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【感情紀行記】戦闘服

 昔から、自分の服というのをほとんど選んだことはなかった。そんな中、小学生の頃の好みの服というのはブランド物の襟付きの服だった。それを着ていれば何か許容されるような、周りとは違う感覚がしたのだ。

 中学に入り、週6日、多ければ7日制服を着る様になった。なおさら私服とはかけ離れた生活が始まった。そんな中、いかに丁寧にその制服を着こなすのか、オシャレになるのかというのが楽しかった。ネクタイの閉め方からボタンのかけかたまでさまざま調べ、実践していた。大学に入り、私服を着る様になって、服選びのセンスがなく、苦労したものの、スーツの着こなしだけは周りから褒められている。

 スーツの中でも、格式や序列的なもの、デザインがかなり異なる。自分でこだわりを持って選び抜いたものをこだわりの組み合わせで着る。正装の追求を今までしてきたが、正装というのはとりあえず着ておけば失礼のないものなので、重宝する。また、着用している自分を鼓舞してくれる。何か、立派なものに仕立て上げ、何もできない自分が何か仕事のできるような自分にしてくれるのだ。

 そんな鎧は、社会からの無数の矢を自分から守ってくれる。帰った時には糊で固められ、ホワイトニングをしたかのように白かったシャツも、芯地で支えられているジャケットもぐったりとしている。そんな戦闘服を眺め、1日の慰労をすると共に、本当は弱い内面に挫けそうになる。

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