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まちとしての子どもへのまなざし【訪問:岐阜市立草潤中学校】

岐阜市立草潤中学校の視察に岐阜を訪れました。

草潤中学校が不登校特例校として、柔軟な教育課程の設置を実現している岐阜市立の公立中学校です。

除幕式で京都大学の塩瀬さんがスピーチされたことが記事になった学校です。

岐阜市内に居住している中学生のうち、不登校(経験者)であることなどのいくつかの要件を満たす生徒が通うことのできる学校です。

学校らしくない学校

コンセプトとして「学校らしくない学校」が掲げられており、「学校らしくない」部分がいろいろあります。

今日見学した中での学校らしくない部分としては
・それぞれの部屋のドアが色塗りされている、部屋の名前が横文字(ヘルスルーム、キーロッカールーム)や漢字一文字(森、川…)など
・それぞれの場面で子どもが学習環境を選択できるようにしている。(教室のほか個別学習の部屋、ヘルスルームでのオンライン受講、ギフテッドルームでの個別学習などなど)
・不登校状態の長かった生徒は当該学年より前の内容を学び直すこともある。そのため、教室名も「◯年生教室」という形にしていない。
・学年担任制を敷いているほか、担任を選択でき、変えることも希望できる。
・図書館にはカーペットの上にテントが張ってあったりYogiboが置いてあったりする。漫画も多いし、生徒のリクエストでスポーツ紙含めた新聞が並んでいる。
・職員室はじめいくつもの部屋にソファや大型の椅子が多く配置されている。

それでも最大の「学校らしくなさ」は職員の方々の教育観であり、「欠席」や「遅刻」という表現をせず、「自宅」や「ゆっくり登校」といったまなざしで子どもたちを見ているというその教育環境そのものでした。

心身状況の把握や、まめなフィードバックは他の学校よりも丁寧に、そして複数の職員で行われているのはその息遣いを感じることができました。

子どもの姿

職員の方は草潤中学校での勤務を納得したり希望したりしている人で占められており、チームとして教育にあたっている印象です。

一方、だよなぁと納得した部分としては、
・体育の時数も多くないため、ルームランナーを導入したがほとんど稼働していない。むしろ球技大会には大勢が率先して参加している。
・今日は子どもがいないが、子どもがいるときの活気は特例校も他の学校も変わらない。
・自習できるブースを設置したが、利用率が低い。登校する子は、教室で仲間と学習するか、個別学習で教えてもらうなどをすることが多い。

子どもたちが学ぶ、となったときに何を求めるのか。
そのヒントが隠れているように感じました。

出口

とはいえ気になるのは出口。
多くの中学生が高校に進学する中で、中学校の成績が算出されない不利益が入試に出る可能性はどうかと言う質問もありました。

この質問に対しては、もう一段階上の階層で考える指導が示唆されました。
草潤中学校では、現在進行形で生徒たちに「どう生きていきたいのか」を考える進路指導を進めているようです。
というのも、学力的には相当な力をつける生徒がいる一方で、過去の不登校関係の追跡調査によって、点数やぼんやりした動機で進学先を決定した子どもがその後ひきこもりになってしまうケースが多く報告されているようで。
まずは、どう生きていきたいのか、そしてそれを実現するにはどういう進路がよいのかを本人が考えることが肝心です。
草潤中ではそれに向けて早い段階からさまざまな学校内外の見学や体験を推奨していくということでした。

人がくるまち人が去るまち

草潤中学校は定員が設けられており、当初希望者が全員入学・編入しているわけではありません。
通学の要件に「岐阜市に居住している実態があること(住民票のみの在住は不可)」があります。
そのため、岐阜市に転居して通学する世帯も複数あるようです。
草潤中学校だけでなく、フリースクール、オルタナティブスクールがいくつもある岐阜市は教育環境として学校ありきでなく、「それもあるよね」という選択が合意されている雰囲気があるようです。
(中学校でも校内フリースペースの整備が進んでいるよう。)
とある方からは、不登校の数が少なくないのも、ある意味後ろめたさなく、学校に行かない選択ができる雰囲気があるからではないかという声もありました。

安心して学校に行かない選択ができる、そしてその次に考えられる別の道がある、この社会全体でのシステムが親子にもたらす安心感は独特の強さがあります。

純粋に子をもつ親として興味深いまちだと岐阜市の教育環境を聞いていて感じました。

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