手を阻む、山積していた課題やテストが片づき、目の前の道がひらけた。大きく開き、吹き込む風は燈を大きく燃やした。明るく照らした細く長い道は先の見えないものだった。

 駅に降りたち様々な人々を交わしながら帰路へと着く。喧騒たるノイズをかき消す、耳につけた現代技術の結晶であるイヤホンは、嬉々たる叫びや、悲嘆たる嘆きを無音へと昇華させ、外殻との隔たりを大きくさせる。心地よい小刻みの陽気なリズムは左右へと通り抜け、疲れた体にのしかかる将来への不安と懸念が体をさらに前傾にさせる。

 公衆の面前では大きく燃え盛る炎も孤独となった身には吹き荒ぶ逆風に晒せれ、字のどとく風前の灯となる。不滅の法灯を見た時のような不思議な感覚となる。脈々と受け継がれた燈は現代に受け継がれ、今も周囲を照らし続けている。そんな炎も時には消えかけ、揺らぐ。自分はこの炎を受け継げるのだろうか。

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