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街の選曲家#ZZ1Z1Z

今回は音楽サブスクリプションの恩恵というか、そのレコメンドで広がった世界の曲たちが多い。私にとっては制限があった中で惹かれるものを少しずつ聞いてゆき、その結果そのバントが大好きになったり、自分の思う光る曲を発見したりしてプレイリストに入れたりした。その積み重ねが今でも続いているのだ。カセットテープを編集していた頃のことも思い出すが、編集作業というそれ自体の敷居は少し下がったが、好きな曲を選ぶというのは変わらない。それを繰り返し聞きながら新しプレイリストを追加し、また繰り返し聞く。昔のものも含めて。もちろん新譜や、まだ知らないアーティストも聞くが、その中のひとつとして私の中には息づいているようなものだ。


ドライフラワー 赤い公園

赤い公園の津野米咲さんがこの世から去ったとき、もう彼女は人々の心に存在を移してしまったんだなと、なんとなくそんな風に思った。そのときにここに少し書いた赤い公園というバンドは、まさに音楽サブスクリプションのおかげで知ったバンドと言える。それまでは私の世界では頻繁に聞くこともなく、私にとって有名ではないがメジャー系ではあるのかな、というイメージだった。今となれば曲のほとんどを書いている津野さんの死により結局は解散してしまったということになるのだろうか。その一年前にヴォーカルの佐藤千明さんが脱退し、新しいヴォーカルを迎えて出発していたのも知っていたが、赤い公園というバンドは思ったよりもあっけない幕切れになってしまった。津野さんというタレント、赤い公園というバンド、その演奏、それらは今でもどこにでも残っている。そして好きな曲も多かっただけに違った未来、新しい曲も聞きたかった。進化しても退化しても、また違う世界が展開されていたとしても、何かしらの期待があった。彼女の曲を、赤い公園というバンドの曲をもっと聞きたかった。だが結局それは津野さんの死により消えてしまった。それについてとやかく言うつもりはないが、残念だという思いは強い。

この曲に初めて出会ったのはサブスクにて一枚目のEPやシングルを聞いた後で、アルバムの中の一曲というだけの最初は特に気に入っている曲でもなかった。でも聞いているといつしかハマってしまっている。曲調も短調というか暗い感じだが、詞がとても気になるし好きだ。この歌詞のことではないが、津野さんの詞は私の思考と似ているような気がしていて、これを言うのはおこがましいが、一部は自分でも書きそうな方向でもあるような、そんな気がしていた。曲もピアノだけの伴奏で入る淡々としたスタート、そこからから感じられるのはその人の現状だ、それがサビのバンドサウンドになり内面が噴き出すような、内側でのたうちまわるような苦しさ、つらさ、不安、とまどい、そういう負の感情に襲われる。ただ、そこに入っているキーボードのうねるような音に苦しくも救いを感じなくもない。ツーコーラス目は底にギターの余韻がそのまま残り、それらの感情を引きずっているように見せていて、そこにさらにストリングスサウンドのような音が加わって様々な感情を感じる。終わりにしてもギターだけが残り低調な気分のままだ。このアレンジが素晴らしくこころに響く。なんでもないただの私という人間の感想だが、それを感じ、この曲を最高の曲だと思える。人によればそれは違うというだろう、それは正しくもあるのかもしれない。だが私とっては最高の曲で、それが津野さんのソロではなく、バンド赤い公園の曲だと強く思うばかりだ。


Bout the City - Reps

相変わらずセガである。いや、これだけをセガというのもどうかと考えるが、私にとってはセガの最高のコンシューマハードの一つ、ドリームキャストのソフトとして出た最高のゲームの中でも異彩を放つジェットセットラジオで出会った曲で、すなわちそれは最高のためのwin-winなのだ。と、セガに関しえは突っ走ってしまい、自分でもよく分からなくなる。当時はこのゲームのサントラのCDを持っていたが、PCにてイメージを吸い出し物理メディアはどこかの奥深くに仕舞っていた。その頃はそれをPCにマウントして聞いていたのだが、PCやそれにまつわる環境が変わるにつれてどちらも所在不明になってしまった。そこで音楽サブスクに加入したときに検索してみたら、制限付きサブスクでもアルバムはあった。しかしこの曲だけ入っていない。版権の問題だろうか、同じと思われるCDを持っていたので少し不思議な感覚になったが、再発ではよくあることだろう。もちろんこの曲がなくても好きな曲ばかりでサントラ盤は楽しめたし、よく聞いていた。そのアルバムの曲の多くはプレイリストにも入れているし、この選曲家でも既に長沼英樹さんの曲はジェットセットラジオとともに触れている。

基本はゲームの世界観を長沼英樹さんの曲と一緒に作り上げているようなコンセプトな楽曲が多いのだが、この曲は少し毛色が違う。サラッとしたパンクのようなロックで、生ギターと電気ギターが特徴的だ。そして歌詞がこのゲームを表していて、曲もボーカルも疾走している。この疾走感がたまらない。特に歌詞の以下の部分が印象的で心に残る。また、このRepsとうバンドは調べてみても分からない、中には有名人の覆面バンドではないかとか、そういう説もあるようだ。それだからこそ版権問題で現在この曲が入っていない問題につながるのか、それとも版権問題があるように感じるからそういう仮説が成り立つのかは分からない。ただ、曲が最高なので誰にも聞いてほしい。これが当時のゲームの音楽だったことが重要でもあると思う。ゲーム自体が音楽と密接にかかわっているのもあるが、そういうゲームをリリースできていた時代だとも思っている。

Won't you play the damn song
To make me strong
You will sing; I will make it if I do

Take me to the power
Get out of the corner
Take me to the border

I will make it as they do
I can see them run about the town


アレカラ - Brian the Sun

Brian the Sunのことを知ったのはまさにサブスクのリコメンドで、そこにあった初期のアルバムやEPのジャケットのアートワークに統一感があり、その美意識に心動かされ、独特の世界があるのではと思って聞いたのが最初だ。それらを聞いた印象は正統派のロックで王道を行くのかなという印象だった。そしてそこには確かに世界があり、音のパワーの中に繊細さを感じられるものでもあった。電気ギターがギュイーンと鳴って、ドラムがドカドカしていて、ベースが跳ね、アコースティックギターの爽やかな音色が聞こえてきて、ボーカルが浮きあがり、それらすべてが伝えたいことを伝えているようなパワーを感じた。歌詞は刺激的なものも多かった記憶だが、そんなに注意して聞いていたわけではない。だけどそういうイメージとして記憶に残っている。純粋なバンドサウンドというのも好きになったひとつで、奇をてらったようなアレンジがされていたりしないという意味の、そういうストレートさも一つの魅力でもあると思っている。

この曲はNON SUGERというアルバムに入っている曲で、このアルバムの中の曲はほぼすべてに近いくらい別々のプレイリストに入れていた。乾いたリズムギターの音が絶え間なく響き、急ぎ足のドラムが高揚を誘い、ベースとリードギター、ボーカルが入ることで爆発する、そんな曲だ。そのドラムや堅実に感じるベースのリズム隊も隠れたりはしていないし、コーラスもとてもいい感じだと思える。それでもやはり主役はリードギターとボーカルで、時には孤独に、時には並走し、時には戦う、そんな関係で完成された曲だと思っている。また歌詞もアレカラという題名通りのラブソングで、ただのラブソングではない風情や世界を感じ、これは最初に何枚かのジャケットを見たときからの印象で、やはりBrian the Sunの世界だと感じてしまうのだ。


夜を泳ぐ - ルルルルズ

この曲というかアルバムというか、このバンド自体がリコメンドによって知らされ、一時期には色即是空というアルバムをかなりヘビーローテーションしていた。当時ルルルルズのアルバムもシングルも、
そういう時期だったからか制限付きサブスクだったからか、この曲の入っている色即是空というアルバムしかなく、逆にそれしかないので集中して聞いていた。いや、集中して聞くというよりは散歩など普段の生活とともに聞いていて、ふとした瞬間に印象がより鮮明に現れたりする。曲はずっと流れていて、その時々に歌詞やフレーズや光景が浮かび上がってくるような、今で言うMR的な感覚とでもいうのだろうか、そんなことがあった。アルバム自体は全体的にアコースティックのやさしいポップスで、聞きやすく、キラキラ光ってるようなまぶしさではなく、陰陽が存在している中の儚さのようなものを感じた。アコースティックな楽器の爽やかな重厚さや体に響くような感覚、そしてそこに普段着という表現でいいのか分からないが、そういう安心できるようなボーカルが乗っている。私の日常に合っていたのだろうか、今になればそんなことも考えてしまう。

この曲もアルバムの他の曲と同じでやさしさもあるがそれだけではないスケールを感じる。特徴的なバイオリンのフレーズにハッとしてしまう。右からはずっと生ギターが聞こえてきて、ピアノの音色がしみわたる。バイオリンはピチカートも印象的で、ピアノと並びこの曲の主役なのだろうか。また、ボーカルもとてもいい。淡々としているようで情熱というか、歌詞の意味を言葉と音で伝えている。この歌詞は、思うに別れの葛藤を表したもののような気がするが、一人でいるときに揺れ動く陰と陽なこころの移り変わりを歌えている、そんな気がする。もちろん歌詞の内容も推測でしかないが、私にはそういう世界が広がった。何度も同じことになってしまうが、このアコースティックな重厚さと繊細さ、そして歌詞の世界、それを歌えるボーカル、完成されたバンドサウンド、それらが合わさって日常の中に浮かび上がるような曲だと感じている。




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