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『ピエール瀧の23区23時』〜セカンドシーズン 中央区編

ピエール瀧が東京23区の各区を夜中に散歩したら一体何が起こるのか?!という自由徘徊実験企画。決まっているルールは“23時になったら写真を撮る事”“100円自販機を見つけたら興味本位で味見をする事”のふたつ。それ以外は基本行き当たりばったりのゆるゆる企画。ファーストシーズンは2010年に開始。その模様は『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター/刊)として2012年に書籍化されている。10年後の2020年、セカンドシーズンがスタート。

中央区編

23区_中央区

東京メトロ日比谷線「東銀座」駅スタート

東銀座駅前


ー今日は中央区です。今回は案内人として、銀座で画材屋を営む若旦那に夜の銀座を案内してもらいますまずは歌舞伎座から画材屋へ向かいましょうか。瀧さん、銀座に遊びに来ることってありますか?
瀧:銀座は全然馴染みないんだよね。矢吹君、銀座来たりする?
ー会社員の友達と飲むときは銀座集合の時もありますね。
瀧:ああそっか。銀座で働くような会社員の友達いないもん、俺みたいなインディーズバンド育ちのやつは。歌舞伎座で歌舞伎を見たこともないし。でも東銀座駅には思い出があってさ。21歳ぐらいの時に、1年間だけ制作会社で働いてた時期があったのよ。バイトなんだけど、コマーシャルだったり、企業モノのVP(ビデオプロモーション)だったり、バンドのプロモーションビデオとか作ってた。

歩きながら話す

瀧:電通プロックスっていう電通の子会社と仕事することが多くてさ、打ち合わせでよく東銀座の電通プロックスに来てた。ディレクターとの打ち合わせを隣でメモったり、編集室に素材のテープを運んだり。当時は1インチっていう規格のテープだったんだよ。テープ幅が1インチあるからそう呼ばれてたんだけど、1本がバカでかいのね。本編集ってなるとそれが10本ぐらい必要になるんだよね。その当時の下っ端のスタッフの仕事は、大量のテープをガッサーッて持って編集室に行くっていうのが定番だったのよ。だからさっき東銀座の駅に降り立って、ここ1インチ持ってヒーヒー言いながら歩いたなっていうのを思い出して、「いい思い出全然ねぇな」って思った(笑)。

良い思い出無い

瀧:華やかな雰囲気の場所で飲んだりとか、そういう記憶が全然ないのよ。この辺なんてめちゃくちゃ綺麗じゃん。あれ和光? あれなんて破壊されてるところしか見たことないもん。樋口(真嗣)さんとか特撮の人って、やたらとあれ壊したがるもんね(笑)

和光外観


初代ゴジラで壊す時、映画のスタッフが銀座の建物の所有者さん達に挨拶に行ったらしいんですよ。「お宅の建物を壊す行為をしていいか?」って許可取りも兼ねて。当時はみんな嫌がってたらしいです、映画で壊されることを。それで「いや、これはこういう意図がありまして」って説得してまわったらしいです。
瀧:なるほど。「こんなに大事なものが壊されちゃうほどゴジラという怪獣は巨大で恐ろしいんです」っていう主旨を。怪獣映画はまだその頃なかっただろうから説明に難儀しただろうね。和光って行った事ないや。三越がギリあるくらいだわ。あと歩いてる人がやっぱ綺麗でシュッとした人が多いよね。いいよね、そこはいい。
ーあと、銀座っていきなりこの着物屋さんみたいなお店がありますよね。

着物や


瀧:そうね。何これ?婚礼衣装なのかな。帯19万8000円。ここで白無垢をわざわざ買う人はちゃんとしてるわ。
ーあの角に、日産のギャラリーがありますね。
瀧:いいねぇ、日産。ショーウインドーがかっこいい。

モンテカルロ


ー一番最初に乗った日本車ってなんでした?
瀧:一番最初に自分の車として手に入れたのは、日産のスカイラインだった。バラエティ番組で知り合った中古車屋さんがくれたんだよね。日本車に限ると、スカイラインの次は中古のエルグランドを買った。子どもが生まれたんで、おっぱいあげる&オムツ替えカーとして。あとは新車のティアナ毎日新聞映画コンクールで男優助演賞をもらったときの副賞。そう考えると、日本車は日産しか乗ったことないわ。

ダットサン
日産ショーウィンドー


ー日本車だと、最近はマツダとかもだいぶデザイン良くなりましたよね。
瀧:マツダ最近ちょっと未来っぽくなったよね。銀座といえばこの辺のイメージあるなあ。華やかだし。銀座の目抜き通りはやっぱこれだよね?
ーここが銀座通りですね。
瀧:そうなの⁈ 銀座通り! 今めっちゃでけぇ声出しちゃった、恥ずかしい。お登りさんみたいだわ(笑)

銀座三越のライオン像がマスクつけてるみたいなんで、見に行ってみましょうか。
瀧:じゃあそっち側に渡ろうか。

三越側へ

瀧:この間家族でさ、マンダリンオリエンタルに泊まったのよ。激近旅行に行こうってさ。あそこは日本橋だけど、やっぱり目抜き通りを歩くのはちょっと気恥ずかしくて、1本裏を歩いてた(笑)
ーあそこの角が、有楽町ですね。
瀧:ああ、あそこは「オールナイトニッポン」やってた頃に来てた。30年ぐらい前だけど。その頃は毎週有楽町のニッポン放送に来てたよ。
ー築地に寿司食べに行ったりはしてました? 築地は中央区になりますけど。
瀧:行ってた行ってた。キャバクラ嬢と一緒に真夜中のアフターで(笑)
ー着きました、三越前です。
瀧:お、本当だ。ライオン像がマスクしてる。猫も(コロナウイルス)感染るらしいから、多分ライオンも感染るんじゃね?

三越のライオン
ライオンと瀧

銀座そぞろ歩き

瀧:この間、マンダリンに行ったときに思ったんだけどさ、銀座ってこの花壇シリーズあるじゃん。歩道に花が植えてあるやつ。何これガーベラ? 結構な数あるけど、都市でこれって結構珍しくない? ニューヨークとかロンドンとかベルリンの中心部にはあんまりこの感じないよね。
ーそうですね、渋谷とかにもないですもんね。

銀座の花壇


瀧:いつもこれ何なんだろうなと思っててさ。誰かがケアしてやらないとこうはならない訳でしょ。
ーはい。確かにそうですね。
瀧:水あげたり、植え替えしてるのかわかんないけど、銀座のこの町並みの道っていつもちゃんと綺麗だよね。
ーこんだけ人通り多いのにぐちゃぐちゃにならずに、ちゃんと残ってますもんね。
瀧:そうでしょ。盛り場的なとこだったらさ、酔っ払った若者が寝そべったりとかなりそうだもん。お、FENDIで何か撮ってる。

fendi外観
画像12

瀧:おそらく広告とか雑誌の撮影をしているんだろうな。銀座っぽいねえ。今までその概念なかったけど、夜中歩くんだったら銀座、結構いいよねぇ。
ーお店だいぶ空いてますね、コロナ禍とはいえ。
瀧:GINZA SIX。これはもうクリスマスモード入ってるってことだよね。

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「とんねるずのみなさんのおかげでした」で、GINZA SIXで色々買わされてましたよね。
瀧:男気じゃんけんで負けて、30万円ぐらいの熟成肉を買わされた。あとなんか漆器の食器セットみたいなのも。ちゃんと食ったよ、肉は。本当にうまかったけど、もううまいと思うしかないっていうか(笑)。TBSラジオの「たまむすび」に持っていって、外山さんと食った気がする。
ー先週、外山惠理さんお会いしましたよ。
瀧:外山さん元気だった? 元気出るよね、外山さんに会うと。あの笑い声聞くと、何か邪気が払われる感じがするよね。

ショーウィンドー

ー外山さんと瀧さんがやってる頃、2人とも本当に何もエピソードトーク持ってこないから、聴いてて毎回面白かったです。
瀧:ふたりとも手ぶらで臨んで2時間半乗り切るっていうスタイルだったから(笑)。先週こんなことがあったっていう話があるときもあるけど、基本は手ぶら。でも俺あの枠やってる間はずっとそうだったよ。あと矢吹くんが来たりする30分のゲストコーナーあるじゃない。俺あれも資料見たことほぼないもん。ゲストが来る3分前に今日はどんな人来るの? って聞いたりして(笑)。でも30分位だったらさ、どうにでもなるじゃん。あ! 今の見た? ヤマハのロゴのどら焼きがモニターに出てきた。ちょっと待ってね、もうすぐまたモニターに映ると思う。ほら! ほら! ヤマハのロゴのどら焼き! 食べたら歌が上手くなるかな?(笑)

ヤマハのどら焼き


ーそろそろ右へ曲がりましょう。あ、見えてきました、あれが今日の案内人が営まれている画材屋さんです。

銀座で100年続く画材店へ

月光荘看板

瀧:白の看板に赤い赤字で「月光荘」。目抜き通りから道1本入ると雰囲気が落ち着くな。なぜホルンのマークなんだろ? とか思ってたら、本当にちゃんとホルン飾ってあるんじゃん。後で聞いてみよう。

ホルン


ーじゃあ中に入りましょうか、こんばんはー。こちらが本日銀座の街を案内してくださる「月光荘」のご主人、日比康造さんです。
日比:中央区にようこそ。はじめまして! よろしくお願いします。今日は夜の散歩なんですよね?
瀧:はじめまして、ピエール瀧です。そうなんです、23区を夜中にウロウロするという企画です。

日比さんお出迎え

瀧:はじめにちょっとお店を見せてもらっていいですか?
日比:どうぞどうぞ。
瀧:画材道具だ。全部オリジナル製品?
日比:そうなんですよ。

絵の具棚


瀧:「いわさきちひろさんも月光荘のスケッチブックをご愛用くださっていました」だって。なるほど、へえ。創業100年なんですもんね。そうだ、これなんでホルンなんですか?
日比:うちの祖父が創業者なんですけど、与謝野晶子さんに結構かわいがってもらっていたらしくて。与謝野さんに店の名前ををつけてもらったときに「ヨーロッパでは貴族が狩りのときにホルンで連絡を取り合って通信手段としていたから」ということで、「このホルンの音の下にたくさんの仲間が集まりますように」ということでデザインされたらしいです。
瀧:なるほど。もしくは「獲物が集まりますように」ってことですね。
日比:(笑)。

スケッチブック棚
スケッチブックと瀧


瀧:商品かっこいい。このお店は、今もいろんな人が訪れてるわけですよね。
日比:そうです。絵の道具を売ってるんですけど、創業当時から面白い人たちがサロンとして集って遊んでくれて。感性の交差点のようなお店という意味では今もそうで、ここから歩いて3分ぐらいのところでサロンをやっているんですよ。飲食もできますので、よかったらご案内します。
瀧:やだ、銀座の人っぽい、エピソードが(笑)。僕全然知らないんですよ、銀座。ほぼ来ないというか、銀座に足場がないというか。ワケのわからないまま飛び込むとえらい目にあいそうじゃないですか。
日比:それは確かに。
瀧:でしょう? あ、このバッグもかわいいっすね。

お稽古バッグ


日比:全部オリジナルなんでここでしか手に入らないですね。
瀧:お稽古バッグだって。いいですねぇ。

サロン「月のはなれ」へ

瀧:日比さんはお住まいも銀座なんですか?
日比:母の代まで銀座に住んでいたんですが、僕の代から世田谷に住んでます。
瀧:銀座はすれ違う人がビッグネームの時があるっていう漠然としたイメージがあります(笑)。みんな見て見ぬふりするっていうマナーもあるだろうから、そういう人たちと飲み屋で隣同士になってるんだけど全然気づかないとか。バーの隣の席の人が巨大な会社の社長さんだったり。
日比:確かにありますね。ここのビルの屋上が「月のはなれ」というサロンになってます。上に行くには階段しかないんですけど。

月のはなれ入り口
月のはなれレンガ


瀧:「月のはなれ、後23段」って書いてある。
ー東京タワーみたいですね。
瀧:そうね(笑)。(階段を上る)あ、ここですか?
店員さん:いらっしゃいませー!
瀧:わ、人がめっちゃいっぱいいる。オープンエアーだ。いいとこっすねぇ。

いいとこ写真

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