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私設図書館「図版研レトロ図版博物館」について

中途で停まっている「Japanマレー語経由説を追う記事は、オアソビとはいえ集中しないと書けないのだが、5月の連休明けあたりから急ぎの仕事とかいろいろと気の散るあれこれが押し寄せてきて、その後も引き続き資料を拾いあつめて眺めたりはしているものの、今のところちょっと再開できる感じがしない。連日うんざりするほど暑いし。

そうでなくても、史実を追っていくとどうしても特定のキーパーソンが現われてくることが往々にしてあるが、そうした登場人物たちが複雜にいり乱れ雑じって展開していくような話をあつかわざるを得なくなると、このnote記事を書いているヤツが個人的に「人物伝ダレがドウしたばなし」のたぐいにあんまり興味を覚えないため、どうしても飽きてきてしまうのだった。

複数の資料を読み込んでいくことで、いままで見えていなかったものごとの関連性とか影響とかの「姿」が、あるとき不意に立ちあらわれてきたりするのはすこぶるたのしいのだが……。

大筋はすでにアタマの中にまとまってはいるものの、一向に「筆」がすすまない華人の南洋交易史のところを諦めてすっとばしちゃうか、また気乗りがしてきたら途中まで書いたものの続きを書くか今の時点では決めかねるし、かといってこのままストップしていてはアカウントを維持している意味が薄れてしまう。

6月は1本も公開しないまんまで終わってしまったこともあり、この際全く別のテーマで更新しておくことにした。

ということで今回は、図版研がJR中央線の阿佐ケ谷駅近くに設けた私設図書館レトロ図版博物館」について、ちょこちょこっと書いておくことにしよう。

私設図書館をはじめようとおもうにいたるまで

すでにおわった話を蒸し返すのは好きじゃないので、こまかいことはすっとばして簡単に。

デザインや出版物制作関係のこまごま仕事などを兼業しての小売りの店を構えてから今年で15年になるが、もともと商売には向いていないことは自他ともに認めるところだったし、古物商を択んだのもつまるところ消去法の結果だった。

そして実際やってみて、「いいな〜、とおもえるシロモノほどさっさと捌けて、どーしようもないモノばかりが手許に残る因果な商い」というのを実感したのは、始めてから5、6年ばかりしたころのこと。

このままつづけても面白くない、何かしら方向転換をはかりたい、とあれこれやってみているなかで、ヒトサマがほとんど見向きもなさらない黒っぽい本」に、今まで見たこともないような面白い図版がいくつも載っているものがあるのに気づいた。

同じ出版物でも名のある人による文藝書や美術書などのように、すでに世の評価がある程度固まっている分野だとか、そうでなくても尋常ではないマニアがおられるような分野だとかはそうそう手が出せないだろうが、知られていないものならば蒐められる余地があるのではないか。

また、商品としての古い道具——特に科学系や医療系の器械など——は、その名前にせよ使い方にせよ、書店や地域図書館などで手にできる資料や、インターネット上で拾える情報だけではわからないことがあまりにも多く、ことにインターネット通販で品出しするときに添える説明文を書くのに窮することが少なくなかった。

これはつまり、これらが現役だった当時の資料に当たらないとダメなんじゃない? ということで蒐めはじめていたのが、商品カタログや教科書・参考書・図解専門書の類いだった。

ちょうど、何かしらに投資してみようかと考えていたところでもあったのだが、例えば金融資産のような、既にヒトサマが決めた価値観に乗っかって後から参入するようなものでは、きっとロクなことにならない気がした。

それよりも、他の人がまだその価値に気付いておられない、しかも将来にわたって価値が目減りするどころかますます高まっていく可能性のある図版資料が、そうした古い出版物のうちにどっさりうずもれているのでは、という勘のようなモノが働いた。

以来10年、いつの間にやら2階の床の大半が本の山でうまって、その隙間を蟹歩きせざるを得ないような状態にまでなったが、しかしこれを何かに活かさないとツマラナい。

そこでまたあれこれ調べて検討したり試してみたりした末、著作権法の縛りとかあって営利事業にはできないけれども一番面白そう、という結論に達したのが私設図書館を設けたいという図版研の意向とたまたま合って、しかもその後パンデミック出来により「不要不急の事業」として休業要請が出たのを「天与のチャ〜ンス!」と捉えて建物改修工事に踏み切った……というのが当私設図書館、名づけて「図版研レトロ図版博物館」をはじめるにいたった大雑把ないきさつ。

実のところ今日では、国会図書館デジタルコレクションで「個人向け送信サービス」が始まったこともあって、かなりの数の資料が誰でもいつでも無償で覧られる環境が整ってはきている

しかしことに図版に関しては、「どんな資料にどのような内容が載っているのか」という基礎知識を相当程度持っていない限り欲しい資料を効率的に得るための適切なキーワードを割り出すのは至難の業……。

やはり「原典そのものを手に取ってぱらぱら眺められる環境は、あるに越したことはないとおもうのだ。

次は現在の当私設図書館についてのご案内を。

私設図書館「図版研レトロ図版博物館」とは

科学と技術」×「デザイン」×「日本語をテーマに、日本近代のレトロモダン文化が生み出した図版資料を中心にうもれた出版物を蒐め、それをシェアするための超物好き施設。

図鑑・辞書・事典・図案集・教授書・教科書(自然科学・技術系・デザイン系・地理系・女子教育関係)・掛け図・図解専門書・グラフ誌・科学読みもの・写真集・絵葉書・名所案内・地図帳・商品カタログ・見本帖・紙製模型など、明治・大正・昭和初期の一般にはあまり知られていない、目にする機会の少ない出版物がお手にとってご覧になれることを特色とする。

1階はだいたい13時から20時くらいまでの間、先客がおられなければどなたも自由にご覧になれる無料閲覧室」。

2階は(いまだにちゃんとは片づいていない)会員専用の「貸し切り書庫」(1階ショウケース内の商品カタログコレクションを含む)。ご見学おおむねいつでも可

「図版研レトロ図版博物館」ご利用案内

資料の閲覧、スナップ程度の撮影、個人の研究目的での複写は基本的に自由、ただし備え付け手袋をおはめいただく。ただし状態の悪いものについては個別対応。館外貸し出しは「常にどなたにも同じ条件でご利用いただけるようにする」という考えによりおこなわない。

資料の掲載、図版の商用利用などについては別途ご相談。

1・2階とも1回に1組限定(上限3〜4名)、ただし会員向けサーヴィスは各人ごとに要入会。ご予約はご入館日時のみのご指定、ご退館は成り行き次第。

会費月あたり1000円、ただしご利用月のみ課金、その月の最初のご利用日が月末の3日間にあたる場合は翌月カウント(例えば、4月のご利用が28〜30日のみの場合は5月分扱い)。6ヶ月分以上一括前払いの場合は5%、1年分以上の場合は10%引き。

お支払いいいただいた会費はただちに当館維持費に充当してしまうため、ご利用証お渡し後はいかなる理由でも返金不可

お持ち込み飲食は可、ただしそのゴミなどはお持ち帰りいただく。火気使用は不可。

当館では個人情報は基本的に扱わないため、お身元証明書などは必要ないが、確実にご連絡をおとりできる文字情報による記録の残るアクセス手段(LINE、メール、TwitterのDMなど)のご呈示をお願いしたい。

なるべく「あれダメ、これダメ」というのはやりたくないので、以降のご利用はお断わりすることなどないよう、良識をもってご利用いただきたい

帳場から先は、(図版研代表みすゞさん)出没注意

杉並区内の「公然のヒミツ」私設図書館

週末祝日は中央線快速に通過されちゃう「杉並3駅」のひとつ、阿佐ケ谷駅2階西口から「Beans Asagaya」を通過して、向かって右手の出口から歩いてだいたい4分前後、閑静な商店街の一郭、三軒長屋の一番奥にある小さな古道具屋の中にある。

ときどき、気づかずに通り過ぎちゃう方があるのだが、道の先の方にセブンイレブンが見えたら元きた方へお戻りになれば、ほどなく黒猫看板がお目に留まるかと……。

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