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残雪

春を感じるにはまだ遠く
風が誘う散歩道
こんなに残る想いなら
解ける程の温もりが欲しい

あなたを許せず離れたはずなのに
空へと向かう風と温もりが
冷えた思い出と僕の心を解かして
ひとつの雫を溢した

まだ残ってるのは 冷たさなんかじゃなく
あなたと歩き手を繋いだ 優しい温もり
もう会えないから もう会えないけど
触れれば解ける雪のような あなたの手を
ずっと ずっと握ってた


残したのは季節外れの暖かさと
カメラに向けた微笑み
こんなにあなたを感じるから
まだ生きていよう

春の便りがこの街にもきたよ
あなたが好きだった景色を見ながら
あなたの居ない隣りで手を握る
ひとつの雫を思い出す

まだ残ってるのは「あなたが居ないこと」だけ
変わらないこの街も景色も変わってく
もう会えないかな? もう会えないんだね
解けずに残ってる雪のように 重ねた想いは
ずっと ずっと消えない


枯れない花があればいいのに
許せないままでいれたらいいのに
離した後悔も 話した思い出も
ずっと ずっと消えない…


まだ残ってるのは 冷たさなんかじゃなく
あなたと歩き手を繋いだ 優しい温もり
もう会えないから もう会えないけど

まだ残ってるのは「あなたが居ないこと」だけ
変わらないこの街も景色も変わってく
もう会えないかな? もう会えないんだね
解けずに残ってる雪のように 重ねた想いは
ずっと ずっと消えない
ただ想う
この「温もり」も消えない


(解説)

先日、母方の祖母が亡くなりました。
アルツハイマー病を患い、近所の人にも迷惑を掛けてしまったこともありました。
警察沙汰になったこともあり、その度に私の母や叔父が何度も頭を下げていたのを覚えています。

施設に入るのも拒んでいた祖母ですが、家族からの説得でやっと入居してくれました。

施設に入ってからは症状も落ち着き、本人も入って良かったと話していたので家族としても安心しました。
しかし、入居から5年位経った頃から病状が悪化していきその頃に私が面会した時には私の顔も名前も覚えていませんでした。

私の子どもを連れて行ったとき、私の顔も名前も思い出せない祖母が涙を流しながら抱いてくれたのを覚えてて、赤ちゃんって凄い力があるのだと思いました。

それから更に5年後、入居から10年程経った頃から腎臓の調子が悪く、永くは生きられないと医師から言われました。
正直、母や叔父たちに迷惑ばかり掛けていたため良くは思われていない祖母でしたが、母や叔父はショックを隠しきれてはいませんでした。


それからコロナ禍に入り、面会さえもできないまま施設から病院へ移動になりました。
腎臓の数値が悪く、肝機能も衰えてきているとのことで寝たきりになりました。

そんな中、1週間1日30分程度3名まで面会の許可が出ました。
状態が良くなった訳ではありません。
目を開ける時間があり、会うことができる最後の期間でした。

子どもと一緒に会いに行きました。
最初は寝ていた祖母も帰り間際に目を開けて、体を起こそうとする動作をしました。
きっと記憶はありません。
誰か来たくらいの感覚だと思います。
それでも会って良かったと思いました。


その3日後に息を引き取りました。


葬式では一番迷惑を掛けられた叔父が一番涙を流していました。
一番迷惑を掛けたこともあったんだと思います。


そんな祖母を想って、家族にしか分からない感情を書いてみました。

雪は綺麗で、でも儚いものです。
時に冷たく、時に重たく嫌になるときもあります。
でも春が過ぎれば全て無くなります。

良いことも悪いことも、全て思い出としてあってもいいのかなと思います。
それがどんな人でも、その人であったことの証なので。

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