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エピソード5 『夏の終わりに』

こんにちは

この番組は、昭和型板ガラスの話
そして、昭和型板ガラスにまつわる想い出の話をお届けする番組です。

お届けするのは、メモリーコレクター 吉田です。

本日ご紹介するのはU様からいただいた想い出です。
題名は『夏の終わりに』です。

それでは、ご覧ください。




『夏の終わりに』

いまから35年前の8月31日、私の家の食卓には、蒸し暑さと心寒さが入り混じっていた。

あと、12時間後には学友たちの明るい声と共に、新学期が訪れるというのに、私の視線のその先にあるのは、5ページから後ろは未だに夏の空気に触れたことのない、「夏の友」だった。


そして、その向こうに見えるのは、怒りが頂点に達し、抑えきれない母だった。

母の右手が動くのが、一瞬スローに見えた。

こちらに手が伸びて来る。

しかしその手は、私に到達する手前で向きを下に変え、食卓の上の「まんじゅう」を掴むと同時に、強烈なスナップを効かせ、母の指先から放たれた。

私は、咄嗟に体を右にかわす、

「パリーンッ!」

私の頬を掠めたまんじゅうは、引き戸のガラスを突き破り、廊下に横たわっていた。

母「なんで避けるのっ!」

その言葉には、夏の40日間を無駄に過ごした娘と、この至近距離でまんじゅうを当てられなかった不甲斐ない自分への怒りが現れていた。

私は毎年、夏の終わりが近づくと、

「あのまんじゅうを避けていなかったら、私の人生は変わっていたのだろうか...」

そんなことが頭をよぎる。

今でも、実家の引き戸には、1枚だけ違う柄のガラスが入っている。




ありがとうございました。

今回の想い出は友人からいただきました。
人物を知っているため、情景がスッと入ってきました。

少し誇張しているところもあるかもしれませんが、とても素晴らしい想い出だと思います。

私も同じようなことをしてたかも. . .
夏休みは思いっきり遊ぶと決めていました。
田舎の夏は自然と一体化できる貴重な時間だったと思います。
あの体験が今の自分を作り上げているのかなと。
冷たい川で泳いだこと。
山に入り木に登り蝉を捕まえたり。
その経験から、この魚は美味しい、この木は枝が弱いから登れないとか知らず知らずのうちに感覚で覚えていきました。

今は、危ない経験はNG
お金をかけて安全装置をつけることで経験することができるのかな。
自然が少しずつなくなってしまっています。
泳いでいた時と変わってしまった川
太陽光パネルが敷き詰められた畑と山
これからの日本はどうなってしまうんでしょうか?

そんなことを今回の想い出『夏の終わりに』から感じました。
たまには子供たちと一緒に田舎へ行き、川や山で遊びたいと思っています。

このプロジェクトを始めたきっかけは自己紹介でもお話をしましたが、お客さまが型板ガラスを見て懐かしさのあまりに声を出しています。
その声を聞いていると、この型板ガラスには秘めた力があるんだと感じました。

私も小さい頃から今まで46年間、型板ガラスに囲まれて生活をしてきました。
ガラスだけでなく、思い返すと記憶のあちこちに家族との想い出とつながる物や匂い・感触などが蘇ってきます。
型板ガラスは、その中の一つでしかありません。
この一つのきっかけで、家族がいつまでも繋がっていけるような
ステキな日本になれば良いと思っています。

pieni



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