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【感情紀行記】戦略的自陣

 知っていることや、わかっているものが多いというのは重要だが、わからないことをわかる範囲で理解しようとする力の方が大事なのかもしれない。わからないことにぶつかった時の対処法は、運命すらを左右しかねない。

 よく、教育の現場などで知らないことを教えたり、教えられたりする。自分が知らないことを、わからないからといって投げ出すことは簡単であるが、何にもならないので語るに及ばずという感じである。一方で、「無知の知」のようにわからないことを知れただけでも良いという人もいる。偉大な哲学者の言う通り、大切なことであるが、それでは先に進む力が弱い。やはり、わからないことを自分のわかる範囲や今までの知識を使える範囲でわかろうとすることが大切だ。知っていることが多い人は、知っている範囲内のことだけ対処しようとするが、思考のプロセスさえ鍛えればそれを駆使して新しい知識にも対抗できるはずなのである。


 門外漢であっても、それについて自分の立場ではこう考えるとか、このように思う、というのを考えることは大切な力だ。数学などの理系分野ではわからないが、文系分野では少なくとも、ある程度の高等教育になれば、正解というのはほぼなくなってくる。そういったことに自分なりの考えとか思考を巡らせることこそが大事になってくるのだ。また、自陣に引き込む能力というのも必要だ。自分のわからない話を、精一杯自分の土俵へと持ち込み、自分がわかる範囲で応対する。大事なのは、自分の思考プロセスとその副産物たる論法だ。色々な人と話したり、教えたり教えられたりするなかで、わからないことを投げ出さずに、持っている知識に満足せずに、未知の世界を理解しようとする足場を手探りながらも組み立てていくことが、大事な能力の一つだと感じる。

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